第32話 2人のお手伝い


 後藤さんが、箕面に来ると必ず行く居酒屋に連れて行って貰った。


「「乾杯~!」」


 ガチャン! ゴクゴク……


「後藤さん、今日はありがとうございました! お陰で2つも魔法を覚えることが出来ましたよ。まだ、何の魔法か分からないですけど」


 今回、後藤さんに手伝って貰ったから、魔物を数多く狩ることが出来てドロップしたんだと思う。僕1人なら半分も倒せていないしね。


「気にしなくて良いよ! ここで大きな声では言えないが、今回の『スキル書』は俺達の為になる。それに、東山君には、また手伝いをお願いするかも知れないからね。東山君、明日も行くんだろ? ゴクゴク……」

「はい。明日もダンジョンに入りますよ。今日覚えた魔法も調べたいですし。ゴクゴク……」


 プッハ~! ダンジョンの後のビールは旨い!


「明日は、神田も手伝いに来るぞ! ゴクゴク……」

「えっ! 神田さんも来るんですか? 明日も手伝ってくれるんですか?」


 それは申し訳ない気がする。JDAトップダイバーの2人に手伝って貰うなんて……う~ん、10階でJDAメンバーと乱獲するのは宜しくない気がする。


 後藤さんは焼き鳥の串にかじりつきながら、


「東山君、俺も神田も暇つぶしだから気にしなくていいよ。もぐもぐ……」


 仕事でダンジョンに入って、休みでもダンジョンに入るなんて、僕には出来ないな。それに、僕の手伝いより、ジェネラルオークを狩りに行った方が良いんじゃないのか? 神田さん……ジェネラルオークに飽きたのかな?


「暇つぶしですか? じゃぁ、また20階で『スキル書』を狙いましょう。僕はスキル上げも出来るし、『スキル書』が出たら、後藤さんと神田さんが覚えられるか試しましょう!」

「お! 東山君、俺達が試しても良いのか?」


 一緒に狩りをするから当然ですよ。


「勿論ですよ! 今日も後藤さんがいたから2個も出たんですから。もし、二人とも覚えられなかったら、哀川さんに持って行って驚かせましょう!」

「東山君、嬉しいことを言ってくれる。哀川隊長をビックリさせるのは良いな! ゴクゴク……」


 先に、何の魔法なのか確かめたいけどね。


「そうだ! 神田には、内緒にしておこうな!」


 後藤さん、悪戯っ子みたいに言うけど、


「後藤さん……僕は魔法を試しますよ? スキル上げもしたいですし」

「そうか。じゃぁ、魔法を試す時に驚かせよう!」


 明日もダンジョンに入るので、早めにお開きになり、ここの支払いは僕が出すと言い張った! ドロップ品を全部貰ってしまったしね。そして、明日の朝8時に箕面DWA支部で待ち合わせをすることになった。



 翌朝、DWAに約束の30分も前に来たのに、もう二人とも待っている。休みなのに、何時から来ているんだよ。


「おはようございます。二人とも早いですね……直ぐに着替えて来ます」

「おはよう! まだ早いからゆっくりで良いよ」

「おはよ~。東山君、今日は手伝いに来たよ~」


 神田さんは、手を振りながら微笑んでいる。あの様子だと、まだ知らないんだ。


「神田さん、ありがとうございます」


 ダンジョンに向かいながら、神田さんに今日は20階でメイジを狩ると伝えた。


「あれ? 10階のメイジじゃないの?」

「ああ。神田、20階のメイジが良い物を出すみたいだ。ムフフ」


 後藤さんが嬉しそうに、如何にも『何か企んでいます』って、顔をしている。


「後藤~、気持ち悪いわよ! 東山君、昨日も狩っていたのよね? 何を落としたの?」

「それが、昨日はMPを使い切って……」

「ハイハイ! そこまで。神田~、何の魔法かは、使って見てからのお楽しみだ!」

「え~、教えてくれても良いじゃない」


 神田さん、まだ何の『回復魔法』なのか、分からないんですよ。


 三人で20階へ飛んだ。そして、魔法を試したいから、僕が一体目の魔物から攻撃を受けてから、倒して欲しいと伝える。


「えっ! 東山君、それは無茶よ。何の魔法なのよ?」

「東山君、攻撃を受けるなら俺が受けるよ!」


 後藤さん、それだと分かりにくいんだよね。何の魔法か分からないから、自分で攻撃を受けて、ステータスを見られる方が良いのだと、ポーションを見せて言った。


「分かったわ……東山君が、攻撃を受けたら直ぐに倒すからね。ちょっと、身体を引く感じで受けてね」

「はい、神田さん」


 一体目は運良く? ポイズンスネイクだった。これで、HP回復と毒消しが試せる。毒消しを持って魔物の前に向かう。


「東山君、攻撃を良く見て、腕で軽く受け流すように!」

「はい! 後藤さん」


 ポイズンスネイクは牙を向けて跳びかかって来たので、左腕の盾をずらして受け止めた! 身体を引く感じで……受け流すように……って、分からないよ。


『シャアァァァ――!』

「うぐっ!」


 ガッツリ腕でポイズンスネイクを受け止めた。そして、直ぐに神田さんがポイズンスネイクを斬り捨ててくれた。


「うわ~、まともに受けたわね……顔色が酷いわよ」

「東山君、見事に毒を受けたな!」

「ははは……じゃあ……魔法を試してみますね……ふぅ」

「えっ?」


 神田さんが『どういう意味?』と顔をしかめている。ふふ。先にステータスを確認しておく……あ……身体が重くなって来た……。


名前  東山 智明【毒】

年齢   21歳

HP   186/207

MP  155/155


 おっ、【毒】の表記がされている……HPも減ったけど、先に毒消しの魔法か確かめよう……うぅ、身体の怠さと頭痛が……毒消しの魔法だったら良いのになぁ……ハァ、息切れもしてきた……ゲームに出て来る毒消しの魔法を考える……ポイゾナ……? キュア……? ケアル?違うな……後はどんなのがあった? 毒以外にも効果があれば嬉しいから、治すって意味のキュアが良いな……。


 すると、フワッと何かに包まれたのが分かった。


「おお! やったな!」

「えっ!? 顔色が……まさか! 毒消しの魔法?」


 頭痛が治まって、身体の怠さもマシになって来た。ステータスを確認すると【毒】の文字が消えている。無詠唱で発動出来るのが良いな。


名前  東山 智明

年齢   21歳

HP   184/207

MP  150/155


「やったー! 後藤さん、毒消しの魔法でしたよ! そして、消費MPは5です」

「凄いぞ! 東山君!」

「毒消しの魔法! 東山君、自分で試したのね。偉いわ~!」


 ふふ、毒消しの魔法で良かった。後1つは何かな? 手に持っている毒消しをバッグに入れながら、HP回復の魔法を思い浮かべる。ホイミ、ケアル、ヒール、くらいしか覚えていないな。響きはヒールが良いな。まぁ、無詠唱で発動するから何でも良いんだけどね。


 今度は、暖かい空気に包まれた気がした。


HP   207/207

MP  145/155


「やったー! 後藤さん、後の1個はHP回復でしたよ! 減っていたHP23を回復しました。それと、消費MPは同じく5でした」

「おお~! やったな!」

「えええ!? 後1個って、2種類も魔法を覚えたの? しかも、HP回復なんて! 凄いわ!」


 僕は、知力が増えたから覚えられたのかも知れないな。そして、このHP回復量は、他の属性魔法と同じで、知力と『回復魔法』のランクで変わって来るんだろうな。


「よし! 魔法の種類が分かった所で、張り切ってメイジを狩ろうか!」

「「お~!!」」


 痛い思いをしたけど、1番欲しい魔法が出て良かった!


「次に出たら俺が覚えられえるか試す。そして、神田だ」

「えっ! 試せるの? 嬉しい~、頑張るわ! 東山君、メイジ以外は私達が狩りつくすからね!」


 JDAで魔法書が出たら、MPが多い人から試すらしい。そして、いつも2人まで試す順番が回って来ないそうだ。前回の『水魔法』は、知り合いが出した『スキル書』だからと、無理を言って先に試したそうだ。


「あはは、後藤さん、神田さん、よろしくお願いします」


 二人がいれば、毒キノコもポイズンスネイクも速攻で倒してしまう。僕は、スキル上げに時々ヒールの魔法を二人に掛ける。


 そして、1日かけて『回復魔法』が2種類出た。『HP回復(ヒール)』と『毒消し(キュア)』が1個ずつ。ただ、どっちが『HP回復』なのか分からないけど……ワープ近くの小部屋で、二人が覚えられるか試してみることになった。


 昨日撮った写真と見比べて、最初に出た方を後藤さんに渡した。


「まずは、後藤さんから試してください。これ、どっちの魔法か分かりませんけど、どうぞ」

「『回復魔法』か……よし! 試してみるよ」


 後藤さんは、『回復魔法』に手をかざして集中したけど反応しない。こればかりは、どうしようもないよね。


「う~ん、やっぱり覚えられないのか……残念だ」


 次は神田さんの番だ。後藤さんから『回復魔法』を受け取って、集中し始めた。すると、『回復魔法』が反応して神田さんの手の中へと消えて行った。


「うわっ! 何か来たわ!」

「まさか! 神田、覚えたのか!」

「お~! 神田さん、良かったですね!」


 神田さんに、HP回復か、毒消しの魔法か分からないので、ステータスを見て、HPが減っていたら魔法を使って見て貰った。


「東山君、分かったわ。HPが少し減っているから、試してみるわね」


 神田さんは、軽く目を閉じて自分に魔法を掛けたようだ。そして、目を開けて、ステータスを確認しているのか宙を見た。


「うん。HPが回復したから、『HP回復』を覚えたようね。やった~!」


 『水魔法』がダメでも『回復魔法』は覚えられるんだ…。ということは、魔法を覚える条件は、知力と相性なのかも知れない。神田さんの知力値は、知らないけど。


「嬉しい~! 魔法を覚えられたわ! 後藤! 東山君、ありがとう!」

「神田も絶対に覚えられないと思ったのに……」


 神田さんは、魔法を覚えることが出来て凄く喜んでいる。そして、後藤さんは、心なしか落ち込んでいるように見える。


「絶対? 後藤、それは失礼じゃない?」

「あ~、悪気はないんだ、俺と同じタイプだと思っただけで、すまない」


 後藤さんと同じタイプとは? 聞きたいけど、止めておこう……。

 

 もう1つの『毒消し(キュア)』は、二人とも覚えられなかった。神田さんが、『HP回復(ヒール)』を覚えたから、『毒消し(キュア)』も覚えられると思ったけどな……。



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