file.5 文章完成

 文章構築。


 一人称視点である茜が読書を嗜んでいるところから、純文学寄りのメルヘンチックな描写を心掛けて仕組んでいく。



 短編として重要な伏線もいくらか。


〔伏線的設定や裏設定まとめ〕


・雪で足を滑らせてしまうという表現。

 ⇒恋人関係ではない限り私の心は一人であって、それを言葉にせず自分の心の内で踊っていてはきっと魔法に飲まれてしまうという暗示。本文中で雪は「白い宝石」としている。先輩に告白された後は、「もう転ぶ心配はない」。


・探しもの

 ⇒行ってきますの文句としては不自然であるが、これは茜が物語の世界で先輩への言葉を探していることを指している。ママには悟られないように咄嗟にそう言ったが嘘ではない。


・言葉を奪う男爵

 ⇒魔法をかけた男爵は煌びやかな椅子に座っている。「贅沢な者ほど無駄遣いをして飢餓を促進させる」という現代社会への風刺。別に言葉に限った話ではない。


・「言の葉を擦る」

 ⇒茜が用いる表現。「刷る」との掛詞かけことば。さらに擦り合わせることで冬の寒さを二人の時間で温めようとする茜の気持ちも含まれる。それに加え、とげとげしい槍になりうる言葉を擦って角を丸くするという効果もある。


・椿色のマフラー

 ⇒かんなづき作品では定番の花言葉のくだり。主人公の茜の花言葉は「私を思って」「媚び」という欲しがりな花言葉であるのに対し、赤い椿の花言葉は「謙虚な美徳」である。先輩への気持ちが愛情として確立していない中で、彼女が導き出した選りすぐりの贈り物だと言える。


・蛍の栞

「あまひこよ 

 雲のまがきにことづてん

 恋のほたるは燃えはてぬべし」(夫木和歌抄)

 

 から引用。

 恋焦がれる思いを蛍の光合わせる表現。季節外れの冬の蛍。白い栞。


 ⇒ちなみに白の椿の花言葉は「至上の愛らしさ」、ピンク色の椿は「控えめな愛」であるが、ここまで合わせて考察する読者はおそらくカクヨムにはいない。


・栞を挟む

 ⇒恋が実り、ファーストキスを交わしていることを指す表現。先輩のプレゼントにかかっている。さらには二人がこれからいろんな魔法で埋め尽くすであろう二人だけの魔法書のページに「恋人」としての区切りをつけての意味。どれだけ「チューしてる」ことを間接的に表すか競争。


 

 かんなづき作品ってみんなキスしすぎじゃない?

 そろそろキス描写の表現リソース無くなりそうなんですが……。



◆言の葉の庭 [公開作品]

https://kakuyomu.jp/works/1177354055394423952 

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