第17話 小津映画の役者さんたち

また「秋刀魚の味」を観た。


何とも言えない美術品のような映画。


岩下志麻さんも綺麗だし、登場する人物皆がすごく魅力的で、何度観ても愛着は増すばかり。


それにしても、これは19歳の時、小津安二郎監督の映画を見まくっていた頃から感じていたことだが、小津映画に登場する女優さんたちって、なんであんなに綺麗なんだろう。


「秋刀魚の味」では、岡田茉莉子さんや岸田今日子さんも本当に魅力的で、私は大好きである。


勿論男優人もいい。特に中井貴一さんのお父さん。今名前をド忘れしたけど、あっ、思い出した。佐田啓二。それに「七人の侍」で、薪を割るところが印象深い加東大介。すごくいい味を出している。


そして「秋日和」の司葉子さんや、「浮草」の若尾文子さんも本当に綺麗だ。何でだろ。


これは単に撮り方の問題だけとはどうしても思えないのだ。

メイクやライティングだけで、そこまで美しさが出るとも思えない。


「映画の旅」に書いたが、18の時アルバイトしていた肉売り場に若尾文子さんがよくきてくださっていた。

今なら言っちゃうだろうな。

「浮草」本当に良かったですって。

「お綺麗ですね」などと分かりきったこと言っても仕方ないし。


それと「秋刀魚の味」を観たからまたくどく書きたいのだが、あのローアングルで、全くカメラを動かさずに完璧な構図で撮る手法、よく小津監督は確立されたものだと思う。


カメラというものは、どうしたって動かしたくなるだろう。横にパンしたり、ズームしたり、上下させたり、小津監督だってきっととても動かしたかったに違いない。


それをあえて動かさないで、完璧な写真のような画面を作り続けた。

すごいと思います。


それにしても正直な話、私が歳をとったのか、今の女優さんたちより、小津映画の女優さんたちの方が私は綺麗に見える。


そして付け加えるなら、今の女優さんたちを見る時、どうしてもセックスアピールみたいなものも同時に感じてしまうが、小津作品の女優さんには、少年が恋するように、純粋な美しさ、セックスアピールをあまり感じない清楚な美しさが印象的なのだ。


やっぱり、私が歳をとって古い人間になったのだろう。


小津作品に登場する人々が本当に愛おしいのである。

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