第12話 虚言はいつか看破されると知れ。
「は?」
初美の目が怖い。腕組みをしてこっちを
「いや、それが…… 父さんが入院しちゃってさ」
「えっ! おじさん入院しちゃったの!」
一転して初美は驚いた顔になる。うちと初美のうちは家族ぐるみのお付き合いって程じゃないけど、まあそれなりに親交があるんだ。
「う、うん……」
「あたし、お見舞いいかなくていい?」
父さんを気づかう表情の初美。あたしには一回もそんな顔見せたことないような……
「いっ! いやいや、ただの検査入院で月曜には退院だから…… 大丈夫」
「そっか、検査結果悪くないといいね」
「あ、うん、ありがと」
下手くそな嘘。今度は父さんをだしにして。
それもこれも
嘘を吐いたことへの自己嫌悪でへこみながら人けのない昇降口へ向かった。
ところが人けがないはずの昇降口で一人の女子がうろうろしている。本当にうろうろしていると言った言葉がぴったりで、うちのE組の靴箱前を行ったり来たりしている。
なんだこれ生明さんだってすごい美人だけど、絶世の美女ってこれか?ってくらいの美人。
ちくしょう、美人だか何だか知らないが、また菊池達みたいなゲス野郎が生明さんに何か嫌がらせしようとしてやがるんだな。この女、生明さんの靴箱の前をうろうろしているし。
そいつはこちらに気付くと、意を決したようにつかつかとあたしのとこまで歩みを進める。ブラウスの徽章を見るとII-Cと記されている。するとあれか?こいつが噂の才色兼備で生明さん以上に虚弱体質の
見矢園さんはあたしを見かけると
「君、E組よね。これ生明
少しつっけんどんにパッと突き出してきたのは凝ったデザインの封筒。封筒? 古風だな。古臭い。まあ連絡先知らないんじゃ仕方ないか。んっ? でもこれ何の封筒なんだ?
「え? あ、あの、これ? え?」
いきなりきれいな封筒を渡され困ったあたしは何だか間抜けな声を出すしかなかった。
「じゃ、お願いね」
見矢園らしい女子は踵を返すとたたっ、と駆け出して校舎の外へ出て行ってしまった。……足おっそ。
「あ、待っててくれたんだ」
背後から声をかけられてぎょっとする。慌てて封筒をカバンに突っ込む。
声の主は初美だった。
「最近つれないからさ、
からかい半分にすねた声を出す初美にあたしは焦る。
「そ、そんな事ない。そんなことないよ、全然」
「ふーん…… そっ。生明慧にもう夢中なんじゃないかと思った」
いたずらっぽい口調で笑顔を浮かべるが、何だか探るような目つきの初美。
「ぐっ!」
「何そのリアクション」
「な、ななな何でもない。何でもないんだ、あははは……」
「冗談よ冗談。もう変なやつ」
これってどういうこと? あたしが生明さんのことを気にしているってバレてるのかな。
そのまま初美と普通におしゃべりしながら帰ったけれども、右手のカバンは腕が千切れるくらい重かった。
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