一戦目

ダイスロール


「まずダイスを振って誰が行くかを決めるらしいね」

「おっしゃオレに任せろ」

「アンタはインチキするから駄目」


 六人目が決まった瞬間に部屋に現れたサイコロ。これを使ってランダムで向かう相手を決めるのだという。

 アルが腕まくりしてサイコロを掴み取ろうとした時、横から音々が奪い取る。

 この男が全部やってくれるのであればそれでもいいと思ったが、ルールを無視してインチキをやった場合のペナルティがわからない。ここは業腹だが真面目にダイスロールして決める方がいい。

「ハクちゃんに振ってもらいましょ。お願いできる?」

「……おまかせ」

 ふんすとやる気満々の白埜がサイコロを受け取り、両手で握る。

「……、んっ!」

 そうしてポイッと放り投げられたサイコロは三度ほど床を跳ね、転がり、そして止まる。

 真上に出た目は、3。

「あたしかー…」

 思わず片手で顔を覆う。六人の内、もっともやる気のない者が一番手とは皮肉なものだった。

「……ネネ、ごめん…」

「あ゛っ!いや違くてねハクちゃん!」

 嫌がる音々の様子を見て白埜の瞳にじわりと水分が溜まる。

「オイうちの子泣かしてんじゃねェよぶっ殺すぞ」

「うっさいわねあたしが今一番自分を殺してやりたいわよ!」

 アルとの口喧嘩もおざなりに、白埜の背丈に合わせて膝を折った音々が潤む瞳と視線を合わせる。

「ぜんぜん問題ないわハクちゃん。むしろあの馬鹿とかに初戦が回らなくてよかったって思ってるくらいだし」

「んだとコラ」

「異世界の勝負とやらがどうなってるか様子見も兼ねて行ってくるわ。ハクちゃんも、応援してくれる?」

「……、うん。がんばって、ネネ」

 ぐしりと小さな手で目を擦り、白埜は音々の手を握る。

「そういうわけだから、ちょっと行ってくるわ、ボス」

「気をつけて。死ぬことはないらしいけど用心は十分にね」

 最後に旭と一言交わし、魔獣種の女は異界へ飛んだ。

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