第2話私と彼女
「いなくなった」というのは、私の勝手な思い込みなのかもしれない。でも、それまで頻繁に意見の交換をしていた私たちだったので、いくらコメントをしても返信が返ってこないそのアカウントは、もう私にとっては別人だった。
私は、その子のことをとてもよい友人だと思っていた。好きな音楽、学校生活、気になる本、心配事、嬉しかったこと。たくさんたくさん伝えあった。
私は、その子のことをほとんど知らなかった。名前も、顔も、性別も、年齢も、国籍すらも。ネットを通じて言語は訳された。もとの文字がどこの国の物か
私にはわからない。
ただ、私と同じ国の言語ではないということだけはわかっていた。
その子と出会ったのは、私が1枚の写真を投稿した時のことだった。
青い空の写真。
何気なく撮影した写真。
私が見ていた景色だった。
誰も見てくれないだろう。
見てくれるはずなんてない。
そう思いながら載せた、1枚の写真。
見ず知らずの、それも他国の人の写真1枚にその子はコメントを送ってくれた。
「素敵な写真ですね」
日本語に訳されたそのメッセージが、私とその子を繋げた。
偶然にも私もその子は写真を撮ることが好きだったのだ。
それからは、頻繁ではないけど週に何度か写真を撮って、載せて、載せられた写真を見て、簡単な日本語でコメントを書き、どこか変に訳されたコメントを見ることがすごく楽しかった。
顔を合わせて毎日ギクシャクした態度で会話をする同級生たちとは何もかもが違った。真っ向からの本音を書いた。
一対一で言葉を交わしあってる。そう、思っていた。
でも、その言葉はもう送られてくることはないのかもしれない。
私は、スマホを名残惜しくも机の上へ置いた。
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