第38話 アレクシス王国へ帰ろう

 朝起きて、くっきーとショコラをもう一度むぎゅっとしてすりすりする。2人ともふわっふわで気持ちが良い。


『おはようくま~』


『おはよぴよー!』


「ふふっ、2人ともおはよう」


 着替えをして、準備をしたら2人を抱っこして食堂へ向かおう。ジークさんもレイナさんももう居たので、一緒に朝ご飯を食べて手続きをしてから宿を出る。


 サンドラの南門を出た所で、ショコラとお別れだ。


「ショコラ様、ありがとうございました。おかげでとても素敵な景色を見られました」


「えぇ、本で読んだ事しかなかったあの景色はとても素敵でした。ありがとうございました」


 ジークさんとレイナさんもショコラにお礼を言っている。


「ショコラ、またね」


『サラ、くっきー、ジーク、レイナ、またぴよー!』


『またくまよ~』


 ショコラが飛び立って見えなくなるまで見送った。ちょっと寂しくなって、くっきーを抱っこし直してむぎゅっとしてすりすりする。


『ふふ、サラには僕がいるくまよ』


「うん、くっきー。これからもよろしくね」


『よし、帰るくま~!』


 そういうと、くっきーは私に鑑定魔法を掛けてくれてから大きくなって背中に乗せてくれた。ジークさんとレイナさんも馬に乗り、砦まで走らせる。


 砦で手続きをして貰うと、少し馬達を休ませるついでに採取をしながらのんびり歩いて行く。


 視界のあちこちに矢印が出て何があるのかを教えてくれる。採取をしながら歩いて行くと、何かの木の実が生っているのが見える。


「あっ! 何か木の実が生ってるよ!」


「本当ですね! 美味しい実だと良いのですが……」


『レイナ、見に行こうくま!』


「くっきー様、行きましょう!」


 くっきーを下に降ろしてあげると、レイナさんと一緒にきゅっきゅっと走っていく。


(きゃー! あの小さい足でぽてぽて走ってるのキュンキュンくるよ!!)


「ふふっ」


「くっきー様とレイナは仲が良いですね」


「そうですね~」


 ジークさんと私は駆けて行く2人の後ろ姿を見ながら、のんびり歩いて行く。くっきーとレイナさんが楽しそうなのが見ていてほっこりしちゃいます。


『サラ、食べられる木の実くまー!』


「えっ! 何の実なの~?」


『チョコの実だって出てるくまよ!』


「ちょこっ!! それは欲しいですー!」


 私も走って木の実の所へ向かうと、後ろでジークさんが笑っていた気がするけど、チョコは大事!

 鑑定を見てみると、確かに木の実に『チョコの実』と書いてある。でも、カカオではないのだね。


(うーん、この実はどうしてチョコの実なんて名前なんだろう?)


「これはどこが食べられるの?」


『サラ、これは割るとチョコが入っているのくまよ』


「えぇぇ!? そうなのっ?」


 不思議木の実だったみたい。くっきーが言うようにチョコの実を割ってみると、お薬くらいの丸い粒のチョコがざらざらーっと出て来た。


「えぇぇ!? チョコ? チョコなの!?」


 1粒口に入れてみると、口の中でとろ~っと蕩けて消えていった。


(わぁ、これこのままで食べられるチョコなんだ! しかもなめらかで美味しい!)


「わぁ、このチョコ美味しいよ! 凄いね~」


『くまっ! あま~くて美味しいくま~』


「美味しいです!!」


「美味しいですね」


 レイナさんもジークさんも食べたことがなかったみたいだ。ということはチョコのお菓子はないのかな?

 聞いてみると、やっぱりチョコを使ったお菓子は知らないそうだ。


 全部無くならないように気を付けつつ、チョコの実を沢山採らせて貰った。みんなが手伝ってくれたので、沢山採る事が出来た。


 沢山あって嬉しいけれど、使ったらすぐになくなりそう……どうにか増やせないかなぁ。


「うーん……この木も植えられないのかなぁ?」


『そうくまねぇ……畑を借りられたら植えてみるのも良いと思うくまよ』


「そうだね! 畑を借りられるか聞いてみようね」


「畑……ですか?」


「ジークさん。お店の近くに畑に出来る所を借りられると良いなと思って、王都に帰ったら聞いてみようと思っていたんです」


「そうなのですか」


「はい。空中都市で手に入れたお野菜とかこのチョコの実も沢山欲しいんですよね~。薬草も植えられたら植えてみたいですしね」


「なるほど……では帰ったら聞いてみましょう」


「やっぱり土地だと商業ギルドですかね?」


「いえ、まずは陛下に聞いてみましょう」


「えぇぇ!?」


「薬草を植えてみるんでしたら、王城の中の方が安全かと思われます」


 確かに、薬草の栽培が難しいと言っていたから、試すなら本職の人達との話し合いも必要かもしれない。でも……野菜は畑で良いと思うんですよ? 

 きっとそのまま王城内の土地に畑を作られそうな気がする……。まぁ、ジークさんにお任せしておきましょう。


「えーっと……無理しないでくださいね? お野菜は普通に畑を借りた方がいいと思いますから……」


「お任せください!」


 ジークさんがキリっと良い顔で返事しているので、ちょっとびくびくしちゃいます。

 と、とりあえず……そろそろお昼ごはんにしましょう。


「そ、そろそろお昼ごはんにしましょうか?」


「食べましょう!」


『食べるくまー!』


「そうですね」


 くっきーに買っておいたパンを出して貰って、私はその間にコンロでお湯を沸かしてお茶を入れよう。温かい紅茶を入れて、みんなに渡すとくっきーとパンを半分こして食べ始める。


 相変わらず、もこもこの手でパンを持ってもきゅもきゅ食べるくっきーに、ついにこにこしてしまう。


(いつ見ても可愛いなぁ~)


 ご飯を食べ終わったら、今度は大きくなったくっきーの背中に乗せて貰い王都まで帰ろう。

 途中で休憩を挟みながら進むと、暗くなる前に王都に着いた。門番さんに手続きをして貰って王都の中に入ると、帰って来たな~という気持ちになった。


 居場所になってるんだと思うと、ちょっと嬉しくなる。くっきーを抱っこして宿へ向かう。

 宿の食堂でみんなでご飯を食べて、部屋に入る。部屋に入ると、くっきーにクリーン魔法を掛けて貰ってから、部屋着に着替えてくっきーを抱っこしてのんびりする。


「ふふっ、帰って来たね~」


『そうくまね』


「なんだか居場所が出来た気がして嬉しくなっちゃった」


『ふふっ、そうくまね。良い事くまよ~』


「うん!」


 居場所があるってとても幸せだよね。お店が出来上がったら、お店の2階が住居スペースだから本当の意味でも居場所になる。

 アレクシス王国に来て本当に良かったなぁ。どうなる事かと思ったけれど、こんなに安心出来るとは思わなかった。


「ふふっ、みんな優しいから嬉しいね」


『そうくまね。ここの国の人達はみんなサラに優しくしてくれるから好きくま』


「うん、とってもありがたいよ。明日はお店を見に行ってみようか?」


『そうくまね! くふふっ、お店が出来るの楽しみくまね!』


「うんっ! あっ、でも国王様の所にも報告に行かないとかもしれないね」


『そうだったくま。ちょっと忘れていたくまよ』


「ふふっ、エリクサーが間に合って良かったよね~」


 その後もくっきーとお話をしたり、もふもふしたりすりすりしたりしてのんびり楽しんだ。

 沢山お話をしたら、くっきーをむぎゅっとしておやすみなさい。

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