第36話 灼熱の騎士 中編

「コ、コタロウ!」



 トドメとばかりに吐き出されたカオスドラゴンゾンビのブレスを、炎に包まれた鋼鉄の愛犬が立ち塞がる。


 クマ吉の撃ち出したファイヤーボールにより燃え上がる、ガッチガチなボディーで、コタロウは吐き出された霧状のブレスを受け止める。



「グゥゥゥ……」



 歯を食いしばり、紫色のブレスを一身に受け耐えしのぶ愛犬……体にまとう炎がブレスを熱し瞬時に蒸発させていく。


 やがて炎とブレスの勢いが、同時に衰えはじめたとき――



「ワオ〜ン!」



――コタロウの大きな吠え声と共に、見にまとった炎とブレスの奔流が止まる。


 コタロウとリンの周りの地面は、腐食ブレスにより毒々しい緑の色に変化し、浅い沼地のような、ぬかるんだダメージフィールドへと変わっていた。



「グゥゥゥ…… 」


「……」



 腐食ブレスの攻撃に耐え切ったコタロウとリン……だが、戦いで負ったダメージに愛犬は見るも無惨な姿に変わり果て、リンは言葉を失ってしまう。



「ウゥゥゥ……ワン!」



 各部の装甲は錆びつき、ダメージの蓄積により立っているのもやっとのヨレヨレな状態……それでもコタロウは、なおもご主人様を守ろうと威嚇の声を上げ、注意を引こうとする。



「もう……もうやめて!」



 だが愛犬は、リンの願いを無視してドラゴンゾンビに立ち向かおうとする。すると突然、自らの意思とは関係なしに前脚が『ガクッ!』と折れ、コタロウは横に倒れてしまう。



「コタロウ!」



 リンは涙で濡れた瞳を大きく見開き、目の前にそびえ立つ鉄壁の巨躯を見つめる。



「コタロウ! どうして⁈」



 リンは愛犬に駆け寄り、腐食し無惨な姿になった前足をさする。

 装甲に付着したドラゴンゾンビの血は、炎で蒸発し腐食は止まっていたが、装甲のあちこちは錆びつき、体の内部が見えるほどの傷を負っていた。



「コタロウ、傷だらけだよ……痛いよね。ごめん。私、また足手まといになってる」



 そう言って再び涙を流すリン。


 そんな主人の言葉を聞いたコタロウは、首を横に振り、ガッチガチな舌でリンの頬に流れる涙を舐める。



「コタロウ……いたたた、痛いよ、コタロウ」


「わう〜ん」



 『こんなのなんでもないよ』とコタロウは応え、リンを安心させようとする。



「ありがとう、コタロウ。でも、もういいから、無理しないで……」


 リンはコタロウの顔を撫でながら、泣きそうな声で呟く。


 状況は絶望的だった。コタロウとクマ吉はボロボロに傷つき、ハルカも銃の残弾は尽きた。残されたのは、コタロウがいなければ何もできない自分ひとりだけ……もういまの私たちでは勝てない。

 そんな思いが頭をぎり、リンの心は折れそうになっていた。


 勝てないならば、せめて痛みのない別れを……あきらめにも似た感情が心を支配していく。しかしその思いを感じたコタロウは、傷ついた体に力を入れ立ち上がる。



「コタロウ……?」


「わん! わん!」



 『あきらめないで! ほら!』、リンの心にコタロウの思いが伝わる。立ち上がったコタロウの視線の先へリンが顔を向けるとそこには――



「よくも私のリンを、また泣かせてくれたわね! 絶対に許さない!」



――そこにはドラゴンゾンビの攻撃をかい潜りながら、銃打による接近戦を試みる親友ハルカの姿があった。



「はーちゃん⁈」


「GぅuギYaaaぁぁ!」



 ドラゴンゾンビの攻撃を避けながら、撃ち尽くしたデザートイーグルを腐る体に叩き込み、すかさず離脱するヒット&ウェイで、注意を必死に自分へと向けさせ時間を稼いでいた。

 

 攻撃のたびに、飛び散る死竜の血がハルカの体に付着し、刺すような痛みがダメージと共にハルカを襲う。


 だが、ハルカはそんな痛みを無視して、カオスドラゴンゾンビへと攻撃を加える。リンを悲しませたことへの怒りが少女を突き動かす。


 攻撃を避けながらカウンターの【銃打】をつ撃ち続けるハルカ……その顔は苦痛を我慢しながらも、瞳は怒りに燃えていた。



「クッ、痛みが邪魔だ。いくら攻撃を避けていても、そのうちダメージフィールドにHPを削り取られて負ける。なにか手を打たないと……そうだアレなら⁈」



 カオスドラゴンとた戦いながらハルカは何かを思いつくが、その顔は苦悶の表情を浮かべていた。



「でもあれは……背に腹は代えられないか。イヤだけど……イヤだけど!」



 攻撃を避けながらそう呟いたハルカは、視界に映るメニューを操作し、あるアイテムを選択し装備する。それは――



装備

 頭【タクティカルヘッドギア】

 体【タクティカルコート】

 右手【デザートイーグルA】

 左手【デザートイーグルB】

 足【タクティカルボトムス】

 装飾品【タクティカルクロス】【タクティカルブーツ】【空欄】【空欄】



【フル装備ボーナス】 

 防刃・防弾・衝撃・魔法・全属性攻撃に対するダメージ軽減



――封印せし【タクティカルヘッドギア】……禁断の猫耳装備だった。



「全属性へのダメージ軽減で痛みとダメージが和らいだ。これでまだ時間を稼げる。私にコレを装備させて、リンを悲しませたこと……絶対に後悔させてやる!」



 猫耳ガンナーハルカが、再びカオスドラゴンに戦いを挑む。



「はーちゃん……もうやめて、なんで……」



 自分のためなんかに、再び戦いに身を投じた親友の姿を見て、リンの心は暗くなる。



「クマ〜」



 すると遠く離れた位置で、傷つき倒れ伏していたはずのクマ吉の声が、リンの耳に届く。



「ク、クマ吉⁈」



 いつの間にか地を這い、声の届く範囲にまで、クマ吉は近づいていた。最短距離でダメージフィールドを突っ切ってきたのか、地面に接する赤い装甲は当然のように腐食していた。


 火属性の装甲のおかげか、コタロウほど装甲は腐食してはいなかったが、胸に空いた傷口から火花が飛び散りるたびに、クマ吉は苦悶の声を上げる。



「ク……クマ〜!」



 最後の力を振り絞るように立ち上がったクマ吉は、火魔法のファイヤーボールを使おうと、両手を上げのだが……。



「クマ?」

 


 いつものファイヤーボールが現れない。力を使い果たした今のクマ吉には、小さな火の玉ひとつ作れなくなっていた。しかし――



「クマー!」



 クマ吉は諦めない。痛みに耐えながらも、必死にファイヤーボールを作ろうと、両手に力を込め続ける。



「クマ吉も……」



 皆が必死に戦う姿を見て、リンは胸が熱くなるのを感じた。

 

「わたし何をやっているの? 負けたら、もう一緒にいられなくなるのに……」



 みんなが傷付くの恐れて、勝てないからと諦めてしまった不甲斐ない自分に腹が立った。そして守られているだけの存在であることに怒りを覚えた。



「みんな必死に戦っているのに……私だけ守られているなんてイヤだ!」



 リンの感情が爆発しその瞳に再び虹色の光が宿りはじめる。すると、コタロウは何も言わず体を地面に伏せる。



「ごめん。コタロウ、また痛い思いをさせちゃう。けど私はまだみんなとお別れしたくない。だから……力を貸して!」


「ワン!」


 力強い同意の鳴き声を聞いたリンは、コタロウの体を駆け上がり、再びシートにまたがり、ハンドルバーを握る。



【アニマドライブ接続……完了】

【神経伝達光ファイバー接続……完了】

【操者とのリンクスタート】



 ゆっくりと立ち上がるコタロウ……再び人犬一体となったリンの瞳に虹色の光が灯る。


 するとリンの視界に映るウィンドウの枠が虹色の光を放ち、あるメッセージが表示されていることに気付いた。



【機獣ファイヤーベアーとの信頼度が一定値を超えました。【進化召喚】スキルの解放条件クリアー。機獣クリムゾンベアーを進化召喚しますか? YES / NO】



「なにこれ? クマ吉を進化召喚? クリムゾンベアー? これって……」


「わん」



 どうすればと戸惑うリンに、コタロウは『大丈夫』と肯定の意思を込めて吠えた。


 コタロウの想いに、リンは力強く頷くと、迷わず手を振り上げ――



「クマ吉、力を貸して! 進化召喚クリムゾンベアー!」



――【YES】を力強く選択した。


 次の瞬間、両手を上げ必死にファイヤーボールを放とうとするクマ吉の足元に、巨大な虹色の魔方陣が現れた。



「くま〜、く? くま⁈」


「な、なにあれ? まさかリン⁈」


「グuoぉo⁉︎」



 なにごとかと魔方陣を見回すクマ吉、ハルカとドラゴンゾンビもまた、戦いの最中に発せれた眩い光に気付き、距離を取りながら目を走らせる。


 虹色の輝きを放つ魔方陣は、ゆっくりと上昇をはじめる。足元から頭へ魔方陣が触れたクマ吉の体は、徐々に虹色の包まれていく。



「クマ〜!」



 スッポリと全身を虹色に包まれたクマ吉……そして魔方陣は役目を終えたと言わんばかりに、ひときわ眩い光を放つさちながら爆散した。



「きゃっ!」


 虹色の光が広間の中を明るく照らし出し、あまりの強い光に、リンは思わず腕で目を覆ってしまう。



「ど、どうなったの?」

 

 そして目を開けたそこに現れたのは――



「グゥルルル……」



――全身が紅蓮に輝く巨大な熊だった。


 炎に煌めく装甲が全身を覆い、まるで真紅の鎧を着ているような……体長四メートルを超える巨熊が立っていた。

 両腕の爪と拳は以前よりも大きく、全身がマッシブになった姿は、まるで拳闘士のように逞しく見える。


 いままで見たことのない姿のクマ吉だったが、ご主人様を見つめる瞳は変わらず、その佇まいにリンは安心感を抱いた。



「アレ、まさかクマ吉なの⁈」



 驚きのあまり、ハルカは目を見開き――



「クマ吉⁈ すごい! なんかカッコいい!」


「ワン!」



――初めて目にするクマ吉の姿に興奮したリンは、思わず声を上げていた。


 そんなリンの声に反応して、突如現れた炎の巨熊に警戒し動きを止めていたドラゴンゾンビは、目の前にいるハルカを無視し、新たなる脅威となるクマ吉に向かって動き出す。



「GぅuギYaaaぁぁ!」



 雄叫びを上げ、引き抜いた腕を振りかぶると、クマ吉へ向かって混沌の死竜は突進する。

 

 その姿を見た巨熊は、両腕を頭上高くに上げ構えると――



「グルッゥゥゥオオオォォォォォンン!」



――天に向かい咆哮を上げた。


 すると、両腕に炎が舞い散り、拳と爪が赤く赤熱化していく。そして引き抜いた腕を、棍棒のように叩きつける攻撃に、クマ吉は迷うことなく右腕を振り下ろす。



「グォォォォ!」


「ぐきゃあああ」



 棍棒代わりの腕とクマ吉の爪がぶつかり、まるで熱したナイフでバターを切るように、『スッ』とドラゴンゾンビの腕を切り裂いた。


 そしてそのまま狂える死竜の体に左腕を連続で打ち込もうとしたとき、ドラゴンゾンビは足裏のリアクティブアーマーを爆発させる。


 一瞬の急加速……クマ吉の攻撃をかい潜り、混沌の死竜は体当たりをぶちかます。



「ぐおっ⁈」



 体勢を崩し、そのまま倒れ込むクマ吉……すぐさま立ちあがろうとするが、すかさずカオスドラゴンゾンビはクマ吉の上に巨体を乗せ、マウントポジションを取る。


 健在な片足と、後ろ足で両腕を塞がれたクマ吉は、なんとかして抜け出そうともがくのだが、力が拮抗しているのか抜け出せない。



「Guオぉoooッ!」


 するとドラゴンゾンビは、失った左腕の肩を、クマ吉の体に向かって下に向けた。すると……肩の傷口から血が流れ出し、クマ吉のボディーに流れ落ちていく。



「グゥゥゥ!」



 滴る血が赤い装甲に当たると、クマ吉は苦悶の声を上げた。


 炎属性の装甲は、腐食の血に強くはあるが、完全に耐性がある訳ではなかった。多少の血ならば問題ないが、滴る血が溜まり、長い時間装甲に触れ続ければ……腐食からは逃れられない。


「く、クマ吉⁈」


「ヤバい、クマ吉の装甲でも腐食に耐えられないなんて……クマ吉! 炎の爪でもファイヤーボールでもなんでもいいから火属性の攻撃を!」


「グゥゥゥ……くまぁぁぁぁぁ」



 ハルカの声にクマ吉が『さっきので……MP尽きたぁぁぁぁぁ』と叫んだ。



「はーちゃん、さっきの攻撃でMPがもうないって……」


「……いやいやいやいやいや! なんでよ! なんであんだけカッコいいシュチュエーションで登場したのに、MP尽きてるのよ! 普通ここはカッコよく現れて活躍するシーンでしょうに! 初登場して即ピンチって、どんな展開よ!」



 なかなか腐食しないクマ吉に、剛を煮やしたドラゴンゾンビは、確実に勝つために、息を大きく吸い込み出す。



「くま〜」



 腐食のブレスの予備動作を見たクマ吉は、『助けて〜』と情けない声を出しながら必死にマウントポジションから抜け出そうと、ジタバタと足掻き続けた。


 その姿を見たコタロウは、ボロボロの体を引きずって地面に落ちる巨大な騎士剣を口に咥え構える。


 いまだアニマドライブをフルパワーにした代償である強制冷却から脱せられず、運動性能が低下しているコタロウ……腐食によるダメージで体はボロボロに錆びつき、まともに戦える状態ではなかった。


 それでもコタロウは、戦うことを……勝つことを諦めない。自分の命を助けてくれた少女のささやかな願いを叶えるため、愛犬は戦いに挑む。



「コタロウ……私も一緒だよ」



 コタロウの意図を察したリンも、覚悟を決めるように強くハンドルバーを握り直す。そんなリンに応えるかのようにコタロウも頷き、最後の力を振り絞り、地面を蹴り上げた。


 錆びついたガッチガチな巨体が大地を駆け抜ける。口にした大剣に再び虹色の輝きを宿す。



「ワオーン!」



 コタロウの吠え声がドラゴンゾンビのヘイト敵視を上げ、クマ吉からターゲット攻撃目標を奪い取る。



「GrぅUがAぁaa!」



 迫りくる敵を討つべく、ドラゴンゾンビはマウントポジションを崩さずに長い首を上げ、コタロウに向かって口を大きく開く。喉の奥には、紫の光が宿っていた。



「コタロウ、クマ吉!」


「ワン!」


「くまー!」



 リンのやろうとしているイメージが、【意思疎通】スキルによって二匹の召喚に瞬時に伝わる。


 カオスドラゴンゾンビのターゲットが、コタロウに移り拘束が弱まった瞬間――



「くまー!」



 クマ吉は渾身の力を込めて腰を持ち上げ、海老反りになる。バランスを崩し倒れいくドラゴンゾンビ…… 転倒を防ごうとクマ吉から脚を離したとき、真紅の巨熊はマウントポジションから抜け出した。


 それはリンがかつて見た、総合格闘技の動画『君にもできるやさしいマウントポジションからの抜け方』にあった技のひとつだった。



 脚を踏ん張り、転倒を防ごうとする狂える死竜の目に、虹色に輝く剣が見えたとき――



「GuウOォォォ」



――狙いなどつけずに、溜め込んだブレスを吐き出した。


 ガッチガチの装甲さえ溶かす腐食のブレス……当たらないまでも、牽制し体勢を立て直す時間さえ稼げればよかった。



「ぐGYあ¥ゃ⁈」



 だがそんなカオスドラゴンゾンビの考えは、すぐさま崩れ去ってしまう。それは虹色の剣線と共にいるはずのものが……コタロウの姿がなかったからだった。


 虹色の光を放つ大剣だけが、横倒しに回転しながら、腐食のブレスを斬り裂き、カオスドラゴンの体へと突き刺さる。



「GYぁぁぁぁ」


「これだけ近づけば、外さないよ」



 悲鳴を上げるドラゴンゾンビの耳に、リンの声が……死神がソッとささやいた。


 『ギョ!』としながら顔を声のした方向へ向けたカオスドラゴンゾンビの目に、神獣コタロウの姿が映る。


 リンの座るコックピットのモニターには【シューティングモード】の文字が浮かび、すでに神気レーザーカノンの照準は、弱点である黒い結晶体のある首元の部位をロックオンしていた。



「えい!」



 リンは躊躇なく発射ボタンを押すと、背中にある二対の砲身から虹色の光が撃ち出される。


 虹色の光がカオスドラゴンゾンビの皮膚を貫き体内で光が膨れ上がる。



「ウォン!」



 飛び散る腐食の血に触れないよう、コタロウが後ろに跳び下がると同時に――



「グギャアァァァァア」



――ドラゴンゾンビの胸元が爆散し、虹色の光が広間の中を明るく照らし出す。


 やがて……光が収まり広間に静寂が戻ったとき、爆発の中心地には、胸に大きな穴を開け、ピクリとも動かないカオスドラゴンゾンビの死体が転がっていた。



「こ、今度こそ倒せたかな? そうだ、クエストメニューを見れば」


「わん」



 リンは何度目になるかわからない、クエストメニューの表示ボタンをおすと……。



◆【最終クエスト】発生


 レベル90

 初心者の洞窟に現れた混沌の死竜カオスドラゴンゾンビを退治せよ!


 報酬 100万ゴル 

    プレイヤーの望むレアアイテムを確定ドロップ


 必要討伐数 1匹

 期限 あり

 発生条件

 カオスドラゴンを討伐せし者が、パーティー内にいること。


 発生条件を満たすと、強制的にクエストは開始される。

 プレイヤーはクエスト中、以下の制限を受けます。

 ・ショックアブソーバーの強制オフ

 ・クエストのキャンセルは不可。

 ・プレイヤーによる任意のログアウトは不可

 ・ゲームを強制終了させた場合、クエストは失敗と判定されます。

 ・パーティーメンバーが一人でも死亡した場合、クエストは失敗と判断されます。

 ・このクエストで召喚獣のHPがゼロになる、もしくはクエストに失敗した場合、召喚中の召喚獣データは消去され、以後は召喚できなくなる。



「ダメ! コタロウ、まだ倒せてない」


「グゥゥゥ!」



 リンとコタロウの言葉と共に、倒れ伏していたカオスドラゴンゾンビの傷が、動画の逆再生のように元に戻りだした。


 ポコポコと傷口の屍肉が盛り上がり、死した死体を再生していく。胸元の傷だけでなく、自らが引き抜いた左腕も……。


 やがて再生を終えた狂える混沌の死竜は、ゆっくりと鎌首を持ち上げながら体を起こすと――



『Guはッ……GぅgYaaaぁaa」



――無駄な努力だと、リンたちをあざ笑うかのように、咆哮を上げるのであった。



……To be continued『灼熱の騎士 後編』

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