第12話新人キャンペーン4


 中に入ると中型犬程の大きさのウルフや小型犬程のシルバーキャット大まかにこの二種類が佇んでいた。


シルバーキャットは自由奔放でルシウス達が来てもお構い無く藁で遊んでいる、ウルフは一定の距離を置いてこちらを窺っていた。この位の大きさになるとウルフの本能が徐々に目覚め、仲間以外の者には警戒心を出してくるのだ。


「ウゥゥゥ」


「大丈夫、大丈夫今日は新人さんを連れて来たからね仲良くするんだよ?」


 ルシウスは声も発する事もせずに婆さんの後ろからそっと覗いていた。


「ルシウス君はさっきと同じ様に藁の所掃除お願いするねシルバーキャットは大丈夫だと思うから」


「わっ、分かりました」


「皆行くよ」


 婆さんは鞄から生肉を出しで外に放り投げると食欲に負けたのかウルフ達は肉目掛けて走り出した。ものの数秒で中がガラッとし静かになる


「私はあの子達と少し遊ぶから頼んだよ!」


「任せてください」


 藁で遊んでいるシルバーキャットを持ち上げて藁から出して端に寄せる、そして農具の様な物で藁を掻き出すのだ。その作業を半分程終えるとシルバーキャットがルシウスの足をよじ登った。


「おぉ……ビックリした。どうしたんだい?」


 ルシウスの呼び掛けに返答もせずによじ登ると胸元に来て猫パンチをしてきた。


「ん? 手を出せって事かな?」


 シルバーキャットの下に両手を添えるとそのままルシウスの両手にゴロンと体を預けてきた。シルバーキャットはそのまま自分の手を舐め顔の周りをゴシゴシと毛繕いをしだす。


「おぉ、シルバーキャットも中々可愛いぞぉ」


 ルシウスは暫くそのまま監察すると作業に戻るため床にシルバーキャットを降ろした。


「にゃ?にゃにゃにゃ!」


 シルバーキャットは降ろした事が不服なのかルシウスの足をパンチしながら訴えていた。ウルフとは違い愛嬌のあるシルバーキャットの事が可愛くて仕方なくなるが、心を鬼にして作業を続けようとした時。


「にゃっっっっ!」


 一匹が号令の様に一鳴きすると、ぞろぞろとシルバーキャットがルシウスの体をよじ登り背中に陣取ったり胸元にくるなど頭に乗るものも現れた。


「もう仕方ないなぁ……落ちないように頑張ってくれよ」


「「「にゃっ!」」」


(本当に理解しているのかな……まぁいっか……)


 シルバーキャットを気遣いながらもルシウスは作業を続行させる、藁を外に出す際ウルフと目が合うが

 お前なんかに興味ないないぜ! と言わんばかりに馬鹿にした様に吠えると直ぐ様視線を外されてしまった。


(あっちは時間が掛かりそうだ……)


 気にはなるが今はシルバーキャットが全身を陣取って居るのでそれを眺めて和むと直ぐ様ブラシで磨きあげる、ブラシで磨いている間シルバーキャット達は落ちそうになる度に鳴き声をあげ仲間同士でお互いを鼓舞していた。


それが終わると先程と同じく藁を新しい物に変える為に行動を開始する、藁を満遍なく伸ばして先程やった様に火を焚き、その間は割と暇なのでシルバーキャットを構う事にした。


「どれどれ、皆やんちゃだなぁ」


 ルシウスは一匹、一匹手に取り撫でる。皆同じ様に見えるが所々違う事に気づいた。耳の周りに模様がある者やお腹に模様がある者、目付きにしても穏和そうな者から鋭い者迄それぞれ違ったのだ。


 火が収まると先程と同じ様に新しい藁を敷く。藁を敷いている間、にシルバーキャット達はルシウスから離れて空中に舞っている藁に猫パンチしていた。


「おぉ……それなら」


 ルシウスはわざと上から少しずつ落とす、すると猫達も最初は優しい猫パンチだったが段々ボクサーも涙目に成る程の猫パンチを繰り出していた。


「激しい、激しいが激しい故に可愛い……」


 新しい藁を取ってまた戻ってくるとシルバーキャット達は早く藁を上から落とせよと言わんばかりにルシウスの足をパンチして要求する。


「にゃにゃにゃにゃっっ!」


「分かったっ! 分かったよっ!」


 ルシウスも要求に従い藁を上から落としていく。シルバーキャット達も本能を刺激され多種多様な猫パンチを繰り出していた。


(一家に一匹欲しいな……メアリーに買って行ったら喜ぶだろうか……)


 暫くすると飽きたのか藁に興味を失いルシウスの体にへばりつく。


「あぁ……そこが好きなのね?」


「「「にゃっ!」」」


 作業が終るとそれを見越して婆さんだけが戻ってきた。


「ルシウス君そんなに懐かれたんだね、じゃあこれを一匹に一つあげてもらえるかな?」


「可愛くてたまりませんよ任せてください」


 婆さんから果物を貰い一つずつ与えていった。するとルシウスより果物優先なのか皆床に降り果物にかじりついていた。


(あぁ……こういうの寂しいなぁ……)


「あの……この子達はいくらで販売されているんですか?」


 可愛くて欲しくなったルシウスは値段を聞いてみたがその値段にビックリしてショックを受けてしまう


「この子達は最低一匹銀貨二十枚はするだろうねペットとして貴族様に人気だからね、欲しくなっちゃったのかい?」


 テイマーになるなら皆通る道だと婆さんは微笑ましそうにしていた。テイマーになると皆その可愛さに惹かれて欲しくなるのがシルバーキャットだからだ。


「まぁ、少し欲しくなったと言えばなりました」


「そうかい、そう言えばくじにもシルバーキャットがあったと思うから頑張って当てたら良いよ」


「本当ですか?」


「本当だよ! こんな事で嘘をつく訳ないさ本当に好きになっちゃったんだねぇ。頑張って当てるんだよ? もし当たらなかったら安くで譲ってあげるよ」


「ありがとうございます。頑張りますね! 」


 婆さんの一声にルシウスは興奮しておりこの時ルシウスは絶対に当ててやると意気込んでいた。


その後ウルフ達を中に入れると噛まれそうになったが婆さんがウルフを制しこの日の仕事は終わった。

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