第25話 マイク

「それでは、間もなく講演会を始めます。もうしばらくお待ちください」


 僕はマイク。潔癖症のマイクだ。今日は発表者の声をスピーカーに届けるために、講演会に参加している。


 だが最悪なことに、今日の発表者の息はとても臭い。昨晩ニンニクでも食べたのだろうか? 物凄く強烈だ。


 僕はカラオケ屋のマイクのように、毎回お風呂に入れてもらえるわけではない。つまり前の人が使ったら、そのまま次の人に使われるのだ。そのため、ただただ気持ち悪くてしょうがない。


「それでは、講演会を始めます。皆様前のスクリーンをご覧ください」


 これから二時間、地獄の時間が始まる。僕はもう耐えられなくなってきた。


「まずはこちら……。あれ?」


 僕はマイクの電池をショートさせた。こんなの無理だ。だが同時に、不良品として捨てられるのではないかという不安感も拭えなくなってきた。


 僕は脇に置かれた。そして代わりに、予備のマイクが持っていかれる。


 僕は逃れられたが、今持っていかれたあの人が不憫だ。僕は罪悪感に襲われた。


 とにかく皆さんにお願いです。マイクを使用する前は、口の中を清潔に保っておいてください。僕みたいな潔癖症マイクのためにも、どうかよろしくお願いします。

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