第11話

「……さい」


 私の横で、話している声が聞こえる。


「雨宮さん、起きてください!」


 私の目が冴えると同時に、鼓膜に振動が伝わる。


 それに驚いた私は反射的に飛び起き、それと同時にごめんなさい!」と叫んでしまった。


「どうしました? 確かに居眠りは悪いことだと思いますが、そこまで大声で謝らなくてもいいと思いますよ」

「いやぁ……、色々とすみませんでした。」

「大丈夫ですが、大声で謝ってどうしたのですか? 何かありましたか?」


 先生は心配するような眼差しで私を見つめる。いつもの課題を出すような眼差しとは違い、私は反射的に安堵のため息が出る。

 そしてそれと同時に、脳裏にある光景が映る。


 最後に彼が言ったことは一体なんだったのだろうか。

 口の動きから母音は、『お・え・ん・な』だったと思う。


「うーん……」

「雨宮さん、どうしたの?」


 私が唸り声をあげると先生が心配してきた。


「いいえ、なんでもありません」

「本当ですか? なにか悩んでるのであれば……」

「いえ、本当なので大丈夫です」

「そう、ですか……」

「はい。見た感じ、既に授業が終わっている様子ですし、次の授業の準備してもいいですか?」


 私が立ち上がると、先生はオドオドとしながら頷いた。


 課題を押し付ける時は強気の先生だが、普段は何故かと弱気である。そのため生徒は「もしかしたら多重人格ではないのか」そう疑う人が多い。


「では、また国語の授業で会いましょう」

「はい。次の授業では授業中に居眠りをしないように」

「はーい」


 いつものように説教じみたことを言っていたので、私は流すように言葉を返した。


 次の授業は数学。予鈴に間に合わないとうるさいんだよなぁ、あの先生は。


 急がなければと思った私は、数学の教科書を取りに急ぎ足で教室を後にした。


 しかし、私は気になっていた。

 そう、あの夢の正体を。

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