第4話現着

 後部座席に加納が乗り込んだのを見て、スキンヘッドが車を出した。


「加納さんすぐ着きますぜシートベルトしっかりね」瀬崎がパトランプを乗せる。


「行きますぜ」


 スキンヘッドがアクセルを踏み込む。パトカーはそのスピードを上げていく。


「オラオラどきやがれそこの車ども警察車両のお通りだってんだよー。」


 殆どがドロイドによる自動運転だから良いものを。グロウラの外でやったら即懲戒免職だろう。


「毎回思うのだが、ここまで急がなくても事件は逃げないぞ。それに今回は犯人の目撃情報はないんだろ?」


加納が嗜める


「いやいや〜、またあいつが1番乗りだってのは悔しいでしょ?」

スキンヘッドはスピードを全く落とさずコーナーを曲がる。


「俺は事故さえ起こさなければ構わないが…」


「が?」


「隣を見てみろ。」


ミラー越しに隣を見るように指差す。


「隣?」


スキンヘッドが隣を見ると、瀬崎が気絶していた。


「…分かりました。安全運転で向かいます。」


諦めたようにスキンヘッドはスピードを落とした。


 現場に到着したところで瀬崎が目を覚ましました。


「あれ?浦本さん早いですねぇ、もうついたんですか?」


 スキンヘッドは瀬崎に三角絞めを極めながら怒鳴る。


「おめぇが寝てなきゃもっとはやかったってーの!」


「え、えぇ、すみません。死んじゃいます、死んじゃいますぅー!」


 瀬崎の必死なタップでスキンヘッドはやっと瀬崎を開放した。


「遊んでないでいくぞ」


 加納の言葉で2人はやっと仕事を思い出したようだ。黄色いテープで囲まれた現場に向かった。


 そこにはまだ近隣住民の姿は見えなかったが、テープが貼られているあたり、もう先客があるようだ。

加納がその先客に声をかけた。


「これは塩谷警部補お早い到着ですね。今回も…」


 塩谷と呼ばれ振り返ったその男は、まだ少年それも小学生と言っても良いぐらいの容姿だった。ただ、小学生にしては憎々しい目つきをしてをしている。


「あーこいつはどうも。確か、カノーサンでしたっけ?アツミサンとこの。えーと、現場保存しといたんで後は頼んますわ。んじゃ」


「んじゃ。じゃねーよ」


と帰ろうとした塩谷をスキンヘッドが止める。


「てめぇ、第一発見者に話聞いてねぇわけじゃねぇだろうが。」


「えー、でもあんたらどうせもう一回話聞くんでしょ?後でLINEで送りますから。そういうことで、ほんじゃまた。」


 言い捨てて塩谷は立ち去ろうとしたが、瀬崎とすれ違ったところで足を止めた。


「あれー、あれー?セザキじゃ〜ん、まだやってたんだ、警察官。むかねーから辞めろっていったのによー。いや、今年から正規だっけっか?まーいいや。重大なミスする前にさー辞めとけ」


ずっと俯いて聞いていた瀬崎は何か言おうと顔をあげたが、すでに塩谷はいなかった。


「直哉…」


 キーーー!


 佇む瀬崎の前に一台の警察車両が急ブレーキで止まる。


「いやー、早紀さんって結構無茶するんですね〜。もっと清楚な人だと思ってましたよ〜。」


 助手席から1人の細身な少年が出てくる。次いで運転席から早紀が降りて来た。


 降りて来た少年は集まって来た加納とスキンヘッドを含めた3人の方を向く。


「本日より捜査一課第4係渥美班に配属になりました。

神薙惣太郎です。よろしくお願いします!」


神薙はそう言うと、敬礼をした。


 それはそれは綺麗な敬礼だった。左と右が違うことを除けば。

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