第37話 ライラ視点

「・・・・・・な、に?」

セイレーンを傷物にしようとした。そうすれば彼女は貴族令嬢としては生きていけない。

良い気味だと思った。

初めて会った時から気に入らなかった。

だって私の方がお父様に愛されているのに、大して歳も変わらないのに。

どうして彼女だけが何の苦労もなく生きているの?

どうして私だけが苦労を強いられるの?

おかしいでしょ。

不公平でしょ。

だから全部奪ってやろうと思った。

別にいいでしょ。

当然の権利でしょ。

本来ならあんたじゃなくて私が受け取るはずだったものだもん。

それにあんたと違って私は特別な存在だから。

セイレーンを襲うように命じた奴らが帰って来なかったのは少し気になった。

でもきっと、よろしくやってるんだろうと思った。

だけど学校に行くとみんなの冷たい視線が私に突き刺さる。

私をモテはやしていた獣人の貴族令息たちはいなくなっていた。

そこで初めて私はセイレーンが無傷でルルーシュの邸にいることを知った。

「あんの、クソ女」

私のルルーシュを誑かしやがった。

許せない。

自分が男たちを誘惑したくせに。襲われたのは自業自得のくせに。

だいたい、合意の上での行為だったでしょ。

なのに、あたかも被害者面してルルーシュに縋りつくとか最低。

どこまでも卑怯なの。

私はすぐに学校から帰った。

授業なんて受けてる場合じゃないから早退した。

登校したばかりの私が帰ってきて使用人も母も驚いていた。

私はすぐに母に理由を話した。

すると母は番を取るなんて許せないと憤慨してすぐにあの女を連れ戻すように動いてくれた。

私も母と一緒にルルーシュの邸に行った。

愚かな義姉を返してってお願いをしたのにルルーシュは返してはくれなかった。

きっとあの女がルルーシュにあることないこと言いふらしてるに違いない。

最低、最悪な女だ。

どうしようかと思案してると騎士団が邸に来た。

私があの女を男を使って襲わせたとか言ってた。

騎士団の後ろには縄で縛られ、ボロボロになった男たちがいた。

私が雇った男たちだ。

すぐに否定した。

でも証拠が出たとか言ってた。

私があの女を襲わせたようと指示した依頼書だと。

そんなもの書いた覚えがない。

でも字は私と同じ字だし、名前まである。

「私じゃない。確かに似てるけど私は書いてないわ!」

「なら誰が書いたと言うんだ?」

誰が?

そこで思い当たる人間は一人しかいない。

「セイレーンよ。私のことを羨んで、私を貶めようとしたのよ。絶対にそうよ。間違いないわ」

私は本当のことを言っただけなのに騎士団の顔が侮蔑で歪む。

どうしてよ。

「義姉を襲わせただけでなく、その罪も着せようとは性根が腐っている」

「それはセイレーンの方でしょっ!あんたたち、あの女の罠にハマって恥ずかしくないの?だいたい少し考えれば分かることでしょ。もし本当に犯人が私なら証拠を残すような依頼書なんて書くわけがないわ」

そうよ。

確かに私は男たちにお願いしたわ。あの女を懲らしめてって。

だって私のルルーシュに媚びを売るから。

でも依頼書なんて本当に書いていない。

「調べはついている。お前は普段からおかしな言動を繰り返してる上に虚言癖まである。レドモンド殿の婚約者だとか」

「だって本当のことだもん」

私がそう言うと騎士団から呆れたようなため息がもれる。

なんて失礼な奴だろう。

母も何かの間違いだと言ってくれているのに聞く耳を持ってくれない。

このままだと冤罪で処断されてしまう。

でも大丈夫、きっとルルーシュが助けてくれる。

「連行しろ」

「放して!気安く触らないで!私を誰だと思ってるの?こんなことをしてタダじゃおかないんだから。後悔させてやる」

何とかこのことをルルーシュに伝えないと。

抵抗虚しく私は騎士団に連行された。

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