氷血男爵の悩みごと

あんこ

私は、伝えたい

第0話 氷神降臨



 ユースティアナ王国。それは、グレイシア大陸西部に位置する大国である。



「大きな」というのは国力・陸地面積両方においていえる。

 北側と西側を海に囲まれている地形を活かし、他国との貿易体制を強化することで、国家の発展に力を入れてきた。

 敵対している国家であっても貿易関係は結んでいる。これも生存戦略なのだろう。



 そんな超大国に、一人の青年がいた。

 お人好しで、困っている人を放っておけない性格。

 黒目黒髪で、落ち着いた雰囲気とスラッとした体躯。

 雰囲気からは想像がつかない、無意識に浮かべる柔らかい微笑み。


 一見人柄が優れた好青年、のように見える。

 実際それは事実ではある。

 青年が暮らす領地の人々からも幼少期から可愛いがられている。


 しかし、一部の人々の間では暗に認識されている。決して激怒させてはいけないと。

 味方からは尊敬と憧憬と歓喜。敵からは畏怖と絶望と嫌悪。


 "そのモノ"の髪が白に染まったとき、ある者は呟いた。



『――氷神が降臨なされた』

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