第31話 予言と予想と妄想と


 そして昼休み……


 小太り眼鏡の佐藤と痩せ出っ歯の鈴木が憤慨していた。


「ナベの奴……馬鹿にしやがって……」

「そんな理由わかるわけねーやん。教科書に書いてないし」


 恥をかかされたことに憤慨していた。

 だが、隆幸はあの授業が気になっていた。


(残そうとしないものは滅びるか……)


 実際、自分たちの祭りも過疎化や少子化の影響でなくなる寸前とも言える。


(だが、千年後に祭りは残った……)


 と言うことは誰かが残そうとしたから残ったのだろう。

 そこで首を傾げてしまう。


(ローマの人もこういった文化をめんどくさいと感じたのだろうか?)


 自分の中で何かが繋がりかけているのを感じる隆幸。

 そんなことを考えているとふとっちょの佐藤が声を掛ける。


「どうしたのでござる久世殿?」

「うん? いや、さっきの授業が気になってさ。俺の所も祭りがあるからさ。あんな感じで消えるのかなって思って……」

「なんだそんなことかよ……」


 それを聞いて苦笑する鈴木。


「……えっ?」

 

 キョトンとする隆幸。


「未来にそんなものは無いよ」

「多分無くなるでござるよ」

「えーと……」


 それを聞いてどう考えれば良いのかわからなくなる隆幸。


……)


 結果を知っている隆幸からすると、全く意味が分からない。

 だが、二人は言った。


「昨今は何かとコンプライアンスに厳しいでござる」

「低俗な物は段々と無くなっていく運命だよ」


 それを聞いてむっとする隆幸だが、言われて


(……まあ、低俗な所があるのは確かだけど……)


 佐藤と鈴木の二人はしみじみと答える。


「ああいった古いものは淘汰されて消えゆく運命でござる」

「未来に必要のないものだな」


 そう答える二人だが、隆幸は別のことに気付いた。


(……あれ? でもよく考えるとおかしいな……)


 自分の中に不可解な物があることを感じる隆幸。


(そういや未来って……どうなるんだ?)


 重要な事に気付く隆幸。

 そのことに気付いた隆幸は尋ねてみた。


「そしたらさ、未来ってどうなってると思う?」

「……へっ?」

「……えっ?」


 キョトンとする佐藤と鈴木。

 そして、腕を組んで悩み始めた。


「うーん……多分、全ての国が無くなって一つになるとか……」

「みんなが平等で幸せに暮らせるとか……」


 それを聞いて不安になる隆幸。


(……俺達って……未来のこと何も知らないのか……)


 そして、ふと思い立ち、ネットで調べてみる(この時代はIモード)のだが……


「……なんだこれ?」

「どうしたでござる?」

「これ……未来予想図を調べてみたら……」


 隆幸が未来予想を調べてみれば、何十年も前の前時代的な未来予想図しかなかった。

 それを見た鈴木が首を傾げる。


「全身タイツで恥ずかしくないのかな?」

「それ以前にこのコンピューターデカすぎ……」

「ありえねーわ」


 あまりにも荒唐無稽な未来予想図に呆れる三人。

 他にはこんなのが出てきた。


「なんか既に第三次世界大戦が起きてることになってる……」

「アメリカの大統領が全然知らん人やけど、これ誰?」


 未来人の予言内容を見て辟易する三人。

 しまいにはこんな未来予想図もあった。


「あ、なんか勢力図が色々変わるやつだ」

「さらっとロシアが中国に取られてる……」

「日本は結構、最後まで頑張ってるね……」


 何故か世界が色々合併吸収を繰り返して一つになる未来予想図もある。

 それを見て苦笑する三人。


「色んな未来予想図があるんだな」

「中々面白いでござる」

「外れまくってたけど」


 未来予想図のあまりの多様さに辟易する三人。

 隆幸はぼやく。


「こうなると、未来がどうなるか何てわからねーな」

「まあ、そう簡単にわかればだれも苦労しないでござる」

「そうそう。考えるだけ時間の無駄」


 うんうん唸る佐藤と鈴木だが、隆幸はふと気になって聞いた。


「じゃあ、何で祭りが未来に無くなるって言った?」

「「……………………」」

 

 それを聞いて二人が首を傾げた。


「……言われてみれば不思議でござる。何故か無くなるものだと思っていたでござる」

「……改めて聞かれると変だな。なんでだろ?」

(どういうことだよ……)


 二人の言い分に隆幸が呆れてしまった。

 すると、佐藤はポンっと手を打った。


「そうだった! ! だから祭りがなくなると思ったんだ!」

「そうそう! それだ!」


 鈴木と佐藤がうんうんと納得する。

 だが、先に答えを知ってる隆幸としてはそれを支持できない。


?」

「それは……科学的じゃないから?」

「今だって十分科学的じゃないだろ? それに本当に神様が居ると信じてるかって聞かれたらみんなノーって答えるんだし」

「それもそうでござるが……」

「なんかわかんねーんだよなぁ……」


 そう言って首を傾げる隆幸。

 すると、後ろから声がかかった。


「何やら難しい話をしてるじゃないか」

「先生……」


 歴史の先生がニヤニヤ笑顔で現れた。

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