第7話 窓

 真夜中。明かりが消えてみんな寝静まった。ここの家は五人家族だ。


 俺はこの家の窓。ただの窓じゃない。二重ガラスの窓だ。だからブロックを投げつけられても、金槌で殴られても簡単に割れはしない。


 今日もいつも通り静かな夜だと思っていた。だが今夜はそうではないようだ。家の門が静かに開いた。黒いジャンバーに覆面を付けている男が入ってきたのだ。泥棒だ。


 入ってきた直後、男は俺をハンマーで強く殴りつけてきた。多少のヒビが入ったがそんなものでは割れない。周りにガシャンという音が響き渡った。ここは田舎で周りに家が無いから、この家の人以外誰も出て来ない。だから俺は割れるわけにはいかない。


「泥棒! 泥棒よ!!」


 家の電気がパッと点いた。この家の人が起きてきた。それでも男は諦めず次の手段に入った。


 次に出してきたのは大きなブロック。割れるものなら割ってみろ。お前はどうせ俺を割れない。男は大きなブロックを俺にぶつけてきた。ガシャンという大きな音がしたが俺にはヒビしか入らない。おまけに投げたブロックが跳ね返って男の顔に直撃した。男はその場にバターンと倒れこんだ。


 そうこうしているうちに家の人が警察に通報した。気を失った男は、間もなく警察に逮捕されるだろう。俺は傷だらけになったが、あの男に勝ったのが誇らしかった。俺を割ろうなんて百年、いや千年早いわ。

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