第2話 穢裁刀





『穢れ』は、ここでない『常世』から流れ着いた何かだ。






奴らはたまに常世から現世に迷い込む。

そして、あやふやな自身の存在を保つために 人間を喰らう。




『払い屋』は奴らを払う事を生業とするわけだが、

奴らに現代兵器は効き辛い。


銃弾で死ぬならば、どれだけ討伐が楽だろうと考えない日はない。



一般的な方法のひとつはあまりにも古典的だ。




穢裁刀えだち




この真っ黒な刀で『穢れ』を引き裂く、それが奴らを倒す方法である。








$$$









真夜中、駅近く

電車が通るたびに社内の光が点滅するように動く。



人のいない薄暗い通路にスーツ姿のサラリーマンの男

疲れているのか、目に生気はなく、ぼんやりと、目的もなく歩く。



というか完全に『穢れ』に誘われている。




”あるある”

”完全に俺”




はっと気づき、あたりを見渡す。


「なんだ、ここは、はは、疲れすぎて呆けてしまっていたかな・・・」


急いで立ち去ろうとした瞬間

手に重く冷たい何かを感じる。




黒い手が自分を掴んでいる。




振り向くと黒い大きな影が口を開けて―――





うわあああああ!!






喰われる直前、

間一髪、黒い手を斬り落とす。


四冥は相手から目を反らさない。


サラリーマンの男は都合よく一目散に逃げていく。



斬られた穢れがこちらの方を向く。

食事を邪魔されたのが余程頭に来たのか。


大きく体を震わせて襲い掛かってくる。





太刀で受ける、

金属同士をこすったような高音が周囲に響き渡る。





(ちっ、こいつ強いな)





早く終わらせないと『夜守』の連中が集まってくる。


(とっとと終わらせるか・・・)




四冥は息を整えて集中する。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る