4#‥運命と同行

 リッツは目の前に会いたかった男が現れ、それもまた助けられた事で運命を感じていた。


(嘘、こんな所でまた会えるなんて!これは運命……。だけど会えたとしても)


 そうリッツが思考を巡らせていると、その男が話しかけてきた。


「それにしても。この前といい今日もだが、よくよく魔獣に好かれてるみたいだな」


「ハァ、僕が魔獣に……。流石にそれは……。あっ、そうだ。助けてくれて、ありがとうございます」


 そう言いリッツは深々と頭を下げた。


「ああ。怪我がなくて良かった。だが、何でこんな所をウロウロしてた?」


「それは……」


「ん?言えないような事なのか」


 そう言われリッツは、どう答えたらいいか悩んだ。


(『想いを伝えに来ました』なんて流石にこの状況じゃなくても言えない。だけどこの場合どう説明したらいいんだ?)


「何か事情があるみたいだな。それなら敢えて聞かねぇ。だが、まだこの森にいるつもりか?」


「あーいえ。流石にここに長くいるつもりはないです。……」


 そう言うとリッツはその男を見ながら、ふとある事を思いつき、


「そういえば、この前から気になっていたんですが。なんの目的で旅をしているんですか?」


「俺の旅の目的か。それは今は詳しく話せねぇ。……」


(流石に言えねぇよなぁ。まだあったばかりのヤツに事情は話せねぇ。それに、昔と地形が微妙に変わってて迷子になってたなんてな)


「そうなんですね。もし差し支えなければ、同行させてもらえませんか?」


「ん?別に俺は構わねぇが。お前は大丈夫なのか?」


「はい、大丈夫です。それに側に……いや、えっと……あなたと旅をして、少しでも強くなれたらと思ったので」


「なるほど、そういう事か。……そういえばお前、この大陸の地理に詳しいか?」


「はあ?詳しいというか、地図なら持ってます」


 そう言いリッツは、バッグの中から簡単な大陸の地図を取り出しその男に渡した。


「すまない。簡単な地図だが助ける。昔とかなり……あっ!」


「昔と?」


「いや悪いなんでもねぇ。それより、今から、ここから北北東を目指し、かつてオパール城があった場所まで行く」


 そう言いながらその男は、右手の人差し指で地図を辿りながら、オパール城があったであろう場所を差した。


「そこに何かあるんですか?」


「ああ。まだ残っていればだがな。あっ!そうだった。自己紹介まだだったな。俺はタツキ・ドラゴナイト。よろしくな!」


 そう言うとタツキは右手を差し出した。


「……僕は、リッツ・ビーホルンです。よろしくお願いします」


 リッツはそう言いタツキの手をとり握手をした。


(えっと……あ、握手なにげにしちゃったけど。まだ鼓動が鳴り止まない。まさか顔に出てないよな)


「ん?急にどうした。具合でも悪いのか?」


「い、いえ大丈夫です。ただ長旅が出来るって思ったら、ドキドキとワクワクがいっぺんに来て……」


「そういう事か。……そういえばリッツは獣人ハーフだよな?」


「はい!そうですが?」


「ん〜ブチ猫ってところか?」


「あーえっと……僕は、これでもヒョウなんですが」


 そう言われリッツは肩を落とした。


「そうか。……まあいい。じゃそろそろ行くか。あまり長くこの辺をウロウロしてねぇ方がいいだろうからな」


 タツキがそう言うとリッツは頷き、2人はその場を離れ遥か北北東を目指した。

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