8

一階へ着くと両親が満面の笑みを浮かべてこっちを見てくる。

「卒業おめでとう。」

「3年間お疲れ様。」

「就職頑張れよ。」

等など声を掛けてくるが全て無視し私はキッチンの包丁を一つ手に取った。

「「?」」

2人とも理解できないのかこちらを凝視してくる。

その眼、嫌いだな。

そう感じ、僕は父の腹に包丁を突き立てる。

「ゴフッ……!?」

父はとても驚いたのか後ろに2、3歩下がって尻もちを着いた。

「きゃぁああああああああああああ!!!」

母は甲高い悲鳴を上げ父へ駆け寄った。

「パパ!パパ!!しっかりして!!」

半泣きで父へ呼びかける。

父は意識があるようで口の端から血を流しながら僕を見てくる。

「…ハル。」

父が僕の名前を呼ぶ。僕は応えない。

「なんで…。」

母がゆらりと立ち上がった。

「なんで…刺したの?貴女を育てたのは私達なのに、その両親を刺すとは何事なの!!」

そう叫び僕へ近づき………パンッ!

頬を叩いてきた。

じんわりと熱い頬を撫で母を見る。

涙を貯めている眼で僕を見てくる。その瞳の奥で何かが燃えている感じがする。

あぁ、本当に汚い。

「……なんでだと思う?」

僕は挑発するように笑みを零しながら聞く。

「分からない。」

母は見下ろすように答える。

「そっか、そうだね、そうだったね。」

僕は爆笑する。

笑う、嗤う、2人を嘲笑う。

「何がおかしいの!」

母は僕の胸ぐらを掴み揺らす。

「だって可笑しいんだもの!ねぇ、お母さんお父さん。僕ね、ずっっっと我慢してきたんだよ?」

僕は掴まれたまま見据える。

「母さん達さ、昔言ったよね。

『神様なんて居ないよ』って。覚えてる?」

母と父は目を見開く。

「何を言ってるの!!!」

パンッとまた僕の頬を叩く。

「信者たるもの神様が居ないなんて口が裂けても言ってはいけないでしょ!?なんでそんな事言うの!!」

母は涙を流しながら軽蔑の目で僕を観てくる。

「……やっぱり、覚えてないのか。」

僕は哀しくなって涙を一筋零す。

「小さい頃、教会学校でロザリオを作ったんだ。初めて作ってグチャグチャな形だったけど一生懸命作ったの。神様のために。そして出来上がった物をすぐあなた達に見せて、『これでカミサマにおちかづきになれたかな?カミサマ、よろこんでくれるかな!』って聞いたの。そしたら2人とも嘲笑って『何言ってるの?この世に神様なんて居ないよ』って言ったの!」

僕は悲鳴に近い声で話す。

「意味が分からなかった!理解したくもなかった!だって大好きな2人がそんなこと言うんだもの!言ってはいけない言葉を嘲笑いながら話すんだもの……!!その日からあなた達2人は僕にとって悪魔そのものに見えてるんだよ。」

いつの間にか僕の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

母はそんな僕を見て恐怖を感じたようで手を離し、父の側へ駆け寄った。

「ねぇ、僕が怖いの?」

僕はゆっくり2人へ歩いてゆく。

「来ないで!」

女は叫ぶ。

「そんなことで親を殺すの!?頭おかしいんじゃない!!お金なら全部持ってっていいから…殺さないで………。」

女は父を抱き締め肩を震わせている。

「父さんは?」

僕は女が抱き締め、血をどくどくと流している父を見つめる。

「父さんは何か言いたいこととかないの?」

父はゆっくり口を動かし言葉を絞り出す。

「…ゲホッ……お前は、娘なんかじゃ…ガハッ…ないゲホゴホッ!」

男は心底軽蔑するような眼で僕を見てくる。

「そっか…。まぁ、当たり前だよね。でもね、僕はお前らの事親だと思ってたのは小学生の時までだったよ。」

そう言って僕は母だった女を滅多刺しにした。

甲高い悲鳴に押されつつ背中を刺し、心臓を刺すため胸を刺し、腹を割った。悲鳴は小さくなり僕は鼻歌を歌いながら腹の中を探り、中から腸、大腸や小腸かな?それらを取り出しまじまじと見つめる。女は既に死んだのか体はピクピクと痙攣している。

(思ったよりグロいなぁ)僕は腹を掻き混ぜ、胃と思われる内臓を取り出して二つに割り、胃液を見る。

黄色っぽい色の胃液を女の腕に塗ってみる。

特に変化はない。この物体に興味を無くし、男を見つめる。

男は恐怖に腰を抜かしつつも僕をじっと見つめ返してくる。

「ゴホッ……ママ…」

男は涙を流し物体を見る。

「殺したいなら…殺せばいい……。」

男は諦めたのかそう言った。

「じゃ、さよなら。」

僕は包丁を高くあげる。

「……すぐそっちへ行くよ。」

グシャッ。

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