止まらない悪い心

@ladyportia

第2話

隣のおじさんが亡くなった後

おじさんの代わりにおばさんがおもてを掃くようになった



大きな桜の木は枯れ葉をたくさん落としているからだ


亡くなったおじさんとの思い出もあるのだろうか

桜の木を眺めながら一生懸命に掃いていた




おばさんは愛想が良く親切だけど

掃き掃除をしながらうちのポストを覗き込むような人だ



毎朝毎朝

あのシャッシャッという箒の音が聞こえてくると偵察時間が始まったと嫌な気分になってくる



あの耳障りな音が無かったら

そう思い続けた




最近二軒隣に新しい住人が入った


隣のおばさんは

そこに勝手に植えていた植木を触れなくなった


表に出てする作業が一つ減った




ある日

桜の木が大胆に伐採されていた

管理者が迷惑がかからないようにという配慮でこちら側の枝は全て無くなってしまった




おじさんが亡くなってから

桜の木をおじさんのように思ってきたのだろうか

隣のおばさんはすっかり元気がなくなった




以来

あの箒のシャッシャッという音を聞くことは無くなった


枝がないのだから落ち葉もなくなり掃く必要も無くなったのだ



寝込んでしまい

今は娘が看病している






ずーーーーっと思っていたのだ

あの掃き掃除の音が無ければと




意識したり無意識だったり

長い時間をかけて思っていたのだ



それを願うのは

良くないことだ




しかし思い通りになると

次の思いが出てくる



隣の家はいつ売りに出されるのだろうか

私の庭付きガレージを作るためには必要な土地なのだ




悪い心は止まる必要がないと私に囁いている




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