ラブに国境なんてなぃヨ


あたしたちは壁が壊れて通れるようになった場所へ行った

「この先が闇のドラゴンかー」

黒い雲が空を覆っていてどんよりしてる

木とか草も枯れてる

インスタ映え全然しない

なんか闇のドラゴンいるところなんだから観光ポイント作ればいいのに

歩いてても同じ風景ばかりでつまんない

歩いているとウェイスが言った

「勇者……何か気配がある」

「え?気配?そう?」

「何かは分からんが……勇者、俺の元に来い」

「えっ、何急に」

あたしにはケンジがいるから・・・

あたしの返答も待たずにウェイスはあたしを引き寄せた

めっちゃアピールしてくる、やば

そう思ってたらそのままウェイスが背後に魔法を打った

ドーン

あたりが眩しく光った

なにこれ?新手のプロポーズなの?

そう思った瞬間、背後から声がした

「きゃあ!」

その声にウェイスが顔をしかめた

「……女?」

後ろ見たら岩が粉々になっている

そのそばに黒髪の女性がしゃがんでいた

ウェイスが言った

「隠れてないで出てこい。何者だ?」

ていうか……あの人見たことある

「あれ、あの時のゴブリンに囲まれていたお姉さんじゃん」

あたしが言うとお姉さんが近づいてきた

「また会いましたね」

「どしたの?めっちゃ偶然」

ウェイスがあたしの前に出てきてお姉さんを睨んだ

「偶然なんかじゃない。ずっと付けてきて何の用だ?」

「あの……勇者様にお願いがあるのです」

「あ、もしかして勇者のサイン欲しいとか?」

お姉さんはあたしを見て言った

「勇者様、私を仲間にしてください!」

「へ?」

クマとウェイスはぽかんとした

「ドラクエラの町では勇者に話しかけられた村人は命をかけて勇者の案内人をしなくてはならないという掟があります」

クマが言った

「ドラクエラの掟、重いな……」

あたしは聞いた

「え、一緒に戦うの?」

「はい!」

クマが口をはさむ

「でも、あなた戦えるんですか?ランクは?」

そう聞くとお姉さんが自信なさそうに答えた

「私はEランクです……」

ウェイスが聞いて驚いた

「Eランク!?ありえねえだろ!」

「そんなありえないの?」

「戦闘スキル持ちじゃないな。そんなランクで戦いに出る奴なんて見たことない」

「ええ、強くない自覚はあります……Eランクは通称役立たずのゴミカスクラスと呼ばれているくらいですから」

Eランクひどい言われよう

「でも頑張ります!どうかお供にしてください!」

クマが首を横に振った

「Eランクで討伐なんて無理ですよ。ギルドの仕事だって草むしりしか出来ないランクじゃないですか」

「でも……でも私、昔からガッツはあるねって言われていたんです!」

「ガッツで戦えるなら世の中苦労しませんよ!」

お姉さんが地面に膝をついた

「土下座しますから!靴も舐めます!」

「や、やめろよ見たくもない!」

ウェイスの制止を振り切ってお姉さんが地面に這いつくばった

「雑草とかも食べます!」

「食うんじゃねえー!吐き出せ!」

ウェイスとお姉さんが揉めはじめた

「んー、いいよ」

あたしが言うとクマとウェイスが驚いた

「「え!」」

あたしはお姉さんに言った

「なんか感動したし」

「感動したって……理由それだけ?」

「うん。ガッツ大事。わかる」

「軽い……」

ウェイスがまだ納得してない

「でもEランクの奴なんてどうかと思うが。足手まといになるだけじゃ……」

「仲間にさ、ランクって関係ないじゃん?」

そういうとウェイスがハッとした

「た、確かに……!俺が間違ってた!勇者は努力する人間を認めようとしているのに俺ときたら……流石だな」

クマが横で言った

「それでいいの……?」

「じゃあ私も入れてもらえるんですね!」

「うん。おっけー」

お姉さんはお辞儀をした

「ありがとうございます。私はナレーシャと申します」

「こっちはクマ」

「ええ、存じております。クマさんは神様の使いですね。あなたで神様の使いは10代目でしたよね。クマ一族の中で神様の使いに選ばれたのはあなたが初めてだとか」

クマが少し驚いた

「そんな情報まで……よく知ってるね」

「私は戦闘スキルこそありませんがドラクエラで学んできた知識があります。クマさんは神様の使いなので戦闘には参加できませんが勇者様に世界をガイドする重要な役目がありますよね。あとバーに行くのが習慣でその度に神様からの給料が低いと文句を――」

「わーっ!変なこと言わないでよ!聞かれてたらマズいよ!」

「あ、失礼しました。ドラクエラの歴史の授業で学んだもので」

「そんな内容やるの!?」

次にあたしはウェイスを紹介した

「こっちはウェイス」

「よろしくな」

「はい、よろしくお願いいたします。ウェイス様はこの地帯でも有名な三大貴族の方ですね」

「まあな。クマのこと知ってるなら由緒正しい貴族の俺のことも詳細を当然知ってるんだよな?」

「もちろんです。噂によると強そうな割にメンタルが弱いと耳に挟みました」

「なッ……!なんだその噂は!」

「あと自作のポエムを幼い時に夜な夜な書いていたと聞きました。特に気に入られているのが『俺と漆黒の覚醒【めざ】め~贖罪は光と永久の交錯~』でしたよね」

ウェイスが後ずさった

「なんでそんな話知ってるんだよ!?」

「一部を抜粋しますと、『闇の慟哭【うぶごえ】・・・悲境の訪れ・・・暗黒の刻【こんや】・・・覇者【おれ】は覚醒【めざ】メル・・・』」

「やめろーーーーッ!!!」

ウェイスが叫び声をあげた

「うわあ」

「ウケる」

二人の説明が終わった後ナレーシャに聞いた

「あたしのことは分かるの?」

「実はこの世界の住民ではない勇者様のことは噂がほとんどないんです」

「じゃあ、これから分かるようにしよ」

「はい、よろしくお願いしますね、勇者様」

「あ、いっこ勇者の情報追加しといて」

「なんですか?」

「ナレーシャのダチってさ」

そういうとナレーシャがにこっとした

「はい、お友達ですね」


横でウェイスがうるうるしている

「流石勇者だな……」

「……」

クマは興味なさそうに遠く見てた








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