第30話 路上で出会った変態怪奇ファイル・その1。双極性障害の絵師。


 前回までのあらすじ


 第3回公演を終え、それなりに成功を収めたGhost。

 ぶっちゃけてしまうと、ここで失敗して『もう演劇やらない!』って展開の方が幸運だったのかもしれないけれど(/・ω・)/


 それはそうと演劇と並行して路上でのアート活動も行っていたのですが、この辺りから路上での超変態たちとのエンカウント率が爆上がりするのでした。




○話しは聞かせてもらった! 世界は崩壊する!!


 路上で絵を描くようになって一年以上たったころでした。当時利用していたmixi(今や時代を感じるSNS!)にて路上での活動の様子をアップしていたのですが、そこへ「私も参加したい」という旨のメッセージが届きました。

 その人とは「お絵描き」という共通の趣味があったのでmixi上でになっていましたが、お互い描いた絵に《いいね》をつける程度で殆どやり取りをした事のない相手でした。


 その程度の関係でしかないのに一緒に参加したい、と決意するというのはよほどの気合が入っているに違いない!

 そういった経緯で知り合ったのが絵師Bでした。


○絵師B

 路上アート集団Aメンバー。

 三十歳手前。女性。

 イラスト系を得意としていた、元ナンバー1キャバ嬢。当時無職。

 双極性障害を患っていた。また当時流行っていた脱法ハーブに手を出していた。他メンバーに対して、次第に攻撃的になっていく事に。

《所有する芸術スキル》

・コピックを用いたイラスト。

・ハンドメイド、アクセサリーの制作。

・女性からの人生相談員。



 さて、絵師Bと初めて出会ったのは大震災の少し後くらい。そのためか、僕らの活動場所である某駅は”超”殺伐とした、世紀末のような光景が広がっていました……と書くと震災の影響で建物が崩壊した、みたいな情景を思い描くかもしれませんが、そうではありません。

 そこに集まるしていました。

 具体的には、


・駅のペデストリアンデッキで拡声器を片手に『世界は崩壊する!』と声高らかに演説して、しまいには歌を歌い出す、多分、宗教家の男性が居たり、


・揃いのスーツを纏った男女数人が常に駅前に立っていて、チラシを配るでも声を掛けるでもないんだけれど、実は彼らは全員某新興宗教に所属している人達。

 そんな彼らが、なぜか常に駅前に集まっていたり(ちなみに彼らのうち数人は僕らの絵を見に来てくれた。悪い人達では無かったよ(/・ω・)/)、


・暴走族の少年たちがちょっとヤケッパチっぽく走り回ってたり、(漫画のAKIRAみたいな感じね(/・ω・)/)


・反原発のデモ行進が駅の目の前で行われ、いたるところからシュプレヒコールが鳴り響いたり、


 と、どことなく某駅は落ち着かない感じ。


 ま、今となっては、なので語ってしまいますが、お恥かしながらボクもこの頃、反原発のデモ行進に参加して一緒にシュプレヒコールを上げていました。

 けれども、どうにもという連中が胡散臭い!

 蓋を開ければ、つまるところ の集まり、といった感じ。

 彼らを見ていて、「子供の為、次の世代の為」と口では言っておきながら、結局は自分の余生の満足のために躍起になっている年寄りになりたくねぇなぁ、と思ったのでした。

 デモ行進の中で、多くの人と一緒に声を張り上げているのに強烈に感じた、言葉にならない”孤独感”は良くも悪くも興味深い経験にはなってくれましたが(/・ω・)/




○メンヘラは怖いぞぉ。


 そんな状況の某駅にも関わらず、一緒に活動してくれることになった絵師B。

 その日は元暴走族の副総長・絵師Aと共に路上で絵を描き、販売しながらお互い自己紹介や、どんな作品を作っているのかなど、和気あいあいと語り合っていました。穏やかです。よきかな、よきかな(^^)/

 そこで気づいた事。


 路上で絵を描いていると、絵に興味を持ってくれた通行人の方々と世間話をする機会も多いのですが、ここで特筆すべきは絵師Bの世間話スキルの高さ!

 彼女は路上で出会う男性よりも女性の方に人気があって、世間話をするうちにいつの間にか相手の悩み相談をするようになっていました。

 さすがは元キャバ嬢! コミュ力高けぇ!


 初めて一緒に路上に出たその日、僕らは終始和気あいあいとしていました。帰って行くときの絵師Bの様子も不満げな雰囲気はなく、


絵師B

「また参加しますね~」


 とにこやか。

 内心、僕は、


Ghost

(楽しんでもらえてよかった)


 と安心していました。

 その日はそのまま解散。家に帰って翌日の仕事の準備をしたり、小説を書いたりしていたのですが、ふと何気なくmixiを覗いてみると絵師Bがなにやら呟いている。今日の路上の感想かな? ボクも遊びに来てくれたお礼のコメントしないとなぁ、と思って絵師Bの呟きを読んでみると……


絵師B

《マジ、キモい! あいつら、もはや宗教じゃん! ウザ!》


絵師B

《一人で何もできない奴らが、群れてオ○ニーしてるようなもんだわ!》


絵師B

《遊びじゃねぇんだよ!!》


 あ、あれれ~。絵師Bさん、ブチギレですやん。

 え? 僕なにか気に障ることしちゃったかな? だとしたら謝らなきゃだけど、僕ら宗教っぽい事なんてやってないし、そもそも前提として僕らの活動は遊びでやっているわけだから、この怒りは僕らに対してじゃない……?


 頭の中が?マークだらけになっていたのですが、この日、絵師Bから聞いた話を思い出しました。


絵師B

「私、今はで病院行ってて、働いてないよ」


○双極性障害とは

双極性障害は、通常の気分をはさんで躁病(そうびょう)と抑うつの病相(エピソード)を呈する精神障害である。


 中略


 躁病とは、気分の異常な高揚が続く状態である。躁病の初期には、患者は明るく開放的であることもあるが、症状が悪化するとイライラして怒りっぽくなる場合も多い。自覚的には、エネルギーに満ち快いものである場合が多いが、社会的には、離婚や破産など種々のトラブルを引き起こすことが多い。アメリカ精神医学会によるガイドラインDSM-IV-TRによる躁状態の診断基準は、以下の症状がAを含む4つ以上みられる状態が1週間以上続き、社会活動や人間関係に著しい障害を生じることである。


A. 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で、またはいらだたしい、いつもとは異なった期間が少なくとも1週間持続する。

1.自尊心の肥大: 自分は何でもできるなどと気が大きくなる。

2.睡眠欲求の減少: 眠らなくてもいつも元気なまま過ごせる。

3.多弁: 一日中しゃべりまくったり、手当たり次第に色々な人に電話をかけまくる。

4.観念奔逸: 次から次へ、アイデア(思考)が浮かんでくる。具体的には、文章の途中で、次々と話が飛ぶことなども含まれる。

5.注意散漫: 気が散って一つのことに集中できず、落ち着きがなくなる。

6.活動の増加: 仕事などの活動が増加し、よく動く。これは破壊的な逸脱行動にも発展しうる。

7.快楽的活動に熱中: クレジットカードやお金を使いまくって旅行や買物をする、逸脱行動に出る。


 みんな大好き、ウィキペディアから抜粋


Ghost

(へー、躁うつ病の事を双極性障害って言うんだー。ってかボクも躁うつ病やん(/・ω・)/)


 たしかに当時の僕も多弁になったり、アイディアがわいて止まらなかったり(ま、汚言症の影響で大体下ネタなんだけど(笑))、他にも沢山当てはまる節はありました。

 多分、絵師Bも同じような症状を持っていて、それがボクよりも少々攻撃的な方向に向かってしまうんだろうなぁ、と思い、様子をみる事にしました。

 僕らの事が嫌なら、無理に一緒に活動しなくても良いわけですし(/・ω・)/


 次の週末のこと。

 普通に某駅前にやって来た絵師B。

 mixiでのブチ切れていた様子は微塵もなく、(あれれー、あのブチギレてたのは僕らに対してじゃなかったのかな?)と思わせるくらいに朗らかで、楽し気でした。


 そして夜になると、mixi上でブチギレてる言葉を連発。

 そんな彼女にちょっと恐怖を覚えたものの、当時の僕は性善説を妄信していたアホの子です。いずれ心が落ち着いたらネット上で罵詈雑言を吐き出すこともなくなるだろう、程度に考えていました。

 まぁ、それが完全に僕の考えの甘いところだったのですが、本格的に絵師Bが暴走し、止まらなくなるのはまだ先のお話し。


 さて、今回のエピソードはここまで。

 次回も路上で遭遇した自称・手相占い師芸人をご紹介。

 絡んだ期間はかなり短い時間なのですが(というか超強者(笑))濃厚なキャラクターだったので、彼一人のために数エピソード使おうと思います(/・ω・)/


 to be continued(/・ω・)/

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