書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。

鈴木べにこ

プロローグ

〈愚王side〉



「私のローズッ!すまないすまない遅すぎた!全てが遅すぎた!ローズ、私の本当の愛しい人!私を1人にしないでおくれッ!!」



 ここは歴代の王妃や側室達が眠る王家の霊廟。

 そこにあるローズの棺に私は覆い被さるように泣いていた。


 私はしわくちゃな老人の手で、何度も何度も彼女が眠る石の棺を撫でながら子どものように泣いていた。



「私のせいだ!何もかも全てっ!・・・婚約者の時から君には辛い想いをさせてきた、愚かな私のせいで!1番大切にすべき人が誰なのか解っていなかったのだ!あの女ではなく君との未来を選んでいれば君と私は幸せになれたのに!許しておくれッ!許しておくれッ!」



何時間、何日、飲まず食わずでどれくらいの間霊廟に居たのだろうか。



「フンッ、まだここにいたのか。私の愛しいローズ様を苦しめてきた愚かな王が。」



 霊廟の入り口に年老いたローズのメイドが立っていた。

 私は虚な目でそのメイドを見上げる。

 そんな私を見てメイドはニヤリと笑った。



「もしも、全てをやり直すことができるとしたらどうする?」


「・・・できるのか?」


「できるさ。ただ材料がちょっと特殊でね、協力が必要なんだ。それでもやるかい?」



 年老いたメイドの非現実的な言葉なのに、私は妙な説得力を感じた。

 私は藁にもすがる想いでメイドにすがった。



「教えてくれ!やり直したい!そして今度こそ本物の王となりローズを愛すべき王妃として迎えたい!ローズと本物の夫婦となりたい!ローズを誰よりも幸せにしてあげたいのだ!どんなことをしてでも!」



 やり直すことが出来るなら何だってする。



「やり直した世界でローズ様が以前と違っても?アンタを好きじゃ無くなってもか?」


「ローズがどんな人になってようと構わない!嫌われて憎まれたとしても私は彼女を今度こそ離さない!何があっても彼女を愛する!その為なら何だってする!」



私のその言葉にメイドはニヤリと笑った。



「いいだろう。愚かな王よ、私と一緒にローズ様を取り戻そうじゃないか。」



 老女が短剣を差し出した。



「さぁ、禁術のために生贄の心臓がたくさん必要だ。」



 私はその短剣を握った。

 そして私は高揚感から声を高らかにして笑っていた。

 


「ローズ、待っててくれ。」



 次の世界で今度こそ君と一緒になろう。











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第一章.終わりと始まり

1. 王の後悔と真実の愛の目覚め.

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