怠惰くんは頼っている

はせべ さにぃ

怠惰くんは亡くなりました

僕の名前は久寝くすみ 音夢ねむ

高校2年生。授業態度は悪くなく、成績も5位以内をキープしている。

1年の頃から、実家を離れて一人暮らしをしている。

趣味は寝ること、特技も寝ること。食事を忘れて寝ることが多く、線が細いと言われる。


以上、自己紹介終わり。



今、2限目の数学が終わるところ。

「来週に小テストを実施する。各自復習しておくこと。では、号令」


「起立、気を付け、礼」


「「「ありがとうございましたー」」」


次の時間は体育だ。正直休みたい。

更衣室で着替え、荷物を準備して────

「久寝くん、今日はしっかり参加ね」

後ろから声が聞こえる。

振り向くと真面目そうな女の子がいた。

ふんわりとした黒髪を後ろで結び、白いふちの眼鏡をかけたきれいな子。

名前は控井うつい 日陰ひかげさん。


「僕は運動が苦手なんだ。参加はするけど頑張る気力はないよ」


「短距離なら速いくせに…ほんとに体力ないんだね…」


控井さんは全体的に優秀で、少食のためかスレンダーな体型をしている。

あれこれ他愛のない話をしているうちにグラウンドに着く。


「今月はマラソン大会がある。今日はストレッチをして校外を2周しよう!それでは各自で取り組んでくれ」


我が校は秋の初めに10キロのマラソンをするという過酷な行事がある。僕は体力が全くないので練習でも死にものぐるいなのだ。


「久寝くん、応援してあげるから一緒に走りましょ?」


「誰かと一緒なら義務感で走りきれるかも。お願いします」


控井さんは優しい。ひょろひょろとした僕に対してもこうして気遣ってくれる。

クラスのみんなそれぞれが、ある程度のストレッチをしてライン際に立つ。


「無理しなくてもいいが、授業終わり10分前には走りきるように。では、よーい」


ピ──ッ!


ホイッスルが鳴る。

僕は後方を走るが、開始400mで息が辛くなってくる。

いつもより動悸が激しい。


「頑張って!」


控井さんが隣で応援してくれる。もっと頑張らないと。


「はぁ…はぁ…うぐっ」


僕はその場で倒れてしまう。

なんだか体調がおかしい。いつもより力が出ないみたいだ。


────あれ?僕って昨日、ご飯食べたっけ?


僕は帰宅後すぐにお風呂に入るけど、ご飯は時々抜いてしまう。作るの面倒だし。


なにも気力が湧かなくなって、意識が遠くなる。

「久寝くん!久寝く────」

控井さんの焦ったような声を聞きながら、僕は意識を失った。

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