第13話 ター〇ネーター

 突然現れた謎の男に不思議そうに首をかしげるマロだが、すぐに笑顔を見せる。


「さてはマロのファンでおじゃるな! では早速歌ってしんぜよう!」


 そう言って再び歌いだすマロ。


「そぉらに♪ こぼれ落ちた♪ 二つのふぉしが♪」


 再び下手な歌を歌いだす麻呂。


「おい! 変なことするんじゃない!」


 慌てて怒鳴り始める警官が、ロードローラーで歌い始めるマロを止めに入ろうとした時だった。


ガシッ


 ロードローラーの前に立っていたスキンヘッドの大男が、鉄で出来た大きな車輪に手を掛ける。

 すると……


ふわり……


 大きな鉄の車輪が宙に浮いた!

 そのまま事も無げにロードローラーを傾けていく謎の男。


「おい何だアイツ!」

「すげぇ!」

「ロードローラーを持ち上げてる!」


 見物人たちが驚きの声をあげて様子を見守っている!


「まろぉぉぉぉぉ!!!」


 傾きに耐えきれずにロードローラーの上から転げ落ちるマロ。


「のぉぉぉ!」

「どうしてぇぇぇぇ!」

「うわぁぁぁぁ!」


 彼だけでなく、他のメンバーも同じように転げ落ちた。


「ざまみろ」

「ようやく静かになった」


 口々にスカッとした声を出す見物人たちだが、その顔がすぐに凍り付いた。


「えっ……」

「嘘……」

「冗談だろ……」


 その場に居た全員の顔が引きつった。


 

 1トン以上は確実にあるロードローラーを真上にかかげる男を見て、その場に居た全員の顔が凍り付いた。


「「「「あわわわ……………………」」」」


 その様子を恐怖に引き攣った顔で見るHEIAN狂のメンバー。

 そして謎の男は、


ドグシャァ!


 4人のバンドメンバーの上にロードローラーを落とす謎の男!

 辺りにはアスファルトと鮮血が飛び散る!


ドクドクドクドク……


 ロードローラーの下から血が止め止めなく流れ、完全にこと切れた死体が4つ転がっていた。


「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁ!!!」」」」


 慌てて逃げまどうひとびと。

 

「なん……だと……」


 あまりの様子に凍り付く警官たち。


「……………………」


 テレビを回しているリポーターですら、あまりの光景に絶句する。

 最初に復活したのは警官だった。

 拳銃を構えて迷わす大男へ向ける。


「貴様! 抵抗するわ! 抵抗すれば撃つ!」


パン!


 そう言って上に向けて発砲する警官。

 だが、大男はニヤニヤと笑っただけだ。

 すると、その場に居た年長の警官が言った。


「俺が撃つ! お前たちは撃つな!」

「部長!」


 どうやら上司のようで、後輩に拳銃を撃たせないためにそう言ったようだ。

 拳銃を撃った警官はその後の出世の道も絶たれ、過疎地に左遷までさせられる。

 そう簡単に撃って良い物ではないが、状況がそれを許してはくれない。


(こいつは絶対ヤバい……撃つしかない! さらば出世街道!)


 覚悟を決めて年配の警官は引き金に力を入れた。


パン!


 警官の拳銃から放たれた弾はそのまま大男へと向かい……


パカァン♪


 大男の胸に当たって変な音を立てる。

 それを聞いて年配の警官は舌打ちをした。


(何だ? 防弾チョッキか? くそ!)


 明らかに銃弾は胸を貫いていなかった。


パンパンパン!


 年配警官はそのまま大男に連射するのだが……


パキキキィン♪


 奇妙な音を立てて、男の腕に弾かれる!


(くそ! どうすれば……)


 年配警官がそんなことを考えていたその時だった!


フッ……


 大男の姿が掻き消えたかと思うと年配警官のすぐ前に現れた。

 その瞬間、彼は失敗に気付いたが遅かった。


「しまっ!」


ドゴォン!


 大男の一撃を受けて吹っ飛ばされる警官!


ガシャァン!


 飛ばされた警官はファッションショップの窓に当たってガラスが派手にぶちまける。


「そんな……」


 あまりの出来事に呆然とするリポーターを尻目に大男は急にしゃがみ……


ドゴンッ!


 激しい音を立てた!

 その瞬間、大男の姿は掻き消えた。


 どうやらジャンプしたようで、地面にはアスファルトに残された足跡だけがあった。


「一体何が……」


 取り残された人たちは状況を一切理解できず、呆然としていた。


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