第33話 朱雀

 お昼ごはんは近くにあったご飯屋さんに入る。テーブル席に座ってメニューを見てみると、今日のお勧めが野菜炒めだったのでそれにする。


 野菜炒めにパンが付いていたので、どっちもくっきーと半分こしてもぐもぐ食べる。相変わらずくっきーの可愛い手でパンを持って、もぐもぐと食べている姿に癒される。


「お2人は空中都市を知ってますか?」


「空中都市ですか? えぇ、お話では聞いたことありますね」


「私もですね。子供の時のお話にありましたね」


「お話でですか?」


『くま? 2人は知らないくま?』


「「えぇ、知りません」」


「くっきー? 知らないみたいだよ??」


「くっきー様、空中都市って本当にあるんですか!?」


『あるくまよ』


「えぇっ! あ、あるんですか!」


 ジークさんもレイナさんも凄く驚いている。


「私もくっきーから聞いて、ちょっと行ってみたいなって思うんですけど……寄り道しても大丈夫ですか?」


「それは私も行ってみたいです!」


「そうですね、私も見てみたいですね」


 レイナさんとジークさんも見てみたいと許可を出してくれたので、行けたら行ってみよう!


「あっ、でもどうやって朱雀さんを探すの?」


『たぶん、ぼくはこの国に来ているから、すぐに連絡があると思うくまよね』


「そうなんだ~」


 ご飯を食べ終わったら、お店を出て街を歩く。歩いていると、突然私の肩にオレンジ色の鳥さんが止まった。


「わわっ、かわいいっ!」


『どうしたくま? あっ!!』


「ど、どうしたの?」


『サラ、それくま!』


「それ? この子?」


『ぴよっ!』


「ふふ、可愛いね」


『サラ、違うくまよ。それ朱雀くま』


「えっ……すざ……く?」


(えっ!? ちょ、ちょっとまって! こ、こんな手の平に乗りそうな、かわいいひよこみたいな鳥さんが朱雀!? うそでしょー!?)


「くっきー? す、朱雀さんなの?」


『そうくまよ』


 ジークさんとレイナさんなんて驚きすぎて声も出てないよ!? それくらいびっくりだよ!


 かわいいひよこ……じゃなかった朱雀さんに向けて挨拶をする。


「あの、初めまして。私はサラって言います。貴方は朱雀さんなのですか?」


『ぴよっ!』


『朱雀、それじゃ声が届いてないくまよ?』


『そうだったぴよね! これだったら聞こえるぴよ?』


「は、はい! ちょ、ちょっと待ってくださいね!」


 さすがに街中で朱雀さんと話しをするわけにもいかなかったので、すぐに宿に帰って部屋に入る。今はジークさんとレイナさんも一緒だ。


「朱雀さん、お待たせしました」


『大丈夫ぴよよ』


 ていうか朱雀さん、完璧にひよこでしょ!? だって語尾もぴよだよー!


(ぴよぴよ可愛くてきゅんきゅんしちゃう!)


『くまも久しぶりぴよね』


『ぼくは今はくっきーっていうステキな名前があるくまよ! くっきーって呼んでくま!』


『良い名前ぴよね! 私もくっきーって呼ぶぴよね』


『くふふ』


(ぬいぐるみくまさんとオレンジなひよこちゃんが戯れてる……かわいい……かわいすぎるよー!)


『でも、お名前良いぴよね。サラ、私にも何かお名前欲しいぴよ!』


『あっ、サラはぼくのくまよ!』


『お名前くらいいいぴよよ!』


『だめくまー!』


「うん、かわいいっ! 2人ともむぎゅむぎゅさせて~!」


 可愛すぎて無理だった……思わず2人を抱っこしてむぎゅーっとしちゃう。


(はぁ、癒される~)


『サラ、お名前ちょーだいぴよ?』


 上目遣いで可愛くおねだりされて思わず返事してしまった。


「「さ、サラ様っ!?」」


『あっ、だめくまよー!』


「あっ、かわいくて思わず……うんって言っちゃった。ごめん、くっきー」


『ぷぅ。サラはぼくのくまよ』


 ほっぺたを膨らませてちょっと怒った仕草をするくっきーに、もう一度抱き着いて謝った。


「くっきー、ごめんね」


『ふふっ、いいくまよ。お名前つけるくま?』


「でも、お名前って付けて良いの?」


『加護が付くくらいくまよ』


『ぴよっ。加護あげちゃうぴよよ。だからお名前欲しいぴよ』


 オレンジ色……うーん……オレンジとチョコって相性が良いよね?


(あっ、ショコラってどうかな?)


「ん~と、じゃぁショコラでどうかな?」


『ふふ、私はショコラぴよ!』


 私の身体がぱぁっと一瞬光った。何かと思ったら、ショコラの加護が付いたんだそう。ショコラの加護って何になるんだろう?


「くっきー、ショコラの加護ってどんな事があるの?」


『ショコラは火属性だから火魔法が使えるようになったりするけど、サラは使えないくまね。後は加護がある人間はどこにいても分かるようになるくま。だからショコラが遊びに来たい時に、すぐにサラの所に行けるようになるくまね』


「そうなんだ!」


 ちょっとしょんぼりしちゃったけれど、ショコラが可愛いから良いかな。


『そうくま。ショコラ、空中都市に連れて行って欲しいくまよ』


『空中都市行きたいぴよ? いいぴよよ~!』


 あれ? たしか、くっきーは朱雀に乗れば空中都市に行けるって言っていたけど、このショコラを見ると、手のひらに乗るくらいのひよこさんにみんな乗れないよね!?


「くっきー、ショコラに乗っていくなんて出来ないよ!?」


『ぴよ? 大丈夫ぴよよ~。外に出たら大きくなるぴよよ。さすがに街中であの大きさじゃみんなびっくりするぴよ』


「そ、そうなんだ。でも、みんなを乗せたら重くない?」


 そう言うと、ショコラはみんなを見回してから答える。


『ふふっ、みんなくらい余裕で乗れるぴよよ! 任せるぴよっ!』


「そ、そうなんだ。じゃぁ、お願いするね」


『任せるぴよー!』


「という訳で、ジークさん、レイナさん。空中都市に行ける事になりましたね~」


「は、はい……まだ驚いていて……でもとても楽しみです」


「私もびっくりしました! サラ様は本当に凄いですね! まさかあのお話に出てくる空中都市に行けるだなんて楽しみです!」


 ジークさんとレイナさんも楽しみにしてくれているので良かった。私もとっても楽しみだ。とりあえず、お夕飯までそれぞれのお部屋で休憩する事になった。


 私はくっきーとショコラと一緒にお話ししたり、遊んだりして過ごそう。ベッドでゴロゴロしながら、2人と一緒に遊ぶ。くっきーをむぎゅっとしたり、ショコラをコロンと転がしてみたり、可愛くて幸せです。


「ふふっ、2人とも可愛いくてしあわせ~」


『くふふ、サラ大好きくまよー!』


『あっ、私もすきぴよよー!』


「きゃー! 2人ともだいすきっ!」


 思わずむぎゅむぎゅしちゃう!


「そういえば、空中都市ってもう人が住んでないのでしょう?」


『そうくまよ』


『そうぴよね。でも、お家が残っていたりしてキレイぴよよ』


「わぁ、そうなんだ! それはとっても楽しみ!」


『ふふっ、一緒に行くぴよよー!』


『楽しみくまね』


 そろそろお夕飯の時間なので、くっきーを抱っこしてショコラは肩に乗せて食堂へ向かう。ジークさんとレイナさんが居たので、一緒にご飯を食べる。


「明日は朝から行ってみましょうか」


「そうですね。とても楽しみです」


「私も楽しみです!」


 ジークさんとレイナさんも、とても楽しみにしていて私も嬉しい。くっきーと私の護衛をして貰っていると、お休みが取れないのが気になっていたので、2人が楽しんでくれるのは私も嬉しい。


 みんなでご飯を美味しく食べた後は、明日に備えて部屋に戻って今日は早く寝よう。くっきーとショコラを抱っこして部屋に戻ると、くっきーがクリーン魔法を掛けてくれる。お部屋着に着替えてベッドに入る。


「ふふっ、明日は楽しみだなぁ」


 2人を抱っこしておやすみなさい。

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