#57 最終決戦! 太陽VS銀河!

「フレーフレー! お兄様あー!」

「せんぱーい! あのドラゴンをぶっ倒してくださいっす!」


 仲間達の声援を受けて、試合のボルテージは最高潮に上り詰める。

 配信画面に映るコメントもかなりの数が流れていった。


――凄い試合になってきたな。

――チーム戦だからこそできる進化や合体。どっちもレベルが高すぎる。

――これが伝説のチーム、幻想の竜達ファントム・ドラゴニクスのメンバー同士の戦い!


 今、フィールドでは二体のマドールが睨み合っていた。

 太陽竜プロミネンス・ドラコの進化形態エボリューションモード、太陽獅子王プロミネンス・ライオネル。

 銀河竜皇コズミック・ドラグオンの合体形態ユニオンモード、銀河流星皇シューティング・コスモ・ドラグオン。


『行くぞヒナ! 飛び立て、銀河流星皇シューティング・コスモ・ドラグオン!』


 ドラグオンがオーロラの翼をはためかせ、バトルフィールドの上空へと飛び立つ。

 このまま高所を確保してこちらを攻撃するつもりなら、そうはさせない!


「行け! プロミネンス・ライオネル!」


 俺がコントローラーを操作すると、プロミネンス・ライオネルは地面を蹴り、大きく跳躍する。

 白き獅子の体はそのまま重力を無視し、赤く染まった空へと昇っていく。


『なるほど、お前も飛行能力を持っていたか』


 ニヤリとコスモは笑う。

 そして二体のマドールは雲の上で再度対峙した。


「勝負だコスモ! 熱き太陽の炎をその身で味わえ! 太陽獅子王プロミネンス・ライオネルの頭部魔法ヘッドマジック発動!」


 獅子が大きく吠える。

 その咆哮は空気を震わせ、天地を揺るがす。

 そしてプロミネンス・ライオネルの体が燃え上がり、赤い炎が全身を包み込んだ。

 一方でコスモも声を張り上げる。


『銀河流星皇シューティング・コスモ・ドラグオンの頭部機能ヘッドファンクション発動!』


 ドラグオンの全身が青く輝き、その体は青い光に包まれていく。


「いくぞ、コスモおおお!」

『かかってこいヒナあああ!』


「メテオファイアソウル!」

『シューティングスターストライク!』


 お互いが技名を叫ぶとともに、二体のマドールはその場から飛び立つ。

 太陽のように真っ赤に燃える炎と、流れ星のように青く輝く光。

 それらが同時に相手へと接近し、赤と青が衝突した!


「いっけえ、プロミネンス・ライオネル!」

『やれえ、シューティング・コスモ・ドラグオン!』


 赤い炎と青き光は正面からぶつかり合い、押し合う。

 その力は拮抗し、互いに一歩も引かない。

 そこで俺はプロミネンス・ライオネルの能力を語る。


頭部魔法ヘッドマジック、メテオファイアソウルは自分の体を炎で包み、無敵状態となって相手に突撃する!」


 それを聞いて、コスモは口の端を吊り上げた。


『奇遇だな。頭部機能ヘッドファンクション、シューティングスターストライクは自分の体を流れ星へと変え、無敵状態になって全力でぶつかるんだよ』


 ということは!


「お互いに無敵状態ってこと?」


 夜宵が呟く。

 お互いのスキルは攻撃終了まで自身を無敵状態にするもの。

 しかし互いが互いの攻撃を阻んでいるため、どちらも攻撃は成立せず、無敵時間が終わらない。

 そこでコスモはニヤリと笑った。


『ヒナ! 最強の剣と最強の剣をぶつけあっても勝負はつかない。俺達の決着をつける方法はたったひとつしかないようだな!』


 そう言われて俺は気づく。

 タイムリミットか!

 自軍のゴールデンマドールを守るオーロラの中を見る。

 そこで水晶の魔法使いクリスタル・メイジ永久なる聖域エターナルエデンを維持するために自分の命を削っている。

 その余命は十五分。

 その時、聖域の中にいる水晶の魔法使いクリスタル・メイジの頭部装甲がゼロとなり、魔法使いはその場に倒れた。


「ごめんねヒナくん。あとは頼んでいい?」


 申し訳無さそうに水零が言う。

 同時に永久なる聖域エターナルエデンの効果は切れ、オーロラの障壁に亀裂が入り、割れていく。

 コスモは告げる。


『これでクイーンを守っていた永久なる聖域エターナルエデンは消えたな』

「だがお前達のキングを守っていた石化の呪いもすでに無い! 条件はお互いに同じだ」


 プロミネンス・ライオネルとシューティング・コスモ・ドラグオンは攻撃が成立するまで無敵状態のまま、どちらも絶対に倒れることはない。

 ならばこの勝負に決着をつける方法はたったひとつ。


「プロミネンス・ライオネル!」


 赤き炎の塊は、青き流星との押し合いを諦め、相手を避けて敵のゴールデンキングマドールを目指す。


『シューティング・コスモ・ドラグオン!』


 コスモも選択は同じだ。

 ヤツの操る流れ星は真っ直ぐにこちらのクイーンマドールへと向かった。

 赤く燃える太陽が空を滑り、キングへと落下する。

 一方で青く輝く流星も風を切り裂いて疾走し、クイーンを狙う。

 どちらが先に敵のゴールデンマドールを倒すか。勝負はその一点のみ。


「突っ込めええええ! プロミネンス・ライオネル!」


 燃え盛る炎の獅子が敵のキングマドールに近づく。近づく。

 行け、そのまま行け!

 チラリとドラグオンの方を見る。

 ヤツの青い星もまた、クイーンマドールの目前に迫っていた。

 負けて、たまるか!

 コントローラーを操る指先に俺の全神経を集中する。


「頑張れえ! ヒナあ!」

『負けるな! コスモお!』


 夜宵とクロリスの声が交差する。

 そして太陽の炎は、ゴールデンキングマドールに届く!


「メテオファイアソウル!」


 俺が技名を叫んだ瞬間、真紅の炎はキングマドールへ衝突し爆発する。

 炎に呑み込まれ敵のキングは、跡形もなく燃え尽きた。


『シューティングスターストライク!』


 同時に青く輝く流星がクイーンマドールを貫き、粉々に粉砕する。


「こ、これは! お互いのゴールデンマドールが機能停止ダウンしちゃいました!」


 光流が目を見開く。


「ダブルノックアウトっすか!」


 琥珀があんぐりと口を開け、驚きを示す。

 俺はチームメイトを見渡し、問いを発する。


「どっちだ? どっちが早かった?」


 その質問に対し、夜宵も水零も、光流も琥珀も、困惑の顔を浮かべるのだった。


「えっ、と。ごめんね。同時にしか見えなかったわ」


 水零のその感想に、他のメンバーも無言で頷く。

 人間の目では同時にしか見えなくても、勝つのはどちらか一チーム。

 どちらのゴールデンマドールが先に倒れたのか、ゲーム機は公正な判定を下すだろう。

 そしてテーブル上に勝利チームの名前が映し出された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る