異世界転生と思ったら結婚相談所でした。フォロワー100万人の人気アイドル声優は結婚相談所だとLv-999で追放されました。ハイスぺ婚活男子に今更結婚してくださいと言われても、もう結構です。

@nametake-banira

第1話 結婚相談≒教会

 五大ドームツアーをはじめてなしとげた伝説の6人組アイドル声優ユニット「STANDStills」


 3年前、最年長のキャプテン水原奈央みずはらなおが17歳??で妊娠、結婚をもって解散した。


 17歳高齢出産がソロ活動中の現役メンバーに衝撃をあたえた。


「やっぱり精神は肉体を超越しないんだわ」


 現実に打ちのめされたメンバーはソロ活動しながら虎視眈々とセカンドキャリアをプランニングする。


「異世界転生キターー!」


 中世貴族のお屋敷にいかにもありそうな豪華なシャンデリアを見つめながら元STANDStillsセンター1番人気の佐崎歌織ささきかおりが絶叫する。


「異世界転生していません。現代日本です。現実を受け入れてください。」


 佐崎歌織の前に座っている、まるで神に仕える神父のような男が真面目な顔で言う。


 清楚な気品を漂わせまるで中世大司教のような結婚相談所主任相談員がまっすぐに佐崎歌織を見つめる。


 不満を顔いっぱいにしつつ満面の笑みで歌織は身震いし立ち上がって抗議する。


「いやいやいやこんなの異世界転生でしょ?私はフォロワー100万人の人気アイドル声優ですよ、なのになんて言いました?」


 まっすぐ歌織を見つめ座ったままの主任相談員が神託の如く丁寧に告げる。


「無価値です。もっと自分を見つめ直しましょう。」


「異♪世☆界#転生キターーー!!」


 歌織はお約束のように両手を突き上げ絶叫する。


 豪華なシャンデリアからやさしい光がふりそそぐ。


 瞳を閉じて天を仰ぐ歌織、不安定な前髪がゆらゆら揺れる。


 無造作なストレートヘアが肩で飛び跳ねる。


 ナチュラルメイクで何もしてない長いまつ毛が綺麗にならぶ。


 歌織のペルシャ猫のようにきれいな二重の瞳を開けると先ほどと同じ、中世貴族のような豪華な部屋が映し出される。


 しかし、よく見ると豪華なシャンデリアから降り注ぐ光はLED光。


 フランス初期風で天使やヴィーナスの彫刻が入った重厚な金色機械式時計からは機械の音が聞こえない。


 かわりに電源コードがきれいに壁をはって何処かへ消えている。


 まぎれもなくここは現代日本の結婚相談所である。


「落ち着いて、まずは座ってください。」


 相談員に促され渋々着席する歌織。


 2人の目線が交差する。


猫科の猛獣が威嚇するように歌織は相談員をにらみつける。


 相談員は気にする様子を見せずに慈愛に満ちた顔で語る。


「人気アイドルという事だったので特別に当社の年収1000万円以上のエグゼクティブ男性にタイプ分析調査と偽装しアンケート調査を行いました」


 主任相談員はA4用紙6枚を机の上に置いた。


 紙には元STANDStills6名の顔写真と簡単なプロフィールが記載されている。


「この6名の中で結婚するとしたら誰かアンケートを取りました」


 静寂の中、歌織は手を合わせて頭を下げて必死に祈る。


 主任相談員が手に持つ1枚のA4用紙に歌織の運命が導き出されている。


 もはや決定した未来なのに歌織は真剣に神に祈る。


 どこかからテレビカメラで撮影しているのか疑いたくなるが、カメラなどない。


 正真正銘、二人だけの空間である。


「あなたと結婚したい人は一人もいませんでした」


「¿イセカイ転生キターーーーー¡」


 もはや抗議する気力を失った歌織は呆然自失で天を仰ぐ。


 力いっぱい合わせていた手は胸のあたりで手のひらを上にし両手を重ね浮遊している。


 相談員がアンケート用紙を歌織の手のひらにそっと乗せる。


「あー男の人から0票ですね。女性にアンケートとったんですか?あたしアイドル声優だから女性に好かれにくいんですよー」あはははは


 から笑いが静かに響く


「おーまちがえましたごめんなさい。てっそんな事はないです。あなたと結婚したいエクゼクティブ男性は一人もいませんでした」


 歌織は直立不動で顔面蒼白になる。頭から血がサーと引き目の前の景色がグルグルと回転する。


 しかし、歌織は足の爪先からアホ毛の先まで微動だにせず硬直している。


 見かねた相談員が必死に歌織に話しかける。 しかし、歌織からは何の反応もない。


 歌織から見える世界はグルグルまわり、地面と天井の平衡感覚を失い立ち尽くす。


 相談員が話しかける顔は見える。音声が聞こえる。


 しかし、歌織の耳に届く音声は言語として脳へ伝わらない。


「こ〇〇〇で〇〇〇たは〇〇〇〇〇〇せ〇〇。考〇〇〇〇〇〇、〇〇〇〇〇〇〇力〇〇〇、〇〇独〇〇〇き〇〇〇る〇〇に生〇〇〇〇〇〇〇〇る〇〇〇。もしも、〇〇〇〇〇〇〇〇〇る〇〇あ〇〇〇〇〇〇ポー〇〇〇〇〇〇の〇、〇〇〇〇〇会〇〇〇婚〇〇け〇〇〇に頑〇〇〇〇〇う」


 相談員の言葉は歌織の脳内にふっかつのじゅもんとして響きわたる。


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