第5話 時計な太陽

 ただただ真っ白な世界です。真っ白な空と真っ白な地面。たったひとつのボタンを押すことで、さっきまでいた真っ暗な世界とは、真逆の世界になっていました。ひとつの些細な選択が、思いもよらない結果を導き出したのです。僕は真っ暗な世界に比べれば、真っ白な世界は、悪くはないと思いました。なぜなら、真っ白な世界では少なくとも〈何もない〉ということが分かるからです。真っ暗な世界では〈何もない〉かもしれないし、もしかしたら、目には見えないけど〈何かがある〉かもしれないと思えてしまうからです。僕たちは〈今何もないと言うこと〉よりも〈何か起こるかもしれないこと〉を恐れる生き物なのかもしれません。僕は真っ白な世界の空を見上げました。そこには太陽のように大きくて、真っ白な時計が浮んでいたのであります。


※ https://youtu.be/f14eBwhI_P0

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