看守長の寝言

囚人諸君しゅうじんしょくん 起きたまえ


とっくに目覚めざめの時間だぞ


いまはすでに朝なのだ


いや つねに朝なのだ


わたしが朝だと言ったなら


それはもはや朝なのだ


たとえ諸君の精神が


夜の中だとしてもだぞ


ほら 雑巾ぞうきんを手に取って


その鉄格子てつごうしをきれいにせよ


一本たりとも残さずだ


わが作りし監獄かんごく


美しくなければならないのだ


システムとはそういうものなのだ


おしなべてそういうものなのだ


諸君はそれぞれ柱である


監獄を支える柱である


柱が狂えばままならない


支えることはままならない


支えよ 支えよ


金色こんじきかがや見張みはだい


支えよ 支えよ


うまくできたらごほうびに


きん子牛こうしのひとかけくらい


諸君らにもわけてやる


これは約束ではない


守る義務などあるはずもない


なぜなら諸君は囚人で


わたしは看守かんしゅであるからだ


このシステムにある以上


わたしが神であるからだ

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