しんがりトマト

 トマトを投げられたら、トマトを投げ返そう。


 土をたがやして、種をいて、水をあげて、肥料ひりょうもあげて、虫を追い払って、その実を収穫しゅうかくしよう。


 だけどその頃には投げた相手はもう、いない。


 それならトマトを食べよう。太陽の味がする、はじけるようなトマトに思いっ切りかじり付こう。


 世の中は所詮しょせん、トマトの投げ合いっこ。


 世の中はかろうじて、トマトの投げ合いっこ。


 愛されトマトに、にくまれトマト。


 上から読んでも下から読んでも、トマト。


 あの味が好き。あの食感しょっかんが大嫌い。


 まるじゃなくて、ちょっと楕円だえん。まるで惑星わくせいみたい。


 ああ、冥王星めいおうせいのやるせなさ。はぐれものから筆頭ひっとうへ。


 だけど冥王星は何も変わらない。変わらず楕円だえんに、少しななめにまわってる。


 そりゃ、ほかと比べたらななめだね。宇宙うちゅうに上も下もないのにさ。


 ああ、冥王星めいおうせいのやるせなさ。


 世の中はいつだってトマトの投げ合いっこ。

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