コミュ障ヒキニートだけど、プロイセン王に転生したら美人な嫁を手に入れたので、ナポレオンに負けられない

持是院少納言

プロローグ

 21世紀の日本で引き籠もりニートをしていた俺は、パソコンでナポレオン戦争のゲームをしていた。このゲームではナポレオン戦争の将軍をプレイヤーキャラクターとして選べる。戦略ゲームなので、誰を選んだからと言って特に影響がある訳では無い。

 俺が選んだ人物はプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世だ。厳密にはこの王は将軍では無い。要は指揮官としては強くない。

 しかし、俺がフリードリヒ・ヴィルヘルム3世を選んだのには訳がある。それは、フリードリヒ・ヴィルヘルム3世に共感出来るからである。

 フリードリヒ・ヴィルヘルム3世は「不定詞王」渾名される様な人物であり、主語を欠いた横柄に響く断片的な話し方をしていたそうだ。

 俺もコミュ障で、人と会話するのが苦手だ。そう要因も、引き籠もりニートをしている原因の1つである。

 「不定詞王」と渾名される様な話し方でも国王として生活出来ているのであるから、羨ましい限りである。変な話し方なのに、大国の国王な上に美人な王妃もいて子沢山と言う、俺とは真逆の様な境遇で少し嫉妬してしまう。

 出来る事なら、フリードリヒ・ヴィルヘルム3世に生まれ変わりたと思いつつ、キャラクターを選択して、プレイを始める。すると、俺は急に意識が朧気になり、気を失うのであった。



 意識が戻った俺は「知らない天井だ」と思わずお約束の台詞を頭の中で呟いてしまう。何故なら、俺がヒキニートとして毎日眺めている部屋の天井と明らかに違うからだ。俺は明らかに知らない天井から違和感を抱き、周囲を観察する。

 周囲を眺めると、俺が目覚めた部屋の内装はロココ調の絢爛豪華な部屋であった。まるで、どこかのヨーロッパの王宮の様であった。

 しかし、部屋はやけに広く、調度品が大きい。これは夢の世界に違いないと思い、俺は巨人の王宮にいる夢でも見ているのだろうと寝具から身を起こそうとする。

 すると、俺が動かした手が目に入る。俺が動かしているのは確かだが、俺の意思で動かしている手は明らかに俺の手では無かった。

 何故ならば、俺が動かしている手は小さな子供の手だからだ。ビックリした俺は思わず「何だ、こりゃ!?」と叫んだが、「あうあう」と言う言葉しか出ない。その後、色々と話してみるが、言葉にならなかった。

 言葉を発していると、身なりの良い巨大な女性が近寄って来て、俺を抱きかかえる。今までの状態から、俺は赤ん坊になった夢を見ているみたいだ。


 これが夢の世界だと思っていた頃が、俺にもありました。夢の世界に違いないと、夢が覚める様に願ったり、寝て起きての繰り返しをしても、ちっとも夢は覚めない。

 どうやら、俺は本当に赤ん坊に転生してしまったらしい。


 俺は赤ん坊への転生を受け入れて、改めて自身の置かれている状況を観察すると、俺の生まれ変わった家は、かなり立派な家であることが窺える。部屋は宮殿の様に綺羅びやであり、俺の面倒を看てくれる女性たちも、綺麗な衣服を纏っていることから、高貴な家門なのであろう。

 因みに、俺の面倒を看てくれている女性が母親かと思ったら、後でかなり豪華な服装をした女性が現れ、そちらが俺の母親だった様だ。


 転生し俺の周りの人間は、ドイツ語らしき言語を話しているのは分かるが、ドイツ語なんて分からないので、大人たちが何を話しているのか、必死に理解しようとする。何となく大人が話している言葉が分かる様になっていった。

 部屋から出してもらえる様になると、言語の理解は更に増していったが、綺羅びやかな服装の人々に傅かれることから、まるで王子様か何かの様である。

 大人の言葉がある程度分かるようになった頃、自分がプロイセン王国の王族として逆行転生したことを理解したのであった。


 当代のプロイセン国王は大王と呼ばれるフリードリヒ2世であり、俺の父親は甥のフリードリヒ・ヴィルヘルム(後のフリードリヒ・ヴィルヘルム2世)の第一子であるフリードリヒ・ヴィルヘルム3世に転生してしまったようなのだ。

 ゲームで選択した人物に逆行転生することになるとは思わなかったが、まさか赤ん坊として転生してしまうなんて。

 取り敢えず、将来のプロイセン国王としてナポレオンと戦っても負けないように頑張ってみるか。

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