第7話 サントニ町の宿

助けた細見の男性はサントニ町にある宿屋の主だった。


体格の良い方が宿泊費滞納を続けていて、払ってくれと伝えたところキレられたらしい。


大柄な男は町の警備軍に捕られられ、溜めていた分と殴った慰謝料分を払うことになるらしい。



そしてその日の夜、助けた宿屋の主に夕食を驕ってもらった。


大きいカリカリのパンを器のようにして、中にカボチャや玉ねぎ、羊肉、チーズなどが入っているものを食べた。パンを切ると中から香ばしい匂いとともに様々具材があふれ出した。

その他にも山菜とトウモロコシ、ハーブの入ったサラダや、メレンゲとフランボワーズのケーキ。あと麦を発酵して作ったお酒も。



民族衣装姿のシリウスとともに料理を堪能していると、昼に助けた宿の主が笑顔でやってきた。


「よぉ~兄ちゃん!昼はありがとうな~。それとこちらのお姉様、お越し頂けて…光栄でしゅ…」


シリウスをおねえさま呼びした主は、無事に噛んだ。


それに対し、シリウスは布越しに妖艶な笑顔を向けて答える。


『こちらこそ、お部屋、ありがとうございます。助かります。』


中性的な声色が一層いいのだろう。

主は全身の血を顔に集めたような顔になっている。


「いえいえいえ…!勿体ないお言葉です…!お2人は帝都からいらしたのですか?」


『ええ、そうです』


「ああ~なるほど、帝都からですか。はるばるようこそ。こちらには何ようで?」


『観光…ですわね。少し、帝都の人混みに飽きてしまって…』


「ああ、なるほど。そうでございましたか。私は1度しか行ったことございませんが、あそこは物凄い人の数ですなぁ。…おっと、ところでお兄さんは帝都では何してるんだい?もしかして軍か?そんな年齢じゃないか……もしかして、学院に通ってたりするのかい?」



   あるじよ。

   やっと俺の存在を思い出したか。

   しかし残念だが……

   帝都も軍も学院も知らん!!

   なんだそれは!

 


どうしたもんかと思いながらシリウスを見ると、シリウスはニコっと笑い、机からスプーンを落とした。

主は食器の落ちる音でそちらに目をやった。


『あら、ごめんなさい。落としちゃった』


「あ!いえいえ!拾いますよ!今新しいの持ってきますね!」


主はにこやかに厨房の方へ向かっていった。



・・・



『はいって言っとけばいいのに』


「いや、その後に話続けられたら次の瞬間嘘だってバレるよ。……帝都とか学院って何?」


シリウスは麦のお酒を飲みながら答えた。


『帝都はこのディヴァテロス帝国の帝都のこと、名前はセンチュリア。学院は帝都にある四つの学校のこと。たぶんあの人が言ってたのは第2学院のことかな。第1学院の生徒は絶対、ここでは出会わないから』


「……なあ、俺らが今いるのって、どこ?」



   本当にわかんない。

   ちょっと何言ってるのかわかんない。



そう思いシリウスに尋ねるとシリウスは少し目を張って、


『ああ…そうだよね。ごめん、ちゃんと1から説明するね。とりあえず食べて部屋に戻ってからね』




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