異なる世界の近代戦争記

我滝基博

序章

前書き

"我々の世界に昔、近代という時代があった"


 産業革命に始まる科学技術の発展により、人類文明が大きく発展。人々が豊かな生活をいとなむようになり始めた時代である。


 馬車から車へ、


 木造船から鉄製船へ、


 炎から電気へ、


 井戸から水道へ、


 様々な変化が人々に恩恵を与え、近代技術という名の光が、人々を照らしていったのである。



 しかし、光には影がある様に、近代技術がもたらした物は、人を幸せにする物ばかりでは無かった。



 兵器技術の進歩、人を殺す事を生業とする武器の威力までも、大きく飛躍させてしまったのである。



 砲弾、爆弾、毒ガス、機関銃、そして、核。


 1人殺す武器を2人殺す物へ、


 2人殺す武器を10人殺す物へ


 10人殺す武器を100人、1000人、10000人殺す物へと変容させていった。


 近代という時代は、兵器技術も進歩させ、戦争の本質を、戦いから虐殺へと変えてしまうことになったのである。


 そして、この時代、戦争という文字は未だ、日常の中に溶けていた。

 近代兵器の恐ろしさにも気付かず、人々から戦いの文字が消える事は無く、残酷にも虐殺という名の戦争が行われることになる。


  "第1次、第2次世界大戦"


 世界が初めて体験する、近代兵器による虐殺の応酬は、人々を恐怖と殺戮の地獄へと追いやった。


 砲弾で手足が吹き飛び、


 爆弾で内臓をばら撒き、


 毒ガスで口や目から血が湧き出し、


 機関銃で身体が肉片へと変わり、


 核で全身が焼け爛れ落ちる、



 それはまさに地獄の様だった、


 いや、地獄だった。



 両戦争合わせて約1億人、現日本の総人口の約8割に相当する人間が死滅した。


 そして、この中には、武器も持たぬ女、子供など、一般市民が多く含まれていたことは言うまでもない。



 これらの地獄を経験した人類。この大量の屍と流血をして、やっと、人類は平和へと歩んでいくことになる。




 "異世界、我々が住む世界とは異なる世界"


 魔法、亜人、ドラゴンなどの、空想上の存在がいるとされる世界。


 我々はその世界を、剣と魔法の物語として、読み、聞かせられてきた。


 この世界を想像する者は、大抵が中世ヨーロッパに近い世界観を想像するだろう。


 中世から近代へ、我々の世界は時代を進めた。


 ならば、異世界でも、中世から近代へ時代を歩みことになる。

 そして、近代戦争という名の虐殺を味わうことになるのだ。



 我々が住む世界とは、そこで紡がれたに於けるいの録、それをこれから、ある1人の男の人生に沿って語ろうと思う。

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