第27話 祭り歌


 部屋に戻った隆幸だが、すぐにツギオに部屋に来た。


「検証は良いのか?」

「プリントアウトしたやつをおじさんがじっくり見てるから、暇だし」

「プリントアウトって……今の機械と互換性があるのか?」

「そこは無いから画面を写真で撮って、それをプリントアウトしたよ」

「なるほど」


 納得する隆幸と部屋でゴロンとするツギオ。

 そして、ツギオは笑いながら言った。


「あ、そうそう! 祭り歌を教えて欲しいんだ! この紙渡されたけど読めなくて……」


 そう言って祭り歌が書かれた紙を見せるツギオだが、それを見て不思議そうな顔になる隆幸。


「いや、未来の日本人なら読めるだろ? と言うか、普通に日本語喋ってるだろ?」


 隆幸の言葉に困り顔になるツギオ。


「いやぁ、実は翻訳機を使ってるんだ。自動で言葉が翻訳されてるから聞こえるんであって、実は日本語喋ってないんだなぁ……」

「……そうなのか?」


 不思議そうにする隆幸。

 どう聞いても普通に喋ってるようにしか聞こえなかったからだ。

 すると、ツギオは着けていたネックレスを外す。


「がえおぱおんぜうんいあないあま……」

「そんな言葉使ってたのかよ……」


 謎の言語に思わず呆れる隆幸。

 ツギオはネックレスを着けて言った。


「しょうがないよ。宇宙人とも交流してるんだよ? 他の宇宙人の言語が採り入れられたり、言葉の意味が変わったりして千年もやってきたから。一応日本語だけど、今の日本語と全然別物だよ?」

「時間の進みは怖いねぇ」


 日本語の進化の先を見て驚く隆幸。

 ちなみに現在でも1000年前の言葉は翻訳に難儀な思いをするので、変わり過ぎるのも困るのである。

 そう言ってツギオは歌を順番に尋ねる。


「とりあえず、この正調と破調ってのは、どういう意味?」

「正調ってのは正式な歌で感謝する時に歌って、破調ってのは担ぐときに気合入れるために歌う春歌だ」

「春歌?」

「あ~色歌って言うのかな? 要するに下品な歌」

「え~と……」


 不思議そうにするツギオに一つ一つ説明する。


「例えばこれは『山のあけびは何見て開く 下の松茸見て開く』ってのは、あけびはマ〇コの隠語で松茸はチ〇ポの隠語。あとはわかるな?」

「なるほど」


 苦笑するツギオ。


「じゃあ、この『そこのねーちゃん鍛冶屋(かんじゃ)ごっこしようまいか 背戸に菰(こも)ひいてべべしようまいか』というのは?」

「鍛冶屋ごっこってのは竈の穴に焼いた鉄の棒を出し入れするからエッチの暗喩。『背戸』ってのは裏庭のことで『菰』ってのは藁で作った敷布の事」

「つまり両方エッチしようって意味?」

「そう言うこと」

「イエスかハイを求めるような歌だね」


 隆幸の言葉に苦笑するツギオ。

 その辺からは隆幸が順番に説明し始めた。


「『奈良の大仏セ〇ズリこけば奈良の都はネバだらけ』これなんかすぐに意味は分かるだろ?」

「え~? わかんないよ?」


 不思議そうにするツギオ。

 隆幸はちょっと意外そうに尋ねる。


「何って日本で一番大きな大仏がセ〇ズリしたら凄いことになるってことだろ?」

「……えっ? 日本で一番大きい大仏?」


 キョトンとするツギオ。


「日本で一番大きな大仏ってエルドラド星系にある山村廬舎那仏でしょ?」

「……ツギオ。今の日本の領土にはそのエメラルド星系はおろか宇宙にもねぇぞ? あるのは日本列島だけだ」

「……あーなるほど。ちなみにエルドラド星系ね」

「そこはどうでもいい」


 ぽんっと手を打つツギオとさらっと突っ込みを入れる隆幸。

 どうやら日本一も大幅に更新されているようだ。


「そしたら……確か牛久大仏だっけ?」

「それは確かに日本最大の大仏だが、元々は奈良の大仏になるんだよ」

「えーと……ああ! そういうこと!」

「そういうことだ」


 呆れて苦笑する隆幸。

 そして彼はすぐにあることに気付く。


「確認するが日本で一番大きな山は?」

「タカマツ星の道鏡山で標高が9453m」

「エベレストよりも高いな。日本で一番大きな湖は?」

「クサナギ星の緑石湖で大体527000㎡」

「うん。全部無いからな。日本列島よりもでけぇ湖じゃねぇか」

「……うわぁ……大分常識が違う……」


 隆幸の言葉に困るツギオ。

 すると隆幸は笑って歌を二つ指さす。


「これさえ覚えておけば後は何とかなるわ」

「どれ?」

「『チ〇ポチ〇ポとえばるなチ〇ポ チ〇ポチャンぺの爪楊枝』と『チャンぺチャンぺとえばるなチャンぺ チャンぺチ〇ポの植木鉢』の二つだ」

「わかりやすいねえ」


 苦笑するツギオ。

 ちなみにチャンぺとは方言でマ〇コのことだ。


「どういう意味?」

「男だ男だと威張るな。この短小野郎。女だ女だと威張るな。このユルマン女って意味だ」

「いつの時代も男女の関係は変わらないねぇ」

「そんなもんだろ」


 流石に笑うツギオとふっきらぼうな隆幸。


「その辺は千年後と変わらないんだなぁ……」

(……うん?)


 その言葉を隆幸は聞き逃さなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る