第18話簡単な依頼

日に日にお金が減るので金策の為にテイマー協会に行こうとするがクロが魔玉に入る事を拒否する。


食べ物で釣るしか無いと思い帰りに美味しい物を買うから入ってくれと言うと渋々だが魔玉に入ってくれた。


(食欲に負けるなんてな……帰りに果物でも買ってやるか)


 魔物牧場を出てからテイマー協会に向かう、優しい日射しに気持ち良くなりながらもテイマー協会迄着くとそのまま受け付けに行った。受け付けに居たのは登録の際対応してもらった男だ。


「この間登録された新人の方ですよね? 良い魔物をゲットできました?」


「そうですねぇ中々良い魔物です! 可愛くて、可愛くて、可愛くて」


 可愛いを連呼するルシウスを見て男は失礼にならない様に笑いを堪えていた。


「本日はどういった用件ですか?」


「新人でも出来る依頼を受けたいんですけど」


 男は手際よく書類を数枚取り出す。依頼の内容は食品の搬入や、生命草と言われる草の採集、魔物牧場の手伝い、魔物牧場の手伝いに至っては種類毎に労働時間と対価が書かれていた。馬房、魔物の赤ちゃんの育成、調教師、乳絞り等多岐にわたる。


(これならクロも退屈しないかぁ……)


 ルシウスは生命草の依頼を受ける事にした。生命草は村でルシウスも採取をした事があるので見分けもつく、生命草はポーションの材料にもなるがお金が無い者は風邪を引いた時に料理に入れたり、すり潰して傷口に塗ったりと、そのままでも使える有り難い草だ。


大抵は森の入り口に生えていて日射しが当たる所なら纏まって生えるという特性がある。


「生命草の採取ですね、こちらのマジックアイテムに腕輪をかざしてください」


 腕輪をかざすと、中央にある白い玉が黄色になり昇格も同時に果たした。


「受理しました。昇格おめでとうございます。これからが本当のスタートなので頑張って下さいね、ちなみに買い取り額ですが生命草の葉五枚で銅貨一枚、二十枚ごとに追加で銅貨一枚つきます。注意点ですが根こそぎ取らずにある程度残し、茎は折らずに葉だけを採取してください、採取出来る場所を簡易地図に記載しているので採取に行く前に目を通してから行くと効率も上がると思います」


「分かりました。ありがとうございます」


 丁寧な対応をしてくれた男にお礼を言うと、男が出してくれた簡易地図に目を通してから門に向かう。

 門は二ヶ所設置されているのだがまだ街に詳しく無いので前回通った門を目指した。


門に着くと門から出る手続きをする手続きといっても門の所にある窓口にてマジックアイテムに腕輪をかざすだけなとても簡素な物だ。


 門を出て記憶の中で一番近い森へ向かう、少し街から離れると直ぐ様クロを魔玉から出した。


(ここなら良いか)


「クロ出ておいでっっ!」


 ルシウスの声に応え魔玉から出るとスルスルっとルシウスの肩の上に座った。ここはもうクロの定位置なのだ。


「にゃ?」


「こうして一緒に外に出るのは初めてだよな? 今日はクロの食費を稼ぐ為に生命草を沢山採るから期待してろよ?」


「うにゃー」


 ルシウスの肩の上で尻尾を振り日光浴をするクロはとても気持ち良さそうだった。


「よしっ! 行くかっ」


 急ぐ事も無くゆったりとした足取りでクロとの初めての外出を楽しみながら森に向かった。


街道を渡り二十分程歩くと目の前に森が広がっていた。森の前には武装した集団がちらほら存在しゾロゾロと森の中へ入っていく。


(あれが冒険者かぁ……厳つい集団だな)


 ルシウスと同じ新人の冒険者なのだろう三人程の冒険者は森の入り口で何かを採っていた。


 先客が居たので他の場所に移動しようかと考えていた時短弓を腰に背負った女がルシウスに気づいた。


「もしかして君も生命草の採取をする予定?」


 赤髪の線が細い女はルシウスと同年代程の見た目で

 生命草を片手にクロを凝視していた。


「あぁ、俺も生命草を採取する予定なんだけどそっちも同じなのかな?」


「うん、私達は新人の冒険者で今初めての依頼の最中かなぁ、私はセラで右の方に居る小さい盾と剣を持ってるのがライズ、それでそこのちっこい魔法使いがテラって言うの。貴方の名前聞いても良い? 良かったら隣の子も」


 ライズは鍛えたルシウスの体格にも見劣りしない程の肉体を持ち、同年代の割りには鋭い視線をルシウスに向けていた。テラは急にセラが話すものだからおどおどしている。


「俺の名前はルシウス、こっちのはクロだ」


 クロは興味も無いのかセラ達と顔を合わせる事もしない。


「この辺は私達が結構採っちゃったから少し離れた所の方が良いかもね」


 セラはクロの反応に残念そうにしながらもこの辺はもう採れないと暗に告げる。


「そうかぁ、じゃあ俺達はちょっと離れた所で採るよ」


 ルシウスが離れる事を告げるとセラは悲しそうにしていた。だがライズの視線が気になるルシウスは足早にその場から離れた。


(なんなんだっ! 俺なんかしたか?)


 ライズの視線に若干イライラしながらも一応大目に距離を取り採取を始める、採取を始めるとクロは肩から降りて草の上に寝転び背中を擦り合わせていた。


(よーし始めるか)


 ルシウスの目の前には生命草が沢山広がっている、片っ端から葉を集めポーチに収納する事三十分。沢山あった生命草も半分程になっていた。


(無心で採るとあっという間だな……)


 額から汗を流しながら生命草の採取を頑張るルシウスをよそにクロは涼しい顔で昼寝を始めている。


(お前は王様かっっ!)


 心の中でツッコミを入れたルシウスは生命草の採取を再開させ近間は粗方取り終えた。


(そろそろ場所を移動するか)


 ルシウスの気配で目を覚ましたクロはルシウスの後方を睨み付け尻尾を立て威嚇していた。


「あの……ちょっと良いかな?」


 後ろを振り向くとそこにはセラが居た。

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