ときにたまにはショートストーリーなどを

田柱秀佳

ハイパー・ウルトラ・ゴージャスマン

 地球は、最大の危機をむかえていた。


多数の円盤群の襲来、攻撃……侵略の魔の手が地上を蹂躙じゅうりんしていた。


ロンドン、モスクワ、パリ、ニューヨーク……次々と交信が途だえる。


最期の砦となったここ、『ZAKKA』《ザッカ》極東支局ビルにも凶悪なスットン


星人の送りだした最凶宇宙怪竜 スットンが迫りつつあった。スットンは一憶兆千万


度の火の玉を吐きつつ、支局の周辺を火の海にしていく。懸命に応戦する『ZAKK


A』の面々! キャップのコバヤシを始めとする5人の精鋭たち。たった5人かよ!


などという突っこみはしてはならない。この5人はこれまでも様々な宇宙人の侵略や


怪獣と戦い、地球を防衛してきたのだから。……本当だよ!


「うわっ!」キャップが崩落した本部の瓦礫がれきに足をはさまれた!「退避!俺にかまう


な!」


「しかし、キャップ!」ドクマムシ隊員が叫ぶ!  迫るスットン!!


「いかん!」クロベ隊員がスットンに向かう! 特攻だ!


「クロベ隊員!」ニヘイ隊員と女性のサクライ隊員がクロベの名を叫ぶ!


「クロベさん! やめて! 死ぬわよ!」


「あー!」凶悪なスットンの巨大な右足がスコーン!とクロベ隊員をけとばした!


 ピュ~~~~、はるか彼方の空まで飛んでいくクロベ隊員。


「クロベ隊員……星になったんですね」ニヘイ隊員がひとすじの涙を落としてつぶや


く。


「なってね!っての」全員の突っこみ。


 ──と、その時! クロベの消えた上空がピカリ!と光り100万ワットの輝き


だ!


「おお! あれは!」


きたぞ、我らの、ハイパー・ウルトラ・ゴージャスマン!!


「シャ!」ハイパー・ウルトラ・ゴージャスマンはおたけびと共にスットンの前に


立ちはだかる。


「ガンバレ~!! ハイパー! オーエス、オーエス!」


『ZAKKA』はハイパー・ウルトラ・ゴージャスマンを応援した。これまでのどん


な敵もこの応援攻撃で打ちのめしてきたのだ! 我々の応援は世界、いや、宇宙一!


倒すのはいつもハイパー・ウルトラ・ゴージャスマンだけどね!


 しかし、今回ばかりは勝手が違った。スットンはハイパー・ウルトラ・ゴージャス


マンのありとあらゆる攻撃をよせつけない! ハイパー眼光も月割り光輪もスットン


の光波バーリヤの前には豆鉄砲にすぎない!


「まずい! もうタイム・リミットギリギリだ! オーエス、オーエス」コバヤシが


叫ぶ!


ピコンピコンピコン……。ハイパー・ウルトラ・ゴージャスマンのお知らせタイマー


が点滅を始めた。ハイパー・ウルトラ・ゴージャスマンの太陽エネルギーは地球上で


は急激に消耗する。もし3分間以内に 怪獣を倒せず、お知らせタイマーの光が消え


たらハイパー・ウルトラ・ゴージャスマンは二度とふたたび立ち上がることができな


くなるのだ! がんばれ! ハイパー・ウルトラ・ゴージャスマン!


 ドガーン! ハイパー・ウルトラ・ゴージャスマンの巨体がついに倒れた。


タイムリミットがとうとうおとずれたのだ……。


『ZAKKA』支局ビルはハイパー・ウルトラ・ゴージャスマンの下じきになり完全


に崩壊したが、そんなことにかまってる場合ではない! このままでは地球があぶな


いのだ! 彼なしでは地球は守れない! いや守れる気がしないのだ!


「ハイパー! 死ぬな!」隊員たちの必死の呼びかけにもこたえられず、動かな


いハイパー・ウルトラ・ゴージャスマン。そして、その瞳からも光が消えた。


 ──と、その時! 現れたのはハイパー・ウルトラ・ゴージャスセブンだ! 


彼はマン(敬称略)に復活光線をあびせる! するとなんとマン(敬称略)がよみが


えった! 狂喜乱舞の隊員たち! しかし、スットンは強かった!


マン(敬称略)とセブン(敬称略)にふたたびタイム・リミットがおとずれた……。


 ──と、その時! 現れたのは宇宙警備隊長ハイパー・ウルトラ・ゴージャスドヒ


ーだ! 彼はマン(敬称略)とセブン(敬称略)に復活光線をあびせかける!


ふたりはよみがえった! 3対1だ! もう負けない! 負けられない!


「3対1って、なんかイジメみたいですね……」ニヘイ隊員がつぶやいた。


「それをいっちゃ、おしまいだ」キャップが引きしめる。しかし、スットンは強かっ


た!


 いつの間にか18対1になっていた。ひしめき合うハイパー・ウルトラ・ゴージャ


ス兄弟! しかし、スットンは強かった!


「コイツらのタイム・リミットっていったい……」またつぶやくニヘイ隊員。


「いうな!」キャップが引きしめる。


「キャップ! スットンに角を折られて平衡感覚を失ったハイパー・ウルトラーメ


ン・ジロウが中央高速でカッポレを踊っています! ああ! 踏みぬきました!!」


サクライ隊員が叫ぶ!


「キャップ! スットンに目を割られたハイパー・ウルトラ・ゴージャスパンジャか


ら大量の汚染物質が流出しています! ……水銀です! 被害甚大!」


「ヤツラの目は水銀灯か!?」


「皇居のお堀に突っこんだのはどっちだ!とハイパー・ウルトラ・ゴージャスシャッ


クとホープが兄弟ゲンカしています! ああ、皇居崩壊!!」


「キャップ~~~! 富士山麓で父(敬称略)と母(敬称略)が夜のいとなみを~!」


「なに!? 子供には見せるな!」


「キャップ! スットン星人がアキれかえって引きあげていきます!」


「おう! 我々の勝利だ!……なわけねぇ!」


「キャップ!」「キャップー!」「キャップ~!」


「もういい!! いったいいつなんだ! ヤツらの本当のタイムリミット


というのは!?」


 陸海空、あらゆる場所に6千憶人のハイパー・ウルトラ・ゴージャス兄弟があふれ


かえっていた。さらに成層圏上空では1兆の兄弟たちがおしゃべりを楽しみながら、


ハイパー競獣新聞でレースの予想をしながら、順番待ちをしている。


 地球上では彼らの太陽エネルギーは急激に消耗する、強力な敵が現れた場合時間が


足りない! しかし、これでエネルギー補給は万全だ!


がんばれ! ハイパー・ウルトラ・ゴージャス兄弟! 


戦え! ハイパー・ウルトラ・ゴージャス兄弟!


                               (おわり)



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