第15話 魔獣狩り行こうぜ!②



父様の説明としてはこうだ。


1つ目、学院に入る前にある程度経験を積ませ、位階を上げさせたい。

これは、どこの貴族も同じようで、8歳の秋の学院入学前に魔獣狩りを経験させるらしい。そうしないと、学院で初めて魔獣狩りをする際に慣れておらず、ケガをする場合が多いからだ。好きなだけ護衛がつけられるうちに魔獣と戦うことに慣れさせておくのが目的だという。また位階は、学院入学までに”2”に上げるのが目標らしい。


2つ目、魔法と剣がどの程度まで成長したのかを実戦(魔獣との戦い)で見極めるため。

今までは訓練場で的に向かって魔法を打ったり、ガレインとの対人の模擬戦闘しかしていない。それを魔獣狩りにて確かめるという。


「ケントはすでに5属性の上級魔法、聖属性の中級魔法まで使えるようになっている。それに精霊獣に至っては重力・転移魔法も使える。魔法では実戦以外にすることがない。そこへイルシアが丁度よくこの話を持ってきたというわけだ。」


父様以外の家族が一斉にこっちを向いた。

「「「「「「上級魔法が使える!!!???」」」」」」

6人がハもった。


その後、上級魔法が使えるなら...と、渋々母様とエファ姉様は納得した。



夕食の後、ボクはエファ姉様に拉致られた。

”今日は一緒に寝るも~ん!”と言って抱き上げられてしまう。

さっきの怖い姉様を見たボクは黙って従うしかなかった。


「あの、エファ姉様に聞きたいんですけど...」

むりやりエファ姉様のベッドに押し込められたボクは抱き枕にされながら話していた。

「な~に?」

「姉様の位階って今は何ですか?」

そう聞くと姉様はニヤリと笑う。

「フフフ、私はね、位階9よ!」

「おお!さすがSランク!どうしたらそんなに上がったんですか?」

「学院時代にフェルといろんな魔獣を狩ってたら上がってたわ~。どんな魔獣倒したか、聞きたい?」

「どんなの倒したんですか!?聞きたいです!」


「えーと、例えばアヴァロンタートルの群れとか。」

ん?

※アヴァロンタートルはアヴァロン山脈に生息する、めっちゃ硬くて魔法への耐性が高い魔獣で、冒険者の内で絶対行きたくない依頼の一つに必ず挙がる。


「あとはぁ、そうだ!リヴァイアサンとか!」

は?

※リヴァイアサンは海に生息する、最大20メートルになる大型の竜種。海流を操るバケモン。


「あ、それとティルファニアの人に頼まれてグランドエルダードラゴンもヤったわね!」

へ、へえ?

※グランドエルダードラゴンは、ティルファニア北部に現れた超大型の竜種。背中は森で覆われるくらいデッカイ。死体を解体し、詳しく調べた結果、6千年生きた古龍だと発覚。ヤバいやつ。


「でも一番強かったのは、あれね。アンデッド化したトルネードドラゴン!なかなか骨があってしぶとかったわぁ。骨しかなかったけどね、アハハハハ!!」

や、やっべえ。この人やっべえわ。

※アンデッド化したトルネードドラゴンはケントの生まれる直前くらいに中央大陸に飛来したやつ。嵐を纏い、大陸中を飛び回り、甚大な被害を起こした。まさに動く天災。クソヤベえ。結局、アヴァロン山脈にて当時16歳のエファちゃんにぶちのめされる。


「す、すごいですね...。強すぎませんか...?」

「ふふん、でしょ~♡もっと褒めて♡あ、ちょっと...なんで離れようとするの?こら待ちなさい。あん、もう!逃げないの!むん!よし、捕まえた♡おとなしく抱き枕になりなさ~い♡.....」






そして3日後、魔獣狩りに行く日がやってきた。

「ケント、準備はいい?」

赤い装備に身を包んだイルシア姉様が聞いてくる。

ボクはマルク兄様のおさがりの皮鎧を装備し、腰の両側にアイリ姉様とマルク兄様にもらった短剣を提げる。

そしてエルヴァ兄様にもらったマントを付け、準備完了!

もちろん頭の上にシルフィも乗っている。


「はい!準備できました!」

「僕もいつでもいいよ」

マルク兄様と精霊獣のスイも準備できたみたいだ。


「じゃあまずはギルドに行こー!」

今回のメンバーはイルシア姉様、マルク兄様、ボク、近衛騎士団の騎士2人だ。

帝都付近の魔獣の情報を調べるため、そしてボクの冒険者登録を済ませるためにギルドへと行くことになった。


正門から出てしばらく行くと、半円形の建物が見えてくる。

「おお~、ここがギルドか~」

「ケントは初めてだね~。よーし、パッと済ませて狩りに行くよ~」


ボクたちはギルドの開ききった入り口から中に入る。

中にいた人たちの視線が一斉にこっちを向き、ざわめきが大きくなった。

(おい、イルシア様だ!!)(かわええなぁ~!ホンマ目の保養や)

(ちょっと、ケント殿下もいらっしゃるじゃない!)(生ケント様ヤバい、ハアハア)


姉様についていき、魔物及び迷宮対策部門、通称冒険者部門の方へ歩いていくと、早速受付の人がやってきた。


「皆さま、ようこそ帝国ギルドへ。本日はどのような御用でしょうか」

「帝都付近の弱い魔獣の出現状況を教えてほしいの。それとケントの冒険者登録してほしくて。」

「かしこまりました。ではこちらの応接室にどうぞ。すぐに書類等をご用意いたしますので。」

受付嬢はボクたちを応接室に案内すると、部屋から出ていった。

ソファにイルシア姉様とマルク兄様が並んで座り、ボクはイルシア姉様の膝の上。

なんで?

ちなみにシルフィはソファの背に止まった。


少し待つとさっきの受付嬢と、もう一人、ガタイのいいオジサンが入ってきた。

「お待たせいたしました。」

「部門長のロイドでございます。ケント殿下とは初めてお会いしますな。よろしくお願いいたします。」

「うん、よろしく」


受付嬢が書類を並べながら話し始めた。

「こちらの用紙に必要事項をご記入ください。代筆でも構いません。」

「ケント、私が書いてあげようか?」

「いえ、自分で書きます!」

イルシア姉様の提案は気持ちだけもらっておく。


えーと、名前・性別・種族・属性・魔力量...魔力量ってどうやって測るんだ?

「魔力量はこちらの機器に手を当てていただければ。」

受付嬢が箱のような機械を目の前に置いた。

手を当てると”シューン”という音と共に少し魔力が抜ける感じがする。

「えっと、魔力量は...ええ!?ランク10以上!?」

「なんだと!?いまだ6歳の子供がランク10を超している!?」

すごく驚いてるみたいだけど...基準が分からん。

「すごいね!ランク10だなんて...。」

「僕たちの中だと最初の計測で超えたのはエファ姉様だけじゃない?」

ああ、それはすごいね。たぶん。


書類の魔力量のところには”ランク10以上”と記載される。

最後に精霊獣に関する項目を記入し、書類を受付嬢に渡した。

「えーと、ふむふむ。...え!?無属性!?」

「無属性だと!?たしか”虹色”は30年ぶりくらいではないか!?」

あー、そうだ。皆ボクは聖属性しか持ってないと思ってるんだっけ?

それにしてもこの人たちずっと驚いてるなあ。


「ねえ、驚いてないでさっさと登録してよ。私とケントの貴重な時間をつぶさないでほしいんだけど?」

うお、イルシア姉様の機嫌が悪くなってる...。

貴重な時間...イルシア姉様はあと2年たたないうちに嫁ぐことになっている。それで今のうちにボクと思い出を作りたいと言っていた。


その少しいらだった声に、受付嬢は慌ててカードのようなものを出した。

「申し訳ございません。それではケント殿下はAランク以上の資格保有者3人以上の推薦と、一定以上の魔力量がありましたので、下から2番目のDランクでの登録となります。このカードに魔力を通していただいてよろしいですか?」

推薦って...イルシア姉様と、エファ姉様と、エルヴァ兄様かな?マルク兄様は確かBランクだったし。


ボクは言われるがままに”D”を表す文字が刻印されたカードに魔力を通した。

するとカードに名前と精霊獣の名前が表示される。

「これで登録は終わりです。えー。帝都周辺の魔獣の情報でしたね。最近は北門方面にホーンピッグ、西門方面にはゴブリンとホーンピッグ、南門方面には黒兎ですね。」

「なるほど。マルク、解体を教えるなら黒兎がいいかな?」

「うん。黒兎は大体5匹くらいの群れでいるしちょうどいいよ。」


そういうわけでボクたちは南門方面に広がる草原地帯へ行くことになった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※マーク以下の文を書いたのは作者です。本文には関係ありません。

無属性の人はたまにいます。聖属性ほど珍しくはありません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る