6th 点は繋がれて海超え山超え

翌日――土曜日の午後二時。


ぼくの運転する車は望月さんを乗せて国道を走っていた。

東名高速をまたいで、向かう方角は北。目指すは静岡空港。


住宅がまばらに見えたかと思うと、また一気に田園風景。その繰り返し。

交通量は少なく、人はほとんど歩いていない。

走りやすいまっすぐな道路だ。

雨粒がフロントガラスを叩き、ワイパーが雨粒をはじいている。


なぜ空港に向かっているか? それはぼくにもよくわからない。

望月さんに脅されたのだから仕方ない。


道中、望月さんは唐突に説明を始めた。

「輪廻は音楽活動を終了すると同時に、20曲の音楽が入ったアルバムを、オリジナルのアプリを通してリリースすることを告知しました。このアプリがくせものなんです」


望月さんいわく。

アプリをダウンロードすると、20曲のサンプル音源が手に入ったが、当然楽曲の購入が必要だったとのこと。

そのうえで、17曲までは購入することができたが、残りの3曲を手に入れるには、ミッションをこなさなければならないという。


「位置情報ゲームみたいな感じなんですよ」と望月さんは言った。


「それって、ポケモンGOみたいな感じですか? 音楽リリースの仕方としては新しいと言うか、めんどくさいですね」


「まあ、モンスターボールを投げるとかではないんですけど、似たような感じですね。昨日聞かせた楽曲あったじゃないですか。あの楽曲、島田市まで来てやっとゲットできたんですよ」

「どうして島田市に」

「えっと、なぜかは分からないですけど……」


なぜか言いよどむ望月さん。


「わたしが何故空港に向かうように言ったかわかります?」


「わかりませんよ。説明するつもりあったんですか」

「つもりはあるんですけど」

「つもりがあるなら説明してもらってもいいですかね……」


そんな話をしている間に、車はもうすぐ静岡空港につこうとしている。


「望月さん、静岡空港に向かうってことは――行き先、もしかして北か南か海外ですか」


静岡空港の国内線は、航路が少ない。

北は北海道、南は沖縄、あとは海外。東京や大阪への航路はない。

国内なら、確か、新千歳、札幌、福岡、鹿児島、那覇にしか行かない。


「正解です。行き先は北です! 北海道です!」

「マジですか。ぼくたち、今から北海道行くの?聞いてませんけど?」

「言ってませんけど?」

「言っておいてくれませんかね?」


休日におしかけて人を脅して洗脳させ、北海道に連れて行けとはなかなか乱暴だ。

ぼくがいったい何をしたっていうんだ……。


「今から北海道とか……ぼくそんなに防寒対策してこなったんですが」

「大丈夫です。わたしはマフラーと厚手のコート着てきましたから」


……ぼく、このひとになにかしたっけ?


「あ、着きましたね」


そんなことを話している間に、ようやく車は静岡空港にたどり着いた。


「続きは空港で軽くご飯でも食べながら話しましょ。

 どうして、残された『うやむや』が北海道にあると考えたのか、説明しますから」

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