「この世界の人々は、みんな気違いさ。俺も気違い。あんたも気違い」

私はチェシャ猫ではない。もちろんアリスでもない。
けれど気分は「不思議の国のアリス」である。私が持つ思想や世界観、小説に込める信念などとは、この作品が内包する要素はあまりにも違い過ぎる。私の常識はグラグラと揺さぶられ、ページの狭間で迷子になるような、不思議な感覚を味わった。

だがそれは、決してこの作品を貶めている訳ではないのだ。

「俺がおかしいんじゃなくて、ただ俺の現実があんたの現実と違ってるだけなんだ」

恥ずかしながら不勉強で、私には殆ど分からなかったが、この作品には要所要所に元ネタとなる核が仕込まれているらしく、それ故に世界観はしっかりしている。あとは単なる作品としての味付けの問題で、柔らかく、抵抗無く呑み込める、独自の甘い味の物語として成り立っているように思えた。

この感想を書いた時点では、物語は未だ完成していない。
今後どうなるのか期待したい。

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