第27話 薬草料理の検証

 くっきーを抱っこてジークさんと国王様について歩いて、怪我をした騎士さんや兵士さんがいる棟へ着いた。


 中へ入ると沢山部屋があって、6人部屋だったりして病院みたいですね。そしてそのベッドには横になっている人、包帯が沢山巻かれた人など……心が痛くなる。早く治してあげたい……。


「ジークさん……」


「くっきー様。料理人が作ったスープのお鍋を出して貰って良いですか?」


『任せるくま!』


 台の上にスープのお鍋を出すと、コップにスープをよそい1人の兵士に持って行く。治りますように!


「ジ、ジーク様っ!?」


「このスープを飲んで貰っていいか?」


「は、はいっ!!」


 兵士さんがスープを飲む……飲み干しても特に何も起こらない。


(あれれ~??)


「ジーク様、このスープ美味しいですね」


「そうじゃない……傷の具合はどうだ? 治ったりは?」


「怪我ですか? いえ、治ってはないですけど?」


 うん、やっぱり治っていないみたいだ。うーん、てことは私の方も治らないかな? 私のと何が違うんだろうなぁ……。


「くっきー様、サラ様が作ったスープを出して貰ってもいいですか?」


『はいくまよー!』


 ジークさんはコップに私が作ったスープをよそってまたその兵士に持って行く。


「えっ? ま、またですか!?」


「良いからちょっと飲んでみてくれ!」


「は、はいっ!」


 私が作ったスープを兵士さんが飲み干すと……兵士さんの身体がぱぁっと一瞬だけ光った。そして次の瞬間には怪我が治っている。


「えっ!?」


「おぉ!!」


「やはりサラ様のなら治りますね」


「えぇぇぇ?!」


「えっ?! ジ、ジーク様っ!? 怪我が治ったんですが、どういう事ですか?!」


「さすがサラ様だ! うん!」


「って国王様ー!?」


(うわぁ……あの兵士さんかわいそう……)


『大変そうくまね……でも元気になって良かったくまね!』


「う、うん。でもどうして同じに作ったのに私が作ったのしか治らないんだろう?」


『それはやっぱり聖女様くま?』


「えぇぇぇ?! そ、それはないよー?」


(ま、まさか本当に聖女だから治るとか!? 本当にやめてー!!)


「ないと信じたい……でも、とりあえずみんなにスープを配ろうか?」


『そうくまね』


 ジークさんに声を掛けてスープをよそって渡していく。段々元気になった人達が手伝ってくれてすぐに全員に少しずつだけどスープを配る事が出来た。そしてこのスープ、本当に少しでも怪我が治る事が分かった……不思議スープだね。


 ジークさんが最後に個室にスープを持って行ったので、私もこそっとついて行くと左目に傷のあるガタイの良さそうな人が寝ている。少し起こして飲ませないとなので、私もお手伝いに入る。


 ジークさんがそっと少し起こしてくれたので、スプーンで口に運ぶとこくんと飲み込んでくれた。ぱぁっとその人の身体が一瞬光り、次の瞬間には怪我が治っていた。だけど、目はどうだろう?


 次の瞬間その人は目を開けた。


「団長!!」


「ジー……ク?」


 ジークさんの声が震えていた……きっとジークさんが大事に思っている人なんだろうな。目が覚めて本当に良かった。


「ロルフっ!!」


 私の背後から国王様の声がした。驚いて振り返ると、国王様も泣いていた。それだけこの人が重傷だったんだろう……。


「陛下っ!?」


 私は邪魔しないようにそっと、ドアの側に移動する。くっきーも私を見上げていたので、こそっと良かったねって笑いあった。


 起き上がったその団長さんを見ると、片足がないみたいだ……。あの足はどうにもならないのだろうか? あっ、薬草の卵とじ……試して貰う? そっとジークさんの裾を引っ張って呼んでみる。


「サラ様?」


「あの、出来たら……卵とじを食べて貰うってどうですか?」


「あっ! そうですね。試してみましょう。くっきー様、出して貰って良いですか?」


『はいくま!』


「ありがとうございます」


「ジーク、どうした?」


「団長、これを食べてみて貰ってもいいですか?」


「なんだ?」


「まぁ、いいから食べてみろ!」


「陛下まで?!」


 ロルフさんは仕方なく卵とじを口にする。


「あっ、旨いな!」


 全部食べ終わると、身体がさっきよりもぱあぁっと光った! 光が収まると……ロルフさんの足が治ってる!


「あっ!」


「えっ?」


「ロルフっ!」


「団長!!」


「どういう事だ、これは?! 俺の足が……あぁ……目も……見える!!」


「サラ様っ!! ありがとうございます!」


 国王様が振り返ると突然むぎゅっと抱き着かれた! ありがとうと何回もお礼を言ってむぎゅっと抱きしめられた。


『く、くるしいくま~~』


「あっ、くっきー様、サラ様。申し訳ない!」


「ふふっ、国王様にとってもジークさんにとっても、とても大事な方だったのですね。治って本当に良かったです!」


「ジーク、どういう事か説明しろっ!」


 ロルフさんの言葉に、ジークさんは慌てて説明している。ジークさんのあんな慌て方初めてみたなぁ……ちょっと微笑ましいね。でもジークさん、慌てているからって実験台とか言っちゃダメですよ!?


 そして気が付いたら、廊下からも大歓声だった。


「ふふっ、食べて貰って良かったね!」


『そうくまね!』


 ロルフさんは立ち上がると、歩こうとしてちょっとふらついた。ジークさんに支えられながら私の前に来たと思ったら、ジークさんと一緒に跪いた。


「くっきー様、サラ様。本当にありがとうございます」


「サラ様、ありがとうございます。料理を作ってくれたこととても感謝しています」


「あ、あのっ立ってくださいっ!」


『くふふ、サラが困ってるくまよ?』


 わたわたオロオロしていると、国王様も早く立てと言ってくれたのでなんとか収まった……心臓に悪いよー!!


「お身体が治って本当に良かったです。食べて下さってありがとうございました」


「いや、こっちこそまさかまた自分の足で立てるようになると思っていなかったよ、ありがとう」


「ふふっ、みなさんお待ちですから元気な姿を見せてあげてくださいね」


「ありがとう!」


 ロルフさんは大歓声が続く廊下に出て行った。さらに大歓声が上がったけれど、それだけロルフさんが慕われているという事だろう。


「サラ様、本当にありがとうございました。しかし、あの料理は凄かったですね」


「私もびっくりしました」


『エリクサーみたいだったくまね』


「エリクサー?!」


「そうですね、エリクサー並みの効き目がありましたね」


「いやいや、ただの卵とじですよ!?」


「サラ様が薬草を使って料理すると効果が出るみたいですね」


『そうくまね~』


 まさか他の薬草のお料理を作っても何か効果が出るのかな……なんでか分からないけれど、くっきーと私がいれば魔物も怪我も怖くないって事だね! うん、それはそれで良いね!


『サラ? どうしたくま?』


「ん? くっきーと私がいたら魔物も怪我も怖くなくなるねって思っただけだよ?」


『確かにそうくまね』


「ジークさん、この後はどうしましょう?」


「いやいや、私も食べたいぞ!」


『ぼくも食べたいくまー!』


 国王様とくっきーのその言葉でお料理を作ってお昼ごはんを食べる事になってしまった。またジークさんに調理場に連れて行って貰って調理場の片隅を借りてお料理をしよう。


 スープはさっきのがあるし、後はお醤油とジーンを使ったジーン焼きにしようかな。くっきーも好きだしね。後はがっつりだけどきっと大丈夫だろうから、カツサンドも作っちゃおう。


 料理長が気になるのかちょこちょこ覗きにくる。調理が落ち着くと色々と質問されたので答えていく。私もこの国の料理も気になるから今度色々と食べてみたいなぁ。



 お料理が完成したので、くっきーのアイテムボックスに仕舞って貰い国王様の元へジークさんに案内をして貰う。


 くっきーにテーブルにお料理を準備して貰って国王様、くっきー、私で席に着き食べ始める。


「これは旨いっ!!」


『くふふ、カツサンド美味しいくまよー!!』


「くっきー様、このカツサンド本当に美味しいですな!」


『ジーン焼きもお勧めくまよ!』


「おぉ、本当だ! これは素晴らしいっ!」


「ふふっ」


 楽しそうな国王様とくっきーを眺めていると、国王様の後ろに立っているジークさんも笑っている。国王様とのお昼ごはんも終わったので、私とくっきーはジークさんと一緒に王城を後にする。

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