第17話 やっと本格的に活動できそうな予感
目が覚めたら棺桶の中だった……と一瞬思ったがこれはミライが入っていた箱の中だな。
ベッド代わりに寝かせてくれたのだろう。
「あ、起きた。もう大丈夫なの、レーム君」
「えぇ、ただの魔力使いすぎなので。もう大丈夫です」
身体を起こすと、リリの後ろにミライも立っていた。
僕が渡した名刺をじ~~っと凝視して固まっている。
「ミライは何をしているんでしょう?」
「えと、分かんない。なんかあのメイシ? っていう紙を見て固まっちゃって」
え、なぜ?
もしやアイドル契約がマズイ影響でも与えたのだろうか?
何しろこの世界では多分イレギュラーなスキルだろうからなぁ。
「あの、ミライ? 大丈夫ですか?」
彼女は片目のレンズをカシャカシャと回しながら、こちらに向き直った。
「――ハイ。問題ありません。この魔力で生成された物質を解析していまシタ。契約
スキルの触媒ということは解りますが、やはり『アイドル』が何を意味するのかまでは不明デスね」
ミライはそういうと名刺をフッと消した。
あぁ、それ自在に出し入れできるんだ。キチンと契約できている証拠ともいえるかもしれない。
実際僕の方でスキルを確認しても――。
契約者:<歯車ミライ>
――うん。ちゃんとアイドルとして契約できている。
「アイドルとはどんなものか、ですか。それに関しては言葉で伝えるよりも記憶を見てもらった方が早いかもですね」
「なるほど。契約スキルを媒介して記憶を転送するということデスね」
「そういうこと。じゃ、早速いきましょうか。契約者、ミライと情報共有。ライブ映像を転送」
また棒立ち状態になってしまうミライ。
ハッピークローバー3周年ライブの記憶を再生中ってところだろう。
「レーム君、例の記憶をミライちゃんにも?」
「そうです。リリが見たのと同じやつですね」
「あれは凄かったなぁ~」
「時間が空いた時にまた記憶を共有しましょう」
「うん!」
などとリリと話している間に記憶の再生が終わったらしい、ミライが動きだした。
「これが、アイドル。歌や踊りなどのパフォーマンスをすることで他者に娯楽を提供する存在、という認識でいいのでショウか?」
「う~ん。まぁ色々付け足したいですが、取りあえず今はその認識で大きく間違ってはないですかね」
「そして、もしや当機にもこのようなパフォーマンスを要求してやがりマスか?」
「そりゃまぁアイドル契約したし……え? もしかして嫌だったりする?」
ミライの表情はイマイチ読みにくいのだが、なんかあんまり乗り気には見えない。
「嫌ではないですが、恐らく当機本来の機能ではないと思われマス」
「歌ったり踊ったりする為に作られたわけではない、と?」
「ハイ」
「そっかぁ。ミライちゃんの声すっごく綺麗だし、歌とかも素敵そうだけどなぁ」
「当機は音声、外見など含めかなりの予算をかけて制作されておりますので当然デスね。歌ったり踊ったりする為にここまでの予算はかけない、と推測しマス」
あんまり表情は変わってないのに、なんかドヤ顔してるみたいに見える。ミライって、ロボっぽさが全面に出てる割には中身が割と人間臭い気がするなぁ。
「それで、ミライが作られた理由ってなんなんです?」
「ハイ。当機が作成された目的は――――記録が破損していマス」
「え?」
「該当記録が破損してマシたね。復旧作業中ですが、どれくらい時間がかかるか不明デス。そもそも出来るのかどうかも不明デス」
「もしかして、ミライちゃんは何も覚えてない、ってこと?」
「厳密には全データが破損しているわけではないデスが、平たくいえばそんな感じデス」
じゃあ歌って踊る為に作られたかどうか分からないのでは?
いやまぁ、ミライ的にはそんなことの為に予算おりないだろと推測してるってことなんだろうけど。
「そっかぁ。う~ん……でもでも、だったら思い出すまではやってみない? アイドル。だって凄いんだよ? 凄かったよねっ? レーム君の記憶の中のアイドル! ウチ一人じゃ、あのキラキラには届かないと思うの。だから、ね!?」
「キラキラ、デスか」
ミライの瞳の中が歯車のようにキュルキュル回ってるように見える。
確かにリリの言うとおり、あのライブはソロではなくグループで行われていたからな。ソロアイドルも僕は好きだけれど、目指す方向性が違うのは事実かもしれない。
「現状では当機の使用目的が他にないということであれば、そういった目的での流用も可能ではありマス」
「えと、それってウチとアイドルしてもいいってことかな?」
「当機の性能であれば、例え本来の使用目的でなかったとしても『アイドル業務』をこなすことは当然可能デス」
「してもいいってことだね!? やったー!!」
あれ? スカウト成功してる?
僕じゃなくてリリのお陰な気もするが……ま、まぁいいか。リリのアイドル仲間ができたことは素直に喜ばしいことだしな。
「ついでといってはなんデスが、先ほどの記憶にあったような舞台装置や音楽の再生に関してもお手伝いできそうデス」
な、なぬ――!?
「え、え、それってつまり、音楽を作ったり流したりできるってことですかッ?」
「ハイ。当機の記録の大部分は破損していますが、当施設の生産能力データは残っておりマス。音楽の再生装置や映像装置などの作成、使用に関しては問題ありマセん」
そ、そうかっ。ミライのいた時代では魔導機械で音楽聴いたり映像を再生したりするくらいの文明は普通にあったわけだもんな。
ってかこんなロボがいるくらいの技術力なんだから当然だよな。
つまり――。
「じゃ、じゃあ例えば、歌って踊った映像を記録して、どこでも誰でも再生できる装置とかも作れたり、するとか?」
「この施設の装置を使用すれば可能デス。ここは様々な最新魔導具作成研究用の設備が整っておりマスので」
――や、やっぱり!?
これで音楽をつけることも、舞台装置を作ることも、それどころかCDやBlu-raみたいなのを作ってばら撒くこともできる……かもしれない!!
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