第7話 イメチェン 

 海夜の定期券真っ二つ事件?からしばらくした頃のこと。


 俺の通っている大学は高校と共同利用しているところがいくつかある。


 例えばグラウンド。

 高校の体育で使われていたり。夜や高校の休みの土日祝日とかは、大学のサークルとかが使ったりしている。


 他には図書館も共同利用だ。かなり大きな建物がちょうど大学と高校の間にあるのだが。それが図書館だ。図書館の中にある本を全部把握できている人などいないだろう。というくらいの本の数だ。だから課題やレポートの時は大変便利なのだがな。まあそもそも本を探すのもかなり大変だ。

 検索の機械とかで場所が出てくるんだが。なんて言うんだ?アルファベットと数字?とかで記号?みたいな感じで出てくるんだが。大体の場所に着いてからが大変なんだよな。って、図書館はこれくらいで、あとは、、、。


 そうそう売店と食堂もである。

 売店と食堂は両方大学の方にあるが売店にはよく高校生が昼休みや放課後に利用している。この大学と高校の周りには何もないからな。食堂の方は普段の昼はあまり高校生は見ないが。テスト期間とかで高校生が帰る時間が早い時とかはちらほら見ることがある。


 ちなみに俺はいつも昼ご飯を食べるときは食堂は使わず。売店で何かを買ってだな。または大学来るときにコンビニとかスーパーで何か買って。という事がほとんどである。

 いや食堂は昼時になると毎日すごい人なのであそこに入ろうとは思わないからな。だから売店とか頼みとなっている。


 そして俺の昼休みの過ごし方は人のあまり来ない大学敷地内の1番奥にあるちょっとした広場みたいな場所に居る。そこはベンチなどもいくつかあるので、そこで1人ゆっくりするが基本だ。


なのだが。


 まさか1年と数か月利用していて誰からも昼に話しかけられるということがなかったのに。今日突然話しかけられるとは思ってもいなかった。


 ★


 今日のお昼はパンの気分だった。なので菓子パンやらを来るときにコンビニに寄って買ってきた。


 そしていつも利用しているベンチに座り1人ゆっくりお昼ご飯。

 ちなみに周りも同じ感じの人が集まるのか、1人や少人数の人がのんびり。各々の時間を楽しんでいた。多分食堂とか売店はすごい人だろうと思われる時間だが。ここはほぼ毎日平和。静かな場所だ。


 そしたらだ。


「あっ、先輩?」


 まず、そんな声が聞こえた気がした。はじめは気のせいだろう。ここで俺に話しかけてくる人はいない。誰か近くに居る人にだろう。とかそう思ったのだが。少ししてさらにはっきりと聞こえた。


「やっぱり。先輩ここでお昼ですか?」

「……へ?」


 気のせいではなかったので声の方を見ると。


「えっと、うん?あれ?誰?」


 ボブカット?言うんだっけかの、とにかく可愛らしい女の子が立っている。誰かに似ているような?

 いや、でも俺の知り合いに、こんな人いたか?そもそも大学では友人のいない俺にこんなかわいい子が話しかけてくるということはないだろ。誰かと間違ってる?詐欺か?

 あっ、確か今「先輩」って呼ばれたから。ということはこいつは後輩。後輩って。さらにありえないのだが……俺は後輩に接点ある奴はいない。やっぱり怪しいな。とかちょっと警戒したのだが。すぐに頭の中で訂正した。

 あれ?でもこの声は聞いたことあったような。ってな。そして今まで顔ばかり見ていたが。視線を落とすと高校の制服着てる。あっ、高校生って、知り合い居たわ。って、そもそも見たことある顔。誰かに似ているじゃなくて。この声。


「もしかして……海夜か?」


 俺が無駄に考えてから、そう言うと話しかけてきた女の子はちょっと顔を赤くした。って、何無駄な時間使ってるんだよ俺。

 いや、でも一瞬はマジで誰かわからなかったがな。


「……はい。変……ですかね?」


 言いながら自分の髪を触っている女の子。つまりのところ。俺の目の前にいて先ほど声をかけてきた後輩というのは、髪をバッサリと切った海夜だった。


 髪型に詳しくないから正しいかわからないが、今の海夜の髪型は先程も言ったが。ボブカットとかいうものだろう。個人的にはこんな感じ。肩にかからないくらいの長さをボブカットだろうと勝手に思っているのだが。あれ?セミロング?いうのか?まあ言い方。名前はいいか。

 とりあえず海夜は前は長い髪。ロングだったが。一気に短くなった。顎下というのか肩にはかからないくらいの長さになっていた。


 いやいや、これは変わり過ぎだろ。わからんわ。海夜といえば髪は長くて図書室に静かに居そうな子とか勝手に思っていたからな。


「えっと、いきなりどうしたんだ?」

「そのイメチェン……です。はい」


 ちょっと恥ずかしそうに海夜が再度自分の短くなった髪を触りながら答えた。


「また大胆に切ったな」

「変ですか?先輩?」

「いや。めっちゃ似合ってる。うん」

「そ、そうですか。そうですか……」


いやまあ。マジで誰か一瞬わからなかったがな。

それくらい印象が違う。っか、海夜は短い髪もかなり似合っていた。前のも良かったが。今もかなりよい。

 それになんか一気に雰囲気が明るくなったいうか。海夜の雰囲気がやわらかくなった?という感じだった。


「なんかあったか?」

「あったじゃないですか。最近いろいろ」

「あー、いろいろね」


 ありましたね。俺もちょっと関わったような。ってあれ?前からあったことでは?って、俺が何か言うことじゃないか。


「いろいろです。だからちょっと気分を。で、美容院行ってきました」

「なるほど」


 いろいろあった気はするがどれだろうか。と、考えていると、海夜は俺の座っていたベンチに1人分あけてとなりに座った。


「っか、珍しいな、高校生がこっちまで来るとか。俺は初めて見たな」

「たまたまです。たまたまこっちまで来てみたら。たまたま先輩がいました」

「たまたまね」


 何回たまたまと言った?まあ。いいか。


「その、学校だとなんか。みんな影で、コソコソわたしの噂しててなんか教室いるのも、で、散歩がてら来ました」

「?コソコソ?」


 またトラブルか?すぐに俺の頭には嫌な予感が。だが。


「あっ。そのいじめやらではなく。なんか私の変化?を見てなのか。その、なにがあったか?みたいなザワサワが。だから、お昼ご飯を食べたらすぐ出てきました」

「あー、なるほど。確かにめっちゃ変わったからな」


 いきなりバッサリはインパクトあるからな。


「そ、そうですかね?」

「ああ、前は優等生いうのか。大人しい雰囲気だったが。今は明るい感じだし。俺はかわいいと思うが?」

「かわ……」


 しまった。ちょっと口が滑った。というのか。はっきり言ってしまったのですぐに俺は言い訳をだったが。


「あっ、悪い。まあその気にするなよ」


 上手く言えなかった。


「……だ、大丈夫です。そっか、かわいい。か。うん」

 

 ちょっと海夜がにやけた?気もしたが。変に気にせず。しばらくイメチェンした海夜と話をしつつ。俺は昼ご飯のパンをかじる。

 そして海夜と話していると昼休みの時間は早かった。あっという間に過ぎて行った。


「あっ、そろそろ昼休みが終わるので戻ります」

「ああ、じゃまた」

「はい。お邪魔しました」


 海夜はそう言って高校へと戻っていく。っか、後ろ姿みてもわからんわ。別人だろ。あんなに髪型で変わるのか。見た目も雰囲気もと俺はそんなことを思いつつ海夜を見送ったのだった。


 って、俺も講義があるので、その後急いで移動した。


そして翌日のお昼休み。


「こんにちは。先輩」

「うん?海夜。どした今日も」

「まだ教室はこそこそされているので、居心地悪くて運動がてらここまで来ました」


 今日も晴れているから。または俺が毎日居ると海夜に思われたのか。昨日と同じところで昼ご飯を食べて、のんびりといたら海夜がやってきた。


「まだクラスは落ち着かないのか?」

「はい、ザワザワとなんか噂が……って感じですね」

「気にしなくてもいい気がするがな」

「ですが。なんかちょっと聞いていると、失恋したからやら。いじめやらやら、と。あまり聞いていて楽しくはないので」


 後半は当たりな気もするがな。


「海夜はクラスでどんな見られ方だったんだよ?」

「わからないです。あまり気にしてなかったので」

「そうか」

「はい。その普通に静かにがいいですから。目立つのは好きではないので、目立たないように普通にしているのですが」

「でも、目立つだろ前の姿も今の姿も」


 かわいいからな。目立たないわけがない。


「はい。なぜか。目立つというか。注目が集まりやすいのか。何もしてないんですが。困ります」


 海夜は多分ほとんどの人がかわいいという見た目なのだが。自分での評価はかなり低いのか 。見た目では目立たないわけがないのだが。

 ちなみに髪を切る前は美人さんというか。あれはあれでなかなか目立っていただろう。まあ余計なことは言わないがいいかと勝手に思いつつ。


「海夜の事知らない奴なら。って俺もあまりまだ知らないが。普通なら告白されたり。学生ライフ楽しんでそうに見えたがな。今はどんな生活してるか何となく知っているが」

「ないです。こ、告白は、その、えっと、されますが。全て断ります」

「なかなか。男泣かせ?」


 いいな。海夜。俺は何もないぞ?


「なっ、そんなつもりは、ただ、その静かにのんびりがいいので、そういうことは」

「まあ、わからなくもないが。っか、なら何故毎日ここへ?」

「あっ、いえ、先輩なら、愚痴……聞いてくれそうで。それにここなら同級生とかはほとんどいませんから」


確かに高校生はなかなか来ない場所だ。にしても。


「俺なかなかな役だった」

「あっ、いや、すみません」

「いや、べつにいいけど」


 俺はいつの間にか海夜の愚痴聞き担当だったようだ。まあ別に話しを聞くくらいなら全く問題ないがな。っか俺なんかでいいのだろうか。


「そういえば先輩!いつも一人ですね」

「普通だよ。って今。も。のところだけ、はっきり言わなかったか?」

「気のせいですよ。私も先輩がどんな生活しているかは、何となく理解しています。って先輩こそ誰とでも合いそうな気がしますが。助けてくれるし。そのいろいろ褒めてもくれますし」

「やめろやめろ。集団とか無理マジ」

「……先輩もなかなかですね。損していると思いますよ?」

「問題ない」


 そのあとも時間ギリギリまで海夜は俺の近くに座っていて2人で話をしていたのだった。


 そしてこの日からというか。正確には昨日から。毎日お昼休みにはこのベンチに座って海夜と話す。ということがしばらく続くことになった。

 とくに海夜とここで会う約束とかはしていないのだがね。なんか俺が昼休みに居ると。海夜は必ず来るという感じだった。

 さすがに雨の日は俺も講義室とかで食べているので海夜がどうしているかは知らないが。晴れたら俺はほぼほぼベンチに居るのでそれを海夜も予想しているのか。実は海夜は雨の日も毎日ベンチに来ているかは、知らないが。海夜も毎日昼休みにベンチのところまでやって来るというのが続いたのだった。

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