第6話 銀髪の少女 ユミル

「君はユミル……ユミルだよね?」

「……」


 コンドミニアム共同住宅に連れ帰り、少女を問い詰めた。しかし返答は何もない、ただ寡黙かもくにじっと、こちらを見つめていた。


 髪の色は違うものの、彼女はまさしく今は亡き……自分の娘の姿そのものだった。

 娘はアンノウン正体不明ウイルスにおかされ、命を失った。


 研究のために地球へ向かった?

 違う、本当はその事実から逃げたかっただけだ。

 現実を忘れることのできる遠い場所へ……


 あまりの愛しさに私は彼女の髪を優しく撫でた。

 その瞬間また脳を伝わる衝撃波、まるで記憶を探られるように過去の映像が走る。


「よば……れた……」

「ユミル、話せるのか? 誰に呼ばれたって?」


「ほし……」

「星? 地球のことか? どういう意味だ?」

「たす……けて……」


「地球が助けてほしいって、ユミルに話かけてきたのか?」


 ユミルはコクリと頷いた。


「確かに地球はもう死に近づいている、私はそれをなんとかしたいと願って、研究を進めているよ。ユミルはどこから来たんだ? まさか蘇った?」

「……」


 私はとうとう頭がおかしくなり、幻想を見ているのかもしれない……まあいい、たとえ幻想でもユミルと一緒に居られるなら、このまま覚めないでほしい。


「おなか空いたろ? シチューがあるから、食べておくれ」


 シチューの皿とスプーンを差し出すと、私は食べる仕草をした。それを真似て、ユミルはシチューを口に運んだ。


「おいしいか? おかわりはあるから、足りなかったら言っておくれ。私が誰だかわかるか? おとうさ、いや……違うな、ブーリ。名前はブーリだ」


 私は自分を指差しながら、口を動かした。

 それを見たユミルは、目を大きく開き、明るい表情を少しだけ覗かせてくれた。


「ブーリ……」

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