ある日死んだらDC(童心中学生)に逆戻りしてた?

よほら・うがや

はじまり:DC時代に逆送

第1話 死んだらDCに戻ってた

それは、40歳代半ばだったと思う。

僕は、会社勤めで、妻がいて、子供が2人いた。ごく普通の人生を過ごしていた。

しかし。

原因は分からないが、ある日、死んだ。


ふつう、自分が死んだことを自分が知ることはない。死ぬ瞬間を認識した瞬間には、死んでいるからだ。

それなのになぜ自分が死んだことを知っているかというと、教えられたからだ。


ふと気づくと、何もない空間に僕は漂っていて、上のほうから声がした。

「ケイタくん、きみは、死にました」

「あ、そうですか」

僕は、そっけなく反応した。実感が湧かなかったからだ。

「何か、心残りはありますか?」

人生、誰しも後悔の1つや2つはある。僕はその後悔の内容を思い出すと

「あるといえば、あります」

と答えた。

すると声は

「それじゃ、いまからきみを、中学生時代に送ります」

と言った。

次の瞬間、僕は、気を失った。


「おい、ケイタ。おい、ケイタ」

僕は、聞き覚えのある男子の声と、肩を揺り動かされる振動で、目が覚めた。

「なんだよー?うるせえー」

僕が大きな声を出し、目を開くと、とたんに

「こらあー?てめえー?うるせえとはなんだ?このやろ!廊下に立っとけ!」

とこれも聞き覚えのあるアラフィフのおばさんの声で、ひどく叱りつけられた。

見ると、僕が中2の時のクラス担任の国語教師だった。

周りを見ると、教室だ。そしてなんとも懐かしい顔、そして見たくもない顔たちが、隣りに、前に、後ろに、あちらに…。

僕は、まだ完全に目が覚めていず、しょうがないという感じで惰性で立ち上がり、廊下に出ていこうとして、ふと気づいた。

「え?廊下に立っとけ?それ、いつの時代だ?それ、生徒の学習権を奪ってるんだ、体罰だぞ?教育委員会に言いつけてやらあ!」

僕は、アラフィフ先生に対し、叫んだ。

ところが先生は、顔を真っ赤にして怒りまくり、出席簿の角で僕の頭をぐわーん!と殴りつけてきやがった。

「わあああー?いてて!先生、暴力反対!」

僕は叫んだが、先生は

「てめえ、教師に向かってなんて態度だ?親、呼び出し!」

と言って、僕の背中を押し、僕は教室から追い出された。


僕は、わけがわからず、廊下に出ると、ズボンのポケットを探ろうと手を伸ばしたが。あれ?スマホがない?

見ると、僕は、出身中学の詰めえりの制服とズボンを着ていた。廊下の鏡に映る僕の姿は、40歳代のそれではなく、中学2年生の4月頃の僕だった。

『あ』

ここで、僕は、自分が死んだことと、天の声の主によって中学生時代に送られたことを思い出した。

『ということは、僕は、若返って過去に戻ったのか?確かに、中学生時代については、後悔が何個かある…いや、何個どころじゃない、無数にある。ひょっとして、人生をもう1度やり直す機会を与えてくれたのかな?』

僕は、状況がいまいちつかめず、とりあえず、過去に戻されたという認識をした。

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