死んだ幼なじみ

@upi_28

卒業式

「やっと勉強から解放されるぜええええ!」


「今日は死ぬまで食うぞ!」


公立高校の入試を終えた俺たちは焼肉を食べに来た。


朝戸光生、川原勇輝、児玉蒼太、1組の末永来斗、黒船友気。


3年間共に過ごしてきた仲間だ。


明日学校に行って学活を2時間して帰れば次の日は卒業式。


「なあ、じゃんけんで負けたやつ卒業式の日に好きな人に告らせようぜ!」


朝戸が余計なことを言い始めた。


「よっしゃやろうぜ」


末永も話に乗り始めた。


「じゃんけん…ほい!!」


言い出しっぺの朝戸と黒船が勝った。


「じゃんけんほい!…あいこでほい!」


児玉が勝った。


残るのは川原と末永と俺。


「じゃんけんほい!」


「よっしゃあああああああああ!」


俺は負けてしまった。


「稲崎涼也、卒業式の日好きな人に告るって」


みんなが一斉にストーリーに載せた。


「てかお前の好きな人誰なんだよ」


「明後日まで待てば分かるよ」


好きな人がいる。


だけど好きな人が誰なのか言うことができない。


言ったらどうなるか分からない。



-卒業式の日-


「今日は稲崎の好きな人が分かる日や!」


俺が教室に入った瞬間、春瀬奈実が大声で叫んだ。


「楽しみにしとるぞ涼也」


俺は好きな人の方をチラッと見た。


昔から常に表情が暗い彼女だが、今日はいつもに増して表情が暗い。


クラスが騒がしい中、彼女はひとりベランダで空を眺めているようだった。


「ちょっと早いけど席着いて〜」


スーツを着た担任の南川先生が教室に入ってきた。


いつもはテキトーに結んでいる髪を今日は丁寧に結んでいた。


卒業式中ずっと告白のことばかり考えていた。


どうやって告白すればいいのか、振られたらどうしよう、あの子のことが好きっていうことがバレるのが怖い、


色々考えていて卒業式どころではなかった。


「石部美優」


「はい」


「稲崎涼也」


てか俺が告白する前に帰ってたらどうしよう。


「…稲崎涼也」


家まで行く?ストーカーって思われたら…


「おい涼也」


ええ!?石部立ってる?


ってことは俺の名前呼ばれたの!?


「稲崎涼也!」


「はいいいいいいいいいっ!!!」



あっという間に卒業式は終わった。


教室に戻って最後の学活をしている間ずっと彼女の方を見ていたがずっと落ち着きのない様子だった。


もしかして彼女も俺に告ろうとしてんのかな笑


そんな馬鹿なことを考えている間に学活は終わり解散となった。


校庭に出るとみんなが俺の方を見ていた。


あんなストーリーあげられたからみんな知っているんだろう。


「今から稲崎が好きな人に告白します!!」


朝戸がそう叫ぶとみんながキャーキャー言い始めた。


「稲崎頑張れよ」


陸上部顧問の坂岡先生にまでそう言われた。


あたりを見回してみるが彼女はいない。


「もう帰っちゃったかな…」


「探せば見つかるぞ!」


満面の笑みで同じクラスの大川晴真がそう言ったので探すことにした。


中庭にもいない…


「裏庭は?」


「行ってみようか…」


そう言って裏庭に向かい始めた。


ドンッ!


ものすごい音が聞こえた。


「なになに??」


「どっから聞こえた?」


「花壇の方じゃね?」


花壇の方に向かって行った。


「きゃあああああ!」


女子数人の叫び声が聞こえた。


曲がり角を曲がると恐ろしい光景が見えた。


一緒にいた朝戸たちは逃げて行った。


「どしたんだ!?」


先生方も騒ぎに気付いたようでこちらに駆けつけた。


「霧倉!霧倉!」


「救急車お願いします!」


俺は涙を流しながら黙って見ていることしかできなかった。


今目の前で血を流して倒れているのが自分の好きな人だということを受け入れることができなかった。


目を開いている彼女は全く動かない。


涙が止まらなかった。

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