ハピネス

疫病えきびょうあけて、――即座! リモート廃止のバカ社長。


ちゃんと、会議をしような。これからはちゃんと会議をしよう。

昔みたいに、全支部で楽しく、顔を合わせて、丸一日、ありのままで。


(a)調和しながら信頼し合うということ

(b)共有される人材育成の確かな輝き

(c)居場所としての友愛

(d)やりがいの再認識。循環する熱意。感謝され感動する枠組み

(e)好ましく愛されるための社会貢献こうけん

(f)商工会と宗教改革の類似性について

(g)波状攻撃。勝利の表彰式。我々の夜明け


残業でいい、残業がいい。むしろそれでいい。

このあとはもちろん、楽しい飲み会だ。

会議の疲れは、そうして癒されるべきなんだ。

金はぜんぶ会社で持つ。二次会代も――タクシー代も――


こんなに良い会社ほかにない、とまでは言わない(おい新人! 私語をつつしめ!)

が、会社役員のキモチ、おもんぱかってはくれまいか(やあ専務っ! ありがとう!)

ハハハ、飲みニケーションは悦びだ(そうです!)

ハハハ、飲みニケーションは悦びだ(そうなんです!)


――魂を裸にしろ――

――魂をハダカにしろ――

――タマシイをハダカにしろ――


「とりあえず〝生〟でお願い申し上げます」

「この砂肝――こりこりして美味いな」

「飲み干してしまえよ管理職」

人間じんかんいたるところ青山せいざんあり」

「新人は歌う。伝統なんだよこれは」

「きみのおしゃくは、少々、説明的にすぎるね」

「主任、最近自己啓発してるかい?」

「追加でオーダーしちゃっていいっすかあ?」

「総務課の岡田、あれいつか殺されるぜ」

「事務員の腰つきはわが社の華だな」

「ちょっとトイレで吐いてきますね」

「ビジョン。そう、ビジョンだよビジョン」

「きみ名前は? じゃなくってぇ下の名前だよぅ」

「営業成績は魂の鼓動だ。ウィスキー、ニートで五杯」

「じぶん!! こんなに楽しいの――初めてですよ社長!!」

しょうんとする者はまず馬をよ」

「わが社の社訓は新時代の哲学なんです」

「社内恋愛ってフィクションだと思ってた」

「セクハラセクハラって言うけどキミねぇ」

「セクシーの間違いじゃないのかねそれ」

「弱り目に祟り目。あの会社は潰してしまおう」

「リアルな充実感には、新鮮な血肉が必要なんだ」

「目抜き通りにはネオンだけが息衝いきづいている」

「光の粒子が運命論を打ち破るようにだよ」

「バイトの金子くんね、彼、もういないから」

「そりゃあ、商工会の聖遺物せいいぶつけがしたとなればね」

「係長はいつも礼儀正しく部下たちをいたぶるんだよ」

「鳥頭のあの野郎。鳥頭のあの野郎。鳥頭のあの野郎」

諸君しょくん。これは勝利の美酒だ。大いに酔おうじゃないか」

「凄いこのワイン――宝石みたいな味がしますよ」

「……ねぇ知ってる? 薬指の長い人ってエッチなんだって」

「白雪姫と美女と野獣。何故かいつもごっちゃになるんだ」

「このカクテル……大人の味ですね。あたまがしびれます」

「ぼく、お酒は飲まないんですよ。いえ、下戸げこではないです」

「生き方ですね。麻薬カルテルがぼくを変えたんですよ」

「出世して感動して。出世して感動して。出世して感動して」

「たまたまだろ。たまたまだよ。たまたまに決まってる」

「フルーティだ。すごいフルーティだよこのメロン」

「同期の平田を拷問ごうもんしたい。何が目的なんだってきたい」

「座右の銘ってやつはね、社会人のサブシステムなんだ」

「油は売らない。油は売らない。足でしゃべる。足でしゃべる」

「野球でたとえられても、私には、意味不明・理解不能です」

「お冷おかわりしてください。今すぐおかわりしてください」

「底意地の悪い舌先が、いつまでも小言をこねくり回す」

日和見ひよりみ菌じゃなく……善玉菌を目指そうな?」

「承知しました! ヨーグルトカクテルイッキ飲みします!」

「エイエイオー。エイエイオー。団結の心霊写真」

「イーエスピー。イーエスピー。二次会の団結力」

「さあ、決を採ろう。一本締めで融合しよう。――ハピネス――!」

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