第2話嫌になる門

「いや、だーかーらぁー」


「言ってるじゃないですか。僕が新しく配属になった特別区相当署の神薙惣太郎ですって。」


 大きな荷物を持って神薙惣太郎〈かんなぎそうたろう〉と名乗るその少年は、ゲート前で止められていた。

 色の薄い肌に汗を浮かべながら母親に似ているだろうその女顔を歪めて叫んでいる。


「連絡がいってるはずなんですけど。」

「う〜ん、確かに今日1人新人さんがくるらしいだけどさ〜」


 そう答えているのは神薙より少し年上であろう少年だ。制服姿を見るに、警備員といったところか。


「あのさ〜、神薙さん?いや神薙さん(仮)!」


「(仮)を取れ!」

そんなツッコミを無視して警備員は続ける。


「グロウラについてしってる〜?」


馬鹿にしたような質問に神薙はムッとして答えた。


「知ってますよ!人物登用専用AI SORTによって選ばれた少年少女による完全自治を実現した人材育成専用の実験型都市です!」


「う〜ん、模範解答だね〜」


神薙は、満足気な表情を浮かべた。


「じゃ、」

「じゃあ〜知ってるよね〜」


 かぶせるように言ったその顔は神薙のそれを上回る満面の笑みだった。


「選ばれるのがどう言う人か〜。そぅ〜まだちっちゃな子供なんだよ〜。小さなうちからここで育てるんだよ〜。だ〜か〜ら〜ここに新人で来るのは遅くても10歳になる前ってわけ〜。」


言い終えてからまぁ遅行発現てのがあるらしいけどね〜と呟くように言って、神薙をじろじろと見た


「神薙さん(仮)はもう中学生くらいでしょ〜」


「じゅ、14ですけど、そ、それは」


「いるんだよね〜この大門の前に観光で来て俺入れるんじゃね〜みたいなのが〜。グロウラゲートとか言っちゃってさ〜。まぁ〜とにかく俺の警備員人生5年いや、研修期間、学生期間を入れた9年間でこんな大きな新人は来たことがないね〜。まぁ〜出直してきな〜」


 そう警備員が言い放つと神薙の周りに警備用ドロイドが集まってきた。


 「ま、ちょ、まっ、うわ、わ、わぁーー」


 両腕をドロイドに掴まれた神薙は観光地と化している大門通称グロウラゲートの前に放り出された。

大勢の通行人が神薙を見ている。


「落ち着け惣太郎おばあちゃんも言ってたろ人生こんなもんだって、まずは早紀さんに電話だ。スマホ、スマホ…」


 まさぐるポケットの中にスマホはない。どうやらドロイドに掴まれた時に落としたらしい。これで中に入るにはもう一度あの警備員と対決しなくてはならなくなった。


 それにしても、と神薙は閉ざされた大門に目を向ける。配属初日にこれとは


「やんなっちゃうなー!」

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