第13話 『御代』の逆鱗に触れる その3




夜中、通りのベンチに腰掛ける四冥と壬屋子





四冥は気が付くと

壬屋子の持ってきたパンをむさぼり食べ、

そしてきれいに食べ終わっていた。


「・・・夜守の施しは受けない」


(食べてからそれ言う?)



「まぁいいわ、この間は助けてくれてありがと」




「その・・・折り入って、頼みがあるんだけど」

壬屋子はモジモジと恥ずかしそうに話を切り出す。





「あんたのその六畳家の剣術・・・すごかったわ・・・できたら・・・私にもその・・・手解きしてくれない?」






四冥は思ってもみない言葉に目を丸くする。

そして、ため息をつく。





「私は本気よ! パンひとつで聞いてもらえるお願いだなんて思ってない・・・強くなれるなら・・・私ができる事なら何でもお願いを聞いてあげる、だから・・・」







壬屋子の叫び。

長い沈黙・・・


ふと、蝶が周りに飛んでいることに気づく。

今まで見た事もない綺麗な羽根


よ足元にもさっきまで生えていなかった花が生えている。

ずっと見ていると意識が遠く眩暈がしそうなほどに美しい。


そして、急に壬屋子の顔が青ざめ始める。




「これ・・・『御代』の結界術・・・まずい」





結界術・・・

確か祓い屋の祓術のひとつだっけ

自分に有利なフィールドを作って自身の力を倍増させる術式


実際見るのは初めてだ。





「二人とも、立ち話もなんやから、ココ座り」






関西弁の声のする方

いつの間にか赤い敷物が目の前に敷かれ

着物の女性が正座して座っていた。

赤い傘と茶道の器具が彼女の横に並ぶ、「野立て」って奴だろうか



彼女はにっこり笑って、機嫌良さそうに こちらを誘う。




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