Disc.03 『小さなヘッドホンとコンピレーションとUL』

Disc.03 - tr.01『小さなヘッドホンとコンピレーションとUL』

 響一郎は床に突っ伏して小刻みに震えている。

 それを黙って見下ろすヴィーと三沙織みさをの眼は冷たい。

 ソニア、真紅、日々希ひびきの3人は何が起こったのか理解出来ないかのように沈黙している。

 そして、それを見ていた私は――


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「改めて全員が揃ったところで、今後の方針を考えようと思う」

 真紅が部員達を見回して宣言する。

「そうねぇ~~期待の新人くんも入ったことだし~~」

「そうですわ!! 今年こそ!! 生徒会(主に国楠)がグゥの音も出ない程の素晴らしい活動を!!」

「そんなに肩肘張ってやんなくてもさぁ~~」

「それな。意識高い系ウザwww」

 やる気の無さげな三沙織と茶化すヴィーをギヌロッ!!とばかりに睨み付けてソニアは嘆息する。

「――あぁ嘆かわしい。花も実もあるJKならばこそ、今咲かせずしていつ、咲かせると言うの?」

「部長もなーんかいちいち芝居がかってるつーかさー、肩凝らね?」

「あれは仕様だからしょうがないw」

貴女あなた方っ!! 陰口は陰で言うモノよっ!!」

 ビシィっっ!!とばかりに2人を指差す。

「そーゆーとこだぞ、ソニアw」

「きゃぁ~部長こわい~~(棒)」

 本題そっちのけでぎゃいぎゃいと論戦が始まってしまった。


「……あの~、日々希先輩、お二人っていつもあんな感じなんですか?」

「うふふ~~ヴィーちゃんはソニアちゃんと幼馴染みさんだからね~~アレは殆ど姉妹喧嘩みたいなものよ~~」

「コロはコロでそれに便乗して巫山戯ているって訳か」

「雨音くん、その呼び方、変える気無いんだ……?」

「あんな奴らはポチとコロで充分だねw」

「2人とも子犬っぽいしね~~可愛らしくて良いわね~~」

「中身はとてもじゃないが可愛らしいなんてタマじゃありませんがねw」


 そんな中。

「……おーい……みんなー……議題を進めるぞー……(´・ω・`)」

 哀れ、独り放置される真紅であった。


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「――それで、だ」

 咳払いをして話を軌道修正する真紅。

 先程まで騒がしかった2人がおとなしいのは、その真紅とソニアに一発ずつ喰らったからであろう。頭頂のたんこぶが痛々しいw

「先ず整理しておくが、昨年までの活動」

「放送部と演劇部関係の分ね~~」

「あぁ。各種効果音の作成及び提供、だな」

「そこの2人はやってませんでしたけどね」

 ソニアがヴィーと三沙織をジト眼で見る。相当根に持っているようだ。

「あとは鹿苑ろくおん祭の各種競技や発表の録音だな」

「そっちもやってませんでしたわね」

 ソニアが以下略。この2年生コンビ、幽霊部員の名に恥じぬ逃げっぷりではある。いや少しは恥じろと言いたいが。

「だってさー、ンなお堅いのは先輩方だけでいいっしょや?」

「ミサよ、いつから道民になったしw でもボクも同意」


「そもそも、来年は貴女あなた方が3年生ですのよ? 今からこんなことでどうしますの?」

「大丈夫、だいじょーぶっ! だって――」

「そうそう。期待の新人とやらが――」

 2人に視線を向けられた真貴と響一郎。響一郎は泰然自若としているが、真貴は――

「――へ? い、いえいえ、私なんて、ド素人もいいところでっ!」

 わたわたしている。それを見た響一郎はニヤリと悪い笑みを漏らして、

「そうそう。かてて加えてド天然ときたもんだw」

「――なっ! そ、それを言ったら雨音くんだって天然毒舌のナチュラル・ボーン・タラシじゃん!!」

「失礼な。こんなに素直で正直で清廉潔白な奴もそうそう居ないぞ?」

「だ、だからっ! そーいうとこ! 無自覚だからタチ悪いんだよー!」

「……ほうほう、これはこれは♪」

「ミサ隊員、どうしたかね?」

「ご覧下さい、ヴィー隊長! マッキーもあー見えてなかなか……隅に置けませんなー♪」

「なるほど。これはイジり甲斐があるなw」


「……あ・な・た・が・た~~(#゚Д゚)」

「お前たち……(-_-#」

 堪忍袋の緒が切れる5秒前、略してKK5状態のソニアと真紅の威圧に一転、静かになる電音部であった。



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「でもさぁ~実際のとこ」

 三沙織が異議を唱える。

「いきなり何をやるか考えろ、なんて言われたって、ンな急に思いつくワケ無いっしょや?」

「そもそも、ボクらはここの機材がどんなモノかも知らねーしなw」

 後を受けてヴィーも賛意を表す。

「それは、そもそも貴女あなた方が年中サボってらっしゃるからでしょう?」 

「んじゃ逆に訊くが、ソニアは解ってんのかよ、使い途とか?」

 珍しく回答に詰まるソニア。彼女ら3年生組とて機材に関する知識は幽霊部員の2年生組と大差はないのだから無理もない。

「一応ではあるが、基本の基本レベルのことは先日一通りやったな」と真紅。

「それならこいつらもそうですよ。こないだ同じようにテープ1本録音してますからね」

「「「えっ!?」」」

 これには3年生全員が驚いている。まぁ、今までが今までだけにねぇ。


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「ま、まぁ、そういう事なら話は早い。復習も兼ねてテープ1本録音してみるか?」

「どうせならコンピレーションにしますか? いにしえの時代に倣って」

「コンピレーション?」頭に"?"が浮かんでいる様子の真貴。

「昔はマイベストテープなんて言い方もしてたらしいが、要はバラバラの曲を寄せ集めて1本に録音するやり方だな」

「単に寄せ集めただけでは意味がありませんでしょう?」

「何かテーマみたいな~~? アーティストとか作曲者とか~~?」

「そっスね。何か1本、筋を通した方が聴くときも厭きませんからね」

「はーい、お兄ちゃん」挙手するヴィー。

「その呼び方やめい! …で、何かあるのか?」

「照れるな照れるなwww ボクは作者縛りで逝きたいdeath!」

 若干、発音に違和感があるような気もしたが、先を促す響一郎。

「ほう。で、誰よ? 阿久悠とか平尾昌晃とか?」

「そっちも捨て難いが……ほんの今し方、謎の怪電波がボクに告げたのだ。伊藤アキラと小林亜星で逝こう、と」

「あぁ、つい最近逝去された……」

「確か有名な歌もありましたわね」

「いいんじゃない~~」

 取り敢えず、全員賛成のようだ。尤も、真貴と三沙織は知らないらしく「それ誰?」と首を捻っているが。


「……ところで、ポチよ。その怪電波ってもしや作者の……」

「言わぬが花、と言うだろう後輩よ。口の軽い輩は早死にするぞ、と作者も言ってたぞ」


[L] ||||||||||||||||||||||||||

-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB

[R] |||||||||||||||||||||||


 作者は怪電波とは一切無関係です。多分無関係だと思う。無関係じゃないかな。ま、チョット覚悟はしておけ(^^;


 去る2021年5月15日に逝去された伊藤アキラ先生、同30日に逝去された小林亜星先生に深い感謝と弔意を……。

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